未成年の飲酒は脳にダメージが!
未成年がアルコールを飲むことで、どんな弊害があるのだろうか。樋口さんにズバリ聞いてみた。
「未成年者の飲酒はさまざまな弊害があります。特に脳に対する影響が最も研究されています。具体的には、アルコールによる脳の神経細胞の障害作用は、成人よりも未成年者のほうが大きいのです。記憶に関わる海馬に対するダメージは大きく、これによって記憶機能が低下する可能性があります」と樋口さんは話す。
「大量飲酒をした場合、まったく飲まない未成年と比較して、海馬の容積が明らかに小さいことも分かっています。これはアルコールによって海馬の神経細胞が死に、容積が小さくなったということです」(樋口さん)
樋口さんは、大人の脳が完成するのは20歳前後なのだと話す。「人間の脳は生後6歳までに大人の大きさの90~95%になります。脳内の細胞の成長のピークは男子が11歳、女子が12歳半ですが、20歳前後まで成長が続き、その後、成熟した脳へと変化していきます」(樋口さん)
なるほど、脳は20歳前後まで成長を続ける、だからこそ、20歳までの飲酒の影響は大きいのだ。若気の至りとはいえ、私は脳の成長が終わっていない時期にお酒をガンガン飲んでいたのかと冷や汗が出るとともに、いくばくかの後悔が…。自分の記憶力のなさを年齢のせいにしていたが、もしかしたら未成年飲酒が関係しているのかも、と不安になる。
さらに樋口さんは、未成年の飲酒は、血中アルコール濃度が上がりやすく、急性アルコール中毒のリスクが高まると警告する。
「人間の未成年者に飲酒させることはできないため、人間を対象にしたデータはありませんが、動物を対象にした研究が多数あります。未成年に相当するラットと成人に該当するラットに同量のアルコールを投与して比較した研究では、未成年のラットは成人のラットより、血中アルコール濃度、脳内アルコール濃度が高くなり、アルコールの分解速度が遅いという結果になりました(Alcohol Clin Exp Res. 1987;11(3):281-286.)。人間においても同様の傾向になると推測されます」(樋口さん)
また一般的に「飲酒経験がないほど、脳が敏感に反応し、酔いの程度が強くなる」と樋口さん。自分の適量すら分からない未成年は、酒のやめ時を知らない。急性アルコール中毒になるリスクは大いにある。
つまり、アルコールに関しては、単純に「若ければいい」というわけではないのだ。お恥ずかしい話だが、「年齢が若い=新陳代謝が良い=アルコール分解能力がある」と思っていたが、未成年にそのまま当てはめてはいけない。

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- 飲み始めるのが早いほど、依存症のリスクが