「おせちは、伝統的な日本の料理なので、ヘルシーなイメージを持つ人もいるかもしれません。でも実は、保存が効くように醤油や砂糖を使って濃い目に味付けされているものが多く、糖分と塩分を多く含む料理なのです。糖分はご存じのように血糖値を上げ、中性脂肪をため込みやすくします。塩分をとり過ぎると、体は塩分濃度を一定に保とうとして、それを薄めるために水分をため込むので、むくみの原因になります。甘辛い味付けはお酒もご飯も進みますし、酔えば食欲に歯止めが利かなくなることも。『糖分+塩分』は究極の太る味付けセットなのです」(岸村さん)
おせちに限らず、甘辛い味付けの料理は本当に酒に合う。正月太りを解消したいならば、すき焼き、照り焼き、煮物などにも注意したほうがよさそうだ。
肉の部位の選び方や調理法にひと工夫でカロリーダウン
「注意していただきたいのは、糖分、塩分だけではありません。脂質もです」と岸村さん。
三が日が明け、いざ正月太りを解消するためにダイエットを始めようと思うなら、甘辛い料理を避けるだけでは不十分だ。最近は、ご飯などの糖質を控えめにする「糖質制限ダイエット」が人気だが、岸村さんによると、糖質を控えた結果、脂質をとり過ぎては意味がないという。
「ダイエットというと、糖質制限を思い浮かべる方が多いのですが、脂質にも注意しないと、思うように体重が減りません。脂質は1g当たり9kcalです。糖質とたんぱく質はいずれも1g当たり4kcalなので、その倍以上もあります。糖質制限をしていても、アブラたっぷりの豚バラ肉や皮つきの鶏肉を食べていたらやせにくくなります。また脂質を多くとると胃腸に負担がかかり、腸内環境を悪化させます。さらに、脂質の多い食事をしていると悪玉のLDLコレステロールが増える場合があり、動脈硬化や心疾患のリスクへとつながるのです」(岸村さん)
ダイエットという観点からは、「お肉」と大きくひとくくりにせず、部位の選び方や調理法にも注意してほしい、と岸村さんは話す。
実際、肉は部位によって大きくカロリーが異なる。豚バラ肉と豚ヒレ肉では、同じ200gであっても、豚ヒレ肉のほうが500kcal程度も低い(『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』を基に計算、以下同)。また鶏むね肉の場合は、250gの皮つきと、210gの皮なしでは120kcal程度も差がある。
岸村さんによると、これは魚にも言えることで、「同じまぐろ100gでも、赤身とトロ(脂身)では200kcal程度の差があります(くろまぐろ、天然の場合)」とのこと。塵も積もれば山となる、カロリーも積もれば脂肪となってしまうのだ。

「調理法でもカロリーに大きな差が出ます。揚げ物は、素揚げ、唐揚げ、かき揚げなどの天ぷら、という順番にカロリーも脂質も高くなっていきます。揚げ物は絶対にダメというわけではなく、お酒のおつまみだったら、唐揚げよりも小エビの素揚げにするとか。唐揚げやかき揚げは、“ごほうび”としてたまに食べるとか、量を少なめにして食べるようにするだけでも、摂取カロリーが変わっています」(岸村さん)
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- 結局、酒は「エンプティカロリー」なの?