日経グッデイ

知ってトクする栄養学

薄味じゃなくてもOK!高血圧を予防する意外テク

第13回 塩分との賢いつきあい方

 村山真由美=フリーエディター・ライター

和食は世界に冠たる健康食だが、「塩分が多い」という点が弱点だといわれる。塩分のとり過ぎは高血圧の原因のひとつだ。血圧が気になる人もそうでない人も、塩分とのつき合い方を知っておこう。

血圧を下げる生活習慣は“減塩”だけじゃない

美味しく減塩するにはコツがある! (©jirkaejc-123rf)

 日本人は血圧が高い人が多い。平成25年国民健康・栄養調査によると、成人男性の38.3%、女性の29.6%が高血圧となっている。高血圧は動脈硬化を促進し、脳卒中のリスクを高める。

 親族に脳梗塞や脳出血を起こした人がいると、「うちは高血圧の家系だから、いずれ自分も…」と不安に思うだろう。確かに、高血圧の発症には遺伝的な要素が大きい。しかし、それだけではなく、生活習慣が大きく関連していることをご存じだろうか。

 「血圧を下げる生活習慣=減塩と思っている人が多いですが、血圧には喫煙、肥満、運動不足、過度な飲酒、睡眠不足、過度なストレスなどが大きく関係しています。減塩の前に、まず、これらを見直してみることが大切です」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)。

 悪者は塩分だけではないのだ。

 塩分と血圧上昇の関係には個人差があり、塩分の摂取量を減らしても血圧が下がらない人もいる。つまり、基本の知識として、「減塩も大切だが、タバコをやめたり運動をしたりするほうがはるかに有効な場合もある」ということを覚えておこう。

ただし、とり過ぎは禁物! 男性は1日8g、女性は7gが目標

 食塩は、ナトリウムと塩素の化合物だ。ナトリウムは細胞外に存在し、細胞内に存在するカリウムとともに、細胞の水分量や浸透圧、細胞の働きを調整し、適正な濃度を保つように調節している。

 「とりすぎると問題なのはナトリウムです。体液のナトリウム濃度が上がると、体はこれを薄めようとして水分をため込みます。すると、血液量が増え、血管にかかる圧力が高くなります」(上西氏)。これが、ナトリウムをとりすぎると血圧が上がるしくみだ。

 加工食品の栄養成分表示を見ると、「ナトリウム量」や「食塩相当量(塩分)」が表示してある。食塩相当量(塩分)とは、食品に含まれるナトリウム量を食塩量に換算したものだ。ナトリウム量しか表示がない場合、以下の換算係数をつかって食塩相当量(塩分)を算出することができる。覚えておくと便利だ。

    食塩相当量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1000

 現在、公の機関が発表している1日の塩分摂取の目標値は以下の通りだ(表)。実際に摂取している量は、成人男性が11.1g、女性は9.4gとなっている(平成25年国民健康・栄養調査より)。

◆1日の塩分摂取量の目標値
健康な18歳以上の男性8g未満
健康な18歳以上の女性7g未満
高血圧の治療を要する人6g以下(※1)
WHO(世界保健機構)の推奨値5g未満
腎臓疾患のある人3g以上、6g未満(※2)
※1 高血圧治療ガイドライン2014年版より、※2 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013より

 「人間が生きるために必要な塩分は1日2gといわれています。あまり知られていませんが、塩分は肉、魚、野菜、果物などの食品にも含まれていて、これらから1日2gほど摂取しています。つまり、人間は調味料をとらなくても健康に生きていけるのです」(上西氏)。

 日本人が摂取している塩分量は、“生きるための量”ではなく、“食事としておいしい量”だ。究極の目標は1日2gだが、それは文化的に難しい。世界的な目標が5g、日本人が実際に摂取しているのが男性約11g(女性約9g)なので、この間をとって男性8g(女性7g)と目標値が定められているのだという。

 1日に1g減塩すると、収縮期血圧が1mmHg低下するというデータもある。「今、1日11gとっている人が、いきなり8gにするのは難しいですが、今より少し減らすだけでも意味があります」(上西氏)。

