ビタミンDが不足すると「くる病」になる

数年前、乳幼児のくる病の増加が話題になったことを覚えていないだろうか。くる病は骨の強度が低下して、曲がりやすくなる病気だ。赤ちゃんが歩き始めたころ、O脚になることから発見されることが多い。
現代は、赤ちゃんも紫外線対策をする時代だ。かつては、母子手帳でも日光浴が推奨されていたが、現在では、紫外線の害を考慮して、「外気浴」という表現に改められている。紫外線を浴びないよう、昼間の赤ちゃん連れの外出を極力避ける母親も増えており、皮膚からのビタミンD合成が昔ほどは期待できなくなっている。
また、紫外線対策をしっかりしている母親の体内にはビタミンDが少ない。ということは、母乳にも少ないので、完全母乳で育つ赤ちゃんはビタミンDが不足しやすい。さらに、最近では、アトピー性皮膚炎を恐れて自己流で卵を除去したり、魚を食べさせ始める時期を遅らせる人が増えている。これらの食品は、ビタミンDの重要な供給源だ。こういった理由が重なって、乳幼児のくる病が増えてきたのではないかと考えられている。
成人してからのビタミンD不足は、骨に痛みが出たり変形したりする「骨軟化症」の原因になる。また、閉経後の女性や高齢者では「骨粗鬆症」の原因にもなるので注意が必要だ。
「ビタミンD(25〔OH〕ビタミンD)の血中濃度が高い高齢者は、筋力が強いということが報告されています。つまり、ビタミンDをしっかりとると転倒や骨折が予防できる可能性が高く、健康寿命を延ばすために役立ちます。ビタミンDは今後ますます注目されると思います」(上西氏)
皮膚に影響が出ない程度に日光浴をしよう
ここまで読んで、紫外線は浴びない方がいいの? 浴びたほうがいいの? 浴びるならどれくらいの時間? と思った方もいるだろう。
「紫外線の害を考慮すると、紫外線対策は必要だと思います。しかし、“ある程度”は日に当たったほうが、骨粗鬆症のリスクは減らせるでしょう」(上西氏)
この“ある程度”は、住んでいる地域、季節、天気、肌タイプなどによって左右されるため、一律に「◯分」とはいえない。
