日経グッデイ

知ってトクする栄養学

“若返り”に効くビタミンE、その抗酸化パワーの生かし方

第10回 ビタミンEを賢く取り入れるには

 村山真由美=フリーエディター・ライター

 アンチエイジングや生活習慣病予防を語る上での重要なキーワードといえば“抗酸化”です。今回は、抗酸化物質の代表であるビタミンEについて取り上げます。

知っておきたい“酸化”と“抗酸化”のしくみ

 私たちは呼吸で酸素を取り入れ、細胞内でエネルギーを作り出しているが、この過程で活性酸素という物質が生じる。活性酸素は非常に不安定な物質で、他のものに結びついて安定しようとする。これが酸化だ。

 この性質は、体内に侵入してきた有害物質を酸化・殺菌する防御力として働く一方で、体を構成しているたんぱく質、脂質、DNAなどを酸化させ、老化を促したり、病気を引き起こす。なかでも、脂質が酸化してできる過酸化脂質は細胞の老化と深く関係している。

現代人を悩ます活性酸素を取り除いてくれるのが抗酸化物質のビタミンE 。(©prakaymas vitchitchalao-123rf)

 活性酸素は呼吸以外に、喫煙、紫外線、排気ガスなどによっても発生する。また、過剰なストレスや肥満も原因になる。つまり、現代人は活性酸素を生み出しやすい状態にあるといえるのだ。

 活性酸素を消去する物質を抗酸化物質という。その代表的なものがビタミンEだ。

 「ビタミンEは体内で主に細胞の膜に存在します。細胞膜には酸化されやすい不飽和脂肪酸も含まれます。不飽和脂肪酸が酸化してできた過酸化脂質は、増えると連鎖的に細胞を破壊したり、異常細胞を形成したりして、細胞の死を早めますが、ビタミンEは過酸化脂質の生成を抑えます。また、動脈硬化は血液中のLDLコレステロールの酸化で促進されますが、ビタミンEはこれも抑えます」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)

ビタミンCと併せてとると効果的

 同様に酸化を防ぐものにビタミンCがある。ビタミンEは主に細胞膜に存在するが、ビタミンCは水溶性のため体液中に存在する。違う持ち場で同時に働くことで抗酸化作用が高まるため、この2つは併せてとるといいといわれている(第8回「働き盛りの男性こそ『ビタミンC』でストレス撃退」 参照)。

油抜きダイエットをしている人や魚嫌いな人は要注意

 ビタミンEの摂取目安量は30代、40代の男性で1日6.5mg、女性は6.0mgであり、実際に摂取している量は、成人男性の平均が6.9mg、成人女性の平均が6.2mgとなっている(『国民健康・栄養調査(平成25年度)』より)。平均ではぎりぎりクリアしていることになる。

 下にビタミンEを多く含む食品を挙げた。「ビタミンEは植物油、種実類、魚介類、野菜など多くの食品に含まれています。また、食品の酸化防止剤としても使われているため、比較的不足しにくい栄養素です。とはいえ、油抜きダイエットをしている人や、極端に偏食な人、魚を食べる機会が少ない人などは不足している可能性もあります」(上西氏)。

30代、40代のビタミンEの食事摂取基準(mg/日)
男性女性
目安量耐容上限量目安量耐容上限量
6.59006.0700
ビタミンEを多く含む食品
食品目安量含有量(mg)
油脂類ひまわり油小さじ1(4g)1.5
綿実油小さじ1(4g)1.1
サフラワー油小さじ1(4g)1.1
種実類アーモンド(乾)10粒(10g)3.1
松の実(いり)大さじ1(10g)1.2
落花生(いり)15粒(正味10g)1.1
ひまわりの種(フライ、味つけ)10粒(3g)0.4
魚介類うなぎの蒲焼き1串(100g)4.9
トラウトサーモン(ニジマス、海面養殖)1切れ(正味80g)4.6
ツナ油漬け缶詰め(ビンナガマグロ)1/2缶(汁含む40g)3.3
すじこ1口大(25g)2.7
野菜類モロヘイヤ1/4束(60g)3.9
西洋かぼちゃ1/8個(正味80g)3.9
赤ピーマン1/2個(正味60g)2.6
菜の花1/2束(50g)1.5

種実類をおやつに食べよう

 ビタミンEを多く含むものに種実類がある。アーモンドを10粒食べれば1日の目安量の約半分がとれる。調理をせずに手軽に食べられるため、サプリメント的に取り入れられる点が魅力だ。

アーモンド1日10粒で1日必要な1/2量のビタミンEがとれる!(©Andrey Eremin-123rf)

 「アーモンドをおやつに食べることはおすすめできます。しかし、10粒で約60kcalと高エネルギーなので食べ過ぎには注意が必要です」(上西氏)

 最近はアーモンドミルクも人気だ。これは、水に浸したアーモンドをミキサーなどで砕き、水を加えてろ過したものだ。美容と健康に気を遣うハリウッド・セレブが注目していることで人気に火がつき、ブームになりつつある。

ビタミンEが「若返りのビタミン」と呼ばれるもう一つの理由

 ビタミンEは1922年、アメリカのエバンスらにより、ラットの妊娠に必要な食事因子として発見された。ビタミンEの化学名はトコフェロール(Tocopherol)というが、Tocosはギリシア語で「子どもを産む」、pherolは「力を与える」という意味がある。

 「ビタミンEには性ホルモンなどの生成や分泌に関与し、生殖機能を維持する働きもあります。ですから、女性の場合は不足すると不妊や流産のリスクが高まるといわれています。また、更年期の諸症状(肩こり、手足のしびれなど)の改善にも利用されます。これは、ビタミンEがホルモン分泌の調整をしているからだと考えられています」(上西氏)

 また、「ビタミンEには血管の収縮を促す神経伝達物質の生成を抑え、毛細血管を拡張させる働きがあるため、血行障害によって生じる冷え、肩こり、頭痛などの改善効果も期待できます」(上西氏)

 前述した抗酸化作用に加え、こういった働きがあることから、ビタミンE は“若返りのビタミン”とも呼ばれている。

 ビタミンE の耐容上限量は目安量の100倍ととても高いため、食事によって過剰症が起こることはまずない。しかし、サプリメントなどで過剰に摂取すると、出血の可能性がある。とくに、抗凝固薬(とくにワルファリン)を服用している人は注意が必要だ。

 ビタミンEは脂溶性なので、油で調理したり、脂肪を含む食品と合わせてとると効率よく摂取できる。水溶性のビタミンCと合わせると抗酸化作用が高まることは前述したが、野菜、果物、豆類などの色素、苦み、渋み、辛み、香りなどの成分であるフィトケミカルにも強い抗酸化作用があるので、これらを組み合わせるとさらに抗酸化作用が高まることを覚えておきたい。

上西一弘(うえにし かずひろ)さん
女子栄養大学栄養生理学研究室教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。