調味料でとっていい塩分は1日6g

 食材にも塩分が含まれていることは述べた。つまり、1日塩分8gを目標とする場合、調味料で8gとっていいというわけではない。食材に含まれる塩分2gをひくと、調味料でとっていいのは6gという計算になる。

◆基本の調味料の塩分
調味料小さじ1あたり
6.0g
しょうゆ0.9g
みそ0.7g
ウスターソース0.5g
トマトケチャップ0.2g
マヨネーズ0.1g
バター0.1g

 「男性の場合、どんな料理にもしょうゆやソースをかける人がよくいます」(上西氏)。味が足りないから調味料をかけるというよりも、味の確認をする前に習慣的にかけていないかどうか、振り返ってみよう。食卓で使うしょうゆ、ソース、ドレッシング、たれなどを控えるには、レモンなどの柑橘類の絞り汁や香味野菜、香辛料で味にアクセントをつけるのがおすすめだ。

 また、ラーメンやそばなど、めん類の汁は塩分が多い。汁を全部飲まないようにするだけでも減塩になる。

加工食品のとり過ぎにも注意

 私たちは食材から1日2gの塩分をとっていることを述べたが、それは生鮮食品のことだ。漬け物、干物、練り製品、肉の加工品、インスタント食品などの加工食品はかなり塩分が多い。つまり、加工食品を多くとっている人は、どんなに調味料を控えても、塩分過多になりやすいので要注意だ。

◆塩分を多く含む加工食品
加工食品目安量塩分(g)
きゅうりのぬか漬け30g1.6
たくあん30g1.3
からし明太子1/4腹(30g)1.7
いかの塩辛20g1.4
塩ざけ1切れ(80g)1.4
あじの開き1尾(85g)1.4
はんぺん1個(100g)1.5
ちくわ1本(32g)0.7
ウインナーソーセージ1本(25g)0.5
ベーコン1枚(18g)0.4
レトルトカレー1袋(200g)2.6

コツはまんべんなく“薄味”にしないこと

 ただし、今まで濃い味つけに慣れていた人が、いきなり薄味にすると、食事がおいしく感じられない。「献立全てをまんべんなく薄味にするのではなく、料理によってメリハリをつけるのがコツです」(上西氏)。

 例えば、

  • 炊き込みごはん
  • みそ汁
  • あじの干物
  • きゅうりのぬか漬け

 という献立があったとする。これらの料理を全てまんべんなく薄味にすると、物足りなく感じやすい。そこで、これまで通りの塩分のものと、減塩のものを組み合わせるといい。

  • 炊き込みごはん→白いごはん(塩分:↓)
  • みそ汁(塩分:これまで通り)
  • あじの干物→あじの刺し身(塩分:↓)
  • きゅうりのぬか漬け→グリーンサラダ(塩分:↓)

こうすると、さほど減塩のストレスを感じずに食べられる。

 

食べる量を減らすことも減塩になる

 「減塩=味を薄くすること」と思いがちだが、味つけはそのままでも、食べる量を減らすと減塩になることも覚えておこう。例えば、みそ汁は、味つけはそのままでも、具沢山にして汁の量を80%にすれば、20%の減塩になる。

 外食で人気の牛丼の場合、大盛りを並盛りにするだけで0.8gも減塩できる(表)。食べる量を減らすことは減量にもつながるので、2つの面からの降圧効果が期待できる。

◆牛丼のサイズ別塩分量
サイズ塩分
並盛り2.7g
大盛り3.5g
メガ4.8g
すき家HPより算出

カリウムでナトリウムを排泄しよう

 どうしても、しょっぱいものがやめられない! という人は、カリウムを多くとるという方法がある。「野菜、果物、いもなどに豊富なカリウムは、とりすぎたナトリウムの排泄を促す働きがあるため、高血圧の予防・改善に薦められます」と上西氏は言う。

 カリウムの摂取目標量は、成人男性は3000mg以上、成人女性は2600mg以上だが、実際に摂取している量は、成人男性は2400mg、成人女性は2200mgで十分とはいえない。

 次回は、カリウムのとり方について解説しよう。

●参考資料
高血圧治療ガイドライン2014年版
エビデンスに基づくCKDガイドライン2013
上西一弘(うえにし かずひろ)さん
女子栄養大学栄養生理学研究室教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。