日経グッデイ

知ってトクする栄養学

たんぱく質不足が心配なのは“草食系高齢者”と“ダイエット女子”

第2回 “良質なたんぱく質”をとるには?<前編>

 村山真由美=フリーエディター・ライター

いろいろな健康法やダイエット法が流行っては廃れていく昨今。情報が多すぎて「何をどれだけ食べたらいいか」がわかりにくい時代。だからこそ、栄養の基本のキを押さえておきましょう。

 たんぱく質は英語ではprotein(プロテイン)。これは、古代ギリシャ語の「プロテイオス=最も大切なもの」に由来する。たんぱく質は私たちの体の骨格や筋肉、皮膚、毛髪、内臓などあらゆる組織を構成する主成分となる。また、ホルモンや酵素を作るのにも欠かせない栄養素だ。

たんぱく質は実は不足していない?

 たんぱく質は重要な栄養素だからしっかりとらなければいけない、とよく言われるが、「現代の日本では、よほど食が細くない限り、たんぱく質が不足することは、まずありません。むしろ、とりすぎると体脂肪として貯蔵されたり、腎機能の低下を促したり、痛風の原因になったりするので注意が必要です」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)。

 たんぱく質の1日の摂取量は、体重1kg当たり1gが目安。多くても2g未満にとどめるのが適当だ。体重50kgなら50g、体重60kgなら60gが目安となるので、とても覚えやすい。

 ところが、計算方法はそう簡単ではない。「きょうは200gのステーキを食べたから、たんぱく質を200gとった」と思っている人が案外多いが、「それは勘違いです」と上西氏。食品の重量=たんぱく質量ではないことは、しっかり押さえておこう。

 以下に、たんぱく質を多く含む身近な食品を挙げる。たんぱく質は肉、魚、卵、乳製品、大豆に多く含まれていることはよく知られているが、穀類にも意外に多く含まれている。

たんぱく質を多く含む身近な食品
食品名目安量たんぱく質量(g)
牛もも肉(輸入牛・赤肉部分)薄切り3枚(90g)20.3
豚ロース肉(赤肉部分)厚切り1枚(90g)20.4
豚ヒレ肉厚切り1枚(80g)18.2
鶏もも肉(皮つき)1/2枚(125g)20.3
鶏ささ身2本(80g)18.4
マグロ(赤身)刺し身6切れ(80g)21.1
かつお(春穫り)刺し身5切れ(80g)20.6
さけ1切れ(80g)17.8
1個(50g)6.2
牛乳牛乳カップ1(210g)6.9
プロセスチーズ1切れ(20g)4.5
ヨーグルト(脱脂加糖)1個(100g)4.3
大豆木綿豆腐1/2丁(150g)9.9
納豆1パック(50g)8.3
枝豆10さや(17g)2.0
穀類ごはん1杯(150g)3.8
食パン6枚切り1枚(60g)5.6
うどん(ゆで)200g6.2
そば(ゆで)150g7.2
スパゲッティ(ゆで)250g13.0

 自分が普段、どれくらいたんぱく質をとっているのか、「数字を羅列されても、ピンとこない…」という人は多いだろう。例えば、体重70kgのサラリーマンが朝食は自宅で、昼食は牛丼屋で、夕食は居酒屋で、以下のものを食べたとする。

あるサラリーマンの1日の食事に含まれるたんぱく質
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 これくらいは、努力しなくてもとれている人が多いのではないだろうか? 『国民健康・栄養調査(平成24年度)』における日本人のたんぱく質の摂取量を見てみても、特に不足していないのがわかる(下表)。

たんぱく質の摂取量(1人1日当たり平均値)
20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60~69歳70歳以上
男性(g)74.673.774.877.879.273.2
女性(g)60.760.761.265.366.961.6
国民健康・栄養調査(平成24年度)栄養素等摂取量(年齢階級別、全国補正値)より

 あなたは、たんぱく質をとりすぎていないだろうか?

“草食系高齢者”と“ダイエット女子”はたんぱく質不足に注意

 ただし、『国民健康・栄養調査』の数値はあくまでも平均値なので、たんぱく質をとりすぎている人もいれば、不足している人もいる。特に不足しがちなのは、高齢者と若い女性だ。

 「高齢になると、『もう年だから肉はあまり肉を食べなくていい…』という人が結構いますが、肉や魚などのたんぱく質源をとらないと筋肉が減ってしまいます。高齢者で体重が減ってきている人は『低栄養』の可能性があります」(上西氏)。

 筋肉量や筋力の低下(サルコペニア)は、転倒・骨折を引き起こしやすく、寝たきりなど要介護状態を招きやすくなる。

 また、「若い女性は、太りたくないという思いから、肉を敬遠したり、食べる量を減らしすぎる傾向があります。こうした間違ったダイエットは、将来、骨粗鬆症を引き起こしたり、低出生体重児が生まれる原因になるので要注意です」(上西氏)。

 では、どのような点に気をつければ、過不足なく良質なたんぱく質をとることができるのだろうか?(後編「たんぱく質は『たくさん』よりも『いろいろ』食べるが正解」に続く)

 (イラスト:サイトウトモミ)

上西一弘(うえにし かずひろ)さん
女子栄養大学栄養生理学研究室教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。