めまいがする、だるい、疲れやすいなどの症状があると、貧血を疑ってレバーを食べたり、鉄入りのサプリメントをとったりする女性は多い。当の女性が鉄について知っておいたほうがいいのはもちろん、男性も知っておいたほうが断然いい。その理由とは…?
「貧血」と「低血圧」は似て非なるもの

鉄不足の症状といえば「貧血」。学生時代、朝礼の途中で倒れる人がいたものだ。「せんせー、◯◯さんが貧血でーす」などと言っていなかっただろうか? しかし、実は、これは貧血ではない。
「貧血というのは、酸素の運搬役である赤血球や血色素(ヘモグロビン)が減少し、全身に十分な酸素が供給できなくなった状態をいいます。一方、朝礼の途中や通勤電車などで気分が悪くなるのは、脳に回る血液が一時的に減少して起こる“脳貧血”。これは低血圧の一種です」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)。
簡単にいうと、貧血は「血液が薄くて、酸素不足になった状態」で、低血圧は「血液に問題はないが、巡りが悪い状態」といえる。どちらの場合も、めまい、だるい、疲れやすい、顔色が悪いなど、同じような症状が出るため、混同しやすい。両者を併発している場合もあるが、基本的には別物だ。
自分が貧血かどうかを知りたい場合は、健康診断の赤血球数や血色素(ヘモグロビン)量、ヘマトクリット値をみてみよう。検査機関によって基準値は多少異なるが、各数値が基準値未満の場合は貧血と考えられ、一般的には血色素量で判断する。
男性 | 女性 | |||||
異常 | 要注意 | 基準範囲 | 異常 | 要注意 | 基準範囲 | |
赤血球数(万/μL) | 359以下 | 360~399 | 400~539 | 329以下 | 330~359 | 360~489 |
血色素 (ヘモグロビン)量(g/dL) | 11.9以下 | 12.0~13.0 | 13.1~16.6 | 10.9以下 | 11.0~12.0 | 12.1~14.6 |
ヘマトクリット値(%) | 35.3以下 | 35.4~38.4 | 38.5~48.9 | 32.3以下 | 32.4~35.4 | 35.5~43.9 |
低血圧には厳密な基準はないが、一般に、収縮期血圧(上の血圧)が100mmHg未満の場合を指す。低血圧が原因の脳貧血の場合、鉄をとっても症状は改善しないことを知っておこう。
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- 女性に多い鉄欠乏性貧血
