脂肪肝は、脂肪の蓄積具合によって、軽度、中度、重度の3段階があり、腹部エコー検査やCT(コンピューター断層撮影)検査によって診断される。怖いのは、「肝臓は沈黙の臓器」というだけあって、自覚症状がほとんどないというところだ。
「アルコール性脂肪肝であれば、原因がはっきりしているので、飲酒量を減らしたり、場合によっては断酒する必要があります。NASHの場合は、病名に『非アルコール性』という言葉が入っていますが、お酒と無関係ではありません。というのも、NASHの人が飲酒すると、肝臓の炎症がひどくなることがあるのです」(浅部さん)
ああ、耳にしたくない「断酒」というワードが! 「脂肪肝で断酒」なんてことにならないためにも、健康診断の検査結果、特にALTは軽視してはならないのだ。
なお、NASHをそのまま放置すると、5~10年かけ、じわじわと肝硬変や肝臓がんへと進行していく場合がある。食生活を見直したり、ダイエットや運動に加え、アルコールも適量といわれる1日20g(純アルコール換算。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合)以内に抑えたほうがいいそうだ。
健診の数値が悪い人はお酒を飲み続けてもいいのか?
健康診断や人間ドックの結果でほかに気になるものとしては、血糖、血圧、中性脂肪、コレステロールなど、生活習慣病のリスクに関わる数値だ。
糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のリスクとアルコールとの関係についても、浅部さんに聞いてみた。
「まず、糖尿病について。お酒は直接的には血糖値をあまり上げません。だからといって、血糖値が高めの人はいくらでも飲んでいいのかというと、そうではありません。長期にわたって飲み過ぎの状態が続くと、肝臓と膵臓がダメージを受け、その結果、インスリンの分泌が低下したり、インスリンの効きが悪くなったりして、血糖値が上がってしまうのです」(浅部さん)
健康診断の結果、糖尿病でなくとも、その予備群の疑いありと指摘されたら、一度専門医を受診して、インスリンの分泌状態などを調べたほうがいい、とのことだ。
続いて、血圧について。
「お酒を飲むと、一時的に血圧は下がりますが、翌朝は上昇します。起床後1~2時間の血圧が高い『早朝高血圧』は、心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管系の疾患のリスクが高いとされ、特に注意しなくてはいけません。血圧が高くてお酒を飲む人は自分で1日のうち時間帯を変えて血圧を測ってみてください。また、中年以降で高血圧の方は、動脈硬化を防ぐためにも血圧を下げる薬(降圧薬)を処方してもらうという方法もあります」(浅部さん)
また、酒のつまみは、イカの塩辛や漬物など、塩分が多めのものも人気だ。塩分を多くとると血圧を上げてしまうので注意しよう。
そして、脂質異常症について。脂質異常症には、血液中の中性脂肪が多いタイプ、LDL(悪玉)コレステロールが多いタイプ、そしてHDL(善玉)コレステロールが少ないタイプなどがある。
「お酒の影響を受けやすいのは、中性脂肪とHDLコレステロールです。すでにお話ししたように、飲み過ぎは中性脂肪の数値を上げます。一方、適度な飲酒はHDLコレステロールを増やす効果があるのではないかといわれています。しかし、その効果には個人差があると考えられ、HDLコレステロールのためにどんどん飲みましょうとはいえません。飲み過ぎれば、中性脂肪がたまり、肥満や、そのほかの病気につながりますので注意しましょう」(浅部さん)
以前は、LDLコレステロールが「悪玉コレステロール」として動脈硬化に関わるとされていたのに対し、中性脂肪はさほど危険視されていなかった。しかし最近では、中性脂肪が高いことも様々な病気のリスクになることが報告されているという。健康診断の結果を注意して見てみよう。
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