いろいろな健康法やダイエット法が流行っては廃れていく昨今。情報が多すぎて「何をどれだけ食べたらいいか」がわかりにくい時代。だからこそ、栄養の基本のキを押さえておきましょう。今回はビタミンDを取り上げます。
日焼け止めクリーム、帽子、日傘、手袋、サングラス…。バッチリ紫外線対策をしている女性の姿は、もはや夏の風物詩だ。しかし、紫外線をシャットアウトすると、ビタミンDが不足しやすくなることをご存じだろうか?
ビタミンDは紫外線に当たると皮膚で合成される

昔の小学生は、夏休みにどれだけ日焼けできるかを競い合ったものだ。真っ黒いほどかっこよかった。しかし、いつのころからか紫外線は敵だといわれるようになった。紫外線の害でよく知られているのはシミやシワだが、長年紫外線を浴び続けると皮膚がんや白内障などの原因になるともいわれる。
紫外線に当たると、表皮の奥に点在するメラノサイトがメラニン色素を作り出し、表皮の最前線に送り込む。そのため肌が黒くなる。これは、メラニン色素に紫外線を吸収させて、表皮の下にある真皮への侵入を防ぎ、紫外線の害から身を守ろうとする防衛機構だ。
ところが、白人の場合、紫外線にあたると肌は赤くなるがあまり黒くはならない。これは、メラニン色素の産生量が少ないからだ。防御機構が働かないため、有色人種よりも皮膚がんになりやすい。そのため、オーストラリアなどは国をあげて紫外線対策に力を入れている。
紫外線によって皮膚で作られるのはメラニン色素だけではない。ビタミンDも合成される。ビタミンDは特殊なビタミンで、食事から摂取するだけでなく、紫外線を浴びることでも合成される。
「皮膚で合成したり、食事でとったりしたビタミンDは、そのまま使われるわけではありません。肝臓と腎臓で作り変えられ、『活性型ビタミンD』になって初めて働くことができます」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨を強くする
ビタミンDは、人間の体の中でカルシウムの吸収を助けたり、カルシウムが骨に沈着するのをサポートする重要な働きがある。
遠い昔、生物が海から陸に出て生活するようになったとき、重力に打ち勝つために強い骨が必要になった。そこで、たくさんのビタミンDを必要としたが、食物からは十分にとることができなかった。そこで、紫外線を使って自分の体内でビタミンDを作るしくみを備えるようになった、といわれている。
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