お酒は一般に、「適量の摂取なら健康にいい」といわれている。左党の多くにとって、これがお酒を飲む際の安心材料の一つとなっている。しかし、これは本当なのだろうか。そして、すべての人に対して言えることなのだろうか。そこで今回は、“適量飲酒”の健康への影響をまとめた。
「適量の飲酒は長生きにつながる」は本当か

「酒は百薬の長」―。
そんな言葉を裏付けるように、昔から「お酒は適量摂取」なら健康効果があるといわれている。まさに左党にとっては印籠のような言葉になっているといってもいいだろう。「酒を飲まないより、飲んでいるほうがカラダにいい」と勝手に解釈し、飲む言い訳にしている人も多いのではないだろうか。
この「適量の飲酒は長生きにつながる」ことを裏付けるデータがある。専門用語で「Jカーブ効果」と呼ぶものだ。飲酒量を横軸に、死亡率を縦軸にとると、グラフの形状が「J」の字に似ることからそう呼ばれている。
つまり、適量を飲む分には死亡率が下がるが、一定量を超えてくると、死亡率が上がってくるというものだ。このグラフは、酒の健康効果を示す図としてさまざまなシーンで登場するので、左党はもちろん、そうでない方も少なからず目にしたことがあるのではないだろうか。かくゆう筆者もそうで、酒を飲む際の安心材料の一つとして、ありがたく崇めている。
しかし、ふと冷静になって考えてみると、このJカーブ効果は、実際のところどうなのだろうか。死亡率が下がるというのはもちろんだが、すべての病気、すべての人に対して同じ傾向を示すのだろうか。世の中には、例えば高血圧などの持病を抱えている人は多いし、アルコールに対する耐性が強い人もいれば弱い人もいる。男女差、年齢などなど、考え出すときりがない。
うううむ、ここはひとつ、より安心して酒を飲むためにも、真偽を確かめねばならない。ということで独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター院長の樋口進さんにお話をうかがった。