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左党の一分

勝谷誠彦さんを襲った「重症型アルコール性肝炎」とは

調子が悪く倦怠感があるときに「惰性で飲む」のは危険

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

ALTが高い人、アルコール性脂肪肝の人は酒量を減らそう

 最後に、重症化する前に危険を察知する方法について浅部さんに聞いた。素人レベルでもわかる健診結果の数値、あるいはカラダに出る症状などから、事前に察知することはできないだろうか。

 「ポイントの1つは黄疸をいかに早く発見するかです。私が実際に患者に聞くのは、尿の色です。紅茶のような濃い色になっていると、黄疸が出ている(ビリルビンの数値が上がっている)可能性があります。また、ビリルビンの数値は、その人の肝機能がどのくらい維持されているかの目安になります。正常なビリルビン値はおおむね1mg/dL未満です。酒量が多いなど、何らかの心当たりがある人が、2mg/dLを超えたら注意が必要です。そもそも、ビリルビンの上昇を心配するような段階では禁酒が必要なのですが」と浅部さん。

人間ドックの結果例。ビリルビンは通常の健診の検査項目には含まれていないが、人間ドックならたいてい含まれる。
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、このビリルビン値は、人間ドックの検査項目にはたいてい含まれているが、一般的な健康診断の結果には含まれていない。

 職場で受ける健診結果の肝機能のデータなどから察知することはできないだろうか。

 浅部さんは、「残念ながら、年に1回受ける健診のALTやγ-GTPなどの数値から察知することは難しい」と話す。

 ただし、ALTなどの数値には注意を払ってほしいと浅部さんは話す。「ALTやγ-GTPは肝臓の状態(壊れ方)の指標となる数値です。お酒を飲んでいる人が上がってきたら、それは明らかに病気がジワジワと進んでいることを示しています。酒量を減らす必要があります。肝臓専門医としてはALTが基準値の30U/Lを超えた時点で注意してほしいですね」(浅部さん)

 実際、浅部さんは、これが当てはまる人に対して、アルコールが原因かどうかを明確にするため、試験的にアルコールの量を減らす、または断酒することを勧めているという。「その結果、数値が改善したら間違いなくアルコールが原因なので、以後、飲酒量を控えればアルコール性肝炎、さらには重症化するリスクが軽減します」(浅部さん)

 また、「アルコール性の脂肪肝がある場合は、過剰飲酒になっている可能性が高いわけですから当然、注意が必要です。酒量を減らすことをお勧めします」(浅部さん)。下の図にあるように、脂肪肝は大きく、「アルコール性」と「非アルコール性」に分けられ、1日のアルコール摂取量が60g以上の場合は「アルコール性」と判断される。

脂肪肝とは、肝臓の肝細胞に脂肪(特に中性脂肪)が蓄積した状態を指す。脂肪肝は大きく、「アルコール性」と「非アルコール性」に分けられる。さらに非アルコール性脂肪肝は「単純性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」に分類される

          ◇      ◇      ◇

 今回の取材で、冷静に話す浅部さんの話を聞いているうちに、「もしかしたら自分も重篤な肝臓病に罹患する可能性があるのではないか?」と怖くなった。もちろん過剰飲酒が最大の原因であるとはいえ、なる人とならない人がいて、その理由が明確にわかっていないというのも恐怖をあおる。

 酒量を抑えるのはもちろんだが、特に痛感したのが「惰性で飲まない」ことの大切さ。調子が悪く、肝機能が悪い状態で飲めば、肝臓のダメージは大きくなる。「二日酔いは飲んだら治る」なんてとんでもない。惰性飲みによって、重症型アルコール性肝炎に陥る「魔のスパイラル」に入らないように注意が必要だ。また、定期的な健診などでALTなどの数値をチェックし、基準値を超えるようなら酒を控える。当たり前のことを着実に実行したい。

浅部伸一(あさべ しんいち)さん
自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科 元准教授
浅部伸一(あさべ しんいち)さん 1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がん研究センターで主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社所属。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料は、ワイン、日本酒、ビール。
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