お酒を飲むことが習慣化してしまうのが怖い
財津さんによると「お酒を飲むことが習慣化してしまうのが怖い」という。確かに、左党の多くは、さして飲みたくもないのに、飲むことが「クセ」になっている人が多いように思う。夕方になったら当たり前のようにカシュッとビールのプルトップを開ける、風呂あがりに水代わりにチューハイを飲む、仕事帰りにコンビニに寄って酒を買ってしまう…。左党がよく行う日常のクセを挙げたらキリがない。
「まずはこうした『飲むクセ』の行動を変えていくといいですね。最初は週一でいいので、飲まない日『休肝日』を作ってみましょう。ここで『一生で飲むお酒の量は決まっている』と考えてみてください。休肝日で『飲まない日貯金』をして、『飲酒寿命』を延ばすことを考えてみるのです」と財津さんは提案する。もちろん、休肝日を取ったからと、翌日倍の量を飲んでしまっては総量が変わらず、元の木阿弥である。飲む日も酒量は増やさず、できたら減らす方向にしたい。
繰り返すが、少量飲酒によるがんのリスクを考えた場合、重視すべきは「酒量」だ。休肝日の翌日も酒量を増やさず、「飲まない日」を貯金し、長く飲むための「飲酒寿命」を延ばしていきたい。
このほか、財津さんは、「お酒をストレス発散の道具にしたり、睡眠導入剤代わりにするのも避けてください」と話す。確かにこうした行動もまた「習慣化」を促進してしまいそうだ。
最後に、財津さん自身が飲酒について日々気をつけていることを教えていただいた。
「私自身もそうですが、他の方にお勧めしているのが『お酒と一緒に水を飲むこと』です。血中アルコール濃度の急激な上昇を抑制する効果もありますし、アルコールによる脱水を防ぐのにも役立ちます。このほか、一気に飲まない(ゆっくり飲む)、酒だけを飲まずに食べ物も一緒にとる、といったことも実践してください」(財津さん)
水を飲むことは、アルコールによるダメージを少なくさせ、悪酔い、二日酔いを防ぐことにつながる。本連載で登場した先生方が推奨しているのはもちろん、日本酒造組合中央会でも、日本酒の合間に水を飲むことを推奨している。
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イギリスでは公衆衛生キャンペーンの「Dry January」(1月の禁酒月間)、オーストラリアでは募金活動でアルコールをやめることを奨励する「Sober October」(10月の禁酒月間)があり、世界的に見ても「健康のために酒量を減らそう」という動きが高まっているように思う。
酒にはいい面も、悪い面もある。そして今回の研究から、日本人において、少量の飲酒であってもがんのリスクがあることが明らかとなった。これからの人生、お酒を長く楽しむためにも、カラダに留意しながら、お酒の「総量」を意識し、「飲まない日貯金」を今日から始めてみてはいかがだろうか?
(図版:増田真一)
獨協医科大学医学部 公衆衛生学講座 准教授


