日経グッデイ

知ってトクする栄養学

働き盛りの男性こそ「ビタミンC」でストレス撃退

第8回 美肌・美白だけじゃないビタミンCの働き

 村山真由美=フリーエディター・ライター

いろいろな健康法やダイエット法が流行っては廃れていく昨今。情報が多すぎて「何をどれだけ食べたらいいか」がわかりにくい時代。だからこそ、栄養の基本のキを押さえておきましょう。今回のテーマはビタミンCです。

 ビタミンCはビタミンのなかでもおなじみで、「美容ビタミン」として知られている。美肌、美白などを目的にビタミンCのサプリメントを飲んだり、ビタミンC入りの化粧品を利用している女性も多いだろう。

 ビタミンCにはコラーゲンの合成をサポートしたり、細胞の老化を防いだり、シミを防ぐ働きがあるため、確かに美容には有効だ。しかし、もともとは「壊血病」を予防する物質として発見された栄養素だということをご存じだろうか。

壊血病の解消に役立ったライムジュース

 私たちの体をつくっているたんぱく質の約3分の1はコラーゲンだが、ビタミンCはコラーゲンの合成に必須な成分だ。コラーゲンは皮膚、血管、骨に多く含まれていて、細胞と細胞の間をつなぐ接着剤のような役割を果たしている。

 「ビタミンCが不足してコラーゲンが十分に合成できないと、皮膚に張りがなくなったり、毛細血管がもろくなって出血しやすくなったり、骨折を起こしやすくなったりします。これが壊血病です」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)

 ビタミンCというとレモンのイメージがあるかもしれないが、野菜やいも類などにも多く含まれている(下表)。

ビタミンCを多く含む食品
食品ビタミンC含有量(mg)
野菜赤ピーマン 1/2個(正味60g)102
芽キャベツ 4個(60g)96
黄ピーマン 1/2個(正味60g)90
ブロッコリー 1/4個(60g)72
菜の花 1/2束(50g)65
カリフラワー 1/4個(75g)61
かぶの葉 かぶ1個分(50g)41
ゴーヤー 1/2本(正味50g)38
いも類じゃがいも 1個(正味120g)42
果物柿 1/2個(正味90g)63
キウイフルーツ 1個(正味90g)62
いちご 1/4パック(90g)56
オレンジ(ネーブル) 1/2個(75g)45
アセロラジュース(10%果汁入り) コップ1杯(180g)216
グレープフルーツジュース(濃縮還元) コップ1杯(180g)95
レモン果汁 1個分(30g)15
船乗りの命を守ったライムジュース。(©Anna Kucherova-123rf)

 15~17世紀の大航海時代、航海が長くなると生鮮食品がとれなくなるため、壊血病で死亡する船乗りが多かった。イギリス海軍のキャプテン・クックは世界一周航海の際、ライムやザワークラウトを船に積み込むことで壊血病を予防したという。

 その後、イギリス海軍では、乗組員にライムジュースを飲ませるようになった。現在でも、イギリスの軍艦や商船、または船乗りのことを「ライム・ジューサー」「ライミー」と呼ぶことがあるという。ライムジュースが航海にいかに欠かせなかったかを表す逸話だ。

 ちなみに、壊血病はラテン語でscorbiaという。ビタミンCはアスコルビン酸ともいうが、これは、ビタミンCが壊血病を予防する物質として発見されたことに由来する。

細胞の酸化を防いでアンチエイジング

 金属が酸化するとさびるように、細胞も酸化するとさびてしまい、老化や病気の原因になる。なかでも脂質が酸化してできる過酸化脂質は細胞の老化と深く関わっている。

 「ビタミンCは過酸化脂質の生成を抑え、老化や動脈硬化を予防します。とくに、ビタミンEと合わせると相乗効果を発揮し、LDLコレステロールの酸化を抑えて心臓血管系の疾患を予防します」(上西氏)

 ビタミンCは水溶性のため主に体液中に存在し、ビタミンEは油溶性のため主に細胞膜に存在する。それぞれが違う持ち場で過酸化脂質の生成を抑えるため、一緒にとると相乗効果を発揮するのだ。また、ビタミンCはさび取りで消耗したビタミンEをよみがえらせる作用もあるという。

 つまり、アンチエイジングや生活習慣病の予防効果を狙うなら、ビタミンCを単独でたくさんとるよりも、ビタミンEを合わせてとるほうが賢い。ビタミンEは植物油、ナッツ類、魚介類、野菜などに含まれているが、赤ピーマン、菜の花、かぼちゃ、モロヘイヤなどは、ビタミンCとビタミンEを併せ持つおすすめの野菜だ。

メラニン色素の沈着を防いでシミを防ぐ

 また、ビタミンCにはシミを予防する働きがある。「紫外線の刺激を受けると、チロシンというアミノ酸がチロシナーゼという酵素の働きを受けてメラニンという黒い色素になります。ビタミンCはチロシナーゼの働きを阻害してメラニン色素の沈着、つまりシミを防ぐといわれています」(上西氏)

 シミには紫外線が原因の老人性色素斑だけでなく、遺伝的な要素の強いソバカス、女性ホルモンが関係している肝斑などがあるが、いずれの場合も、ビタミンC不足や代謝障害が推定されれば、ビタミンCは治療薬としても用いられる。

生食もいいが、野菜は煮汁ごと食べるのもアリ

生食にこだわらず上手にビタミンCをとろう。(©amarosy -123rf)

 ビタミンCの成人の摂取推奨量は1日100mgだ。これは、壊血病の予防というよりは、心臓血管系疾患の予防や抗酸化を目的に算出されたものだ。

 ビタミンC 100mgは、野菜なら赤ピーマン1/2個、果物ならグレープフルーツジュース(濃縮還元)コップ1杯に含まれる量なので比較的とりやすい。実際、『国民健康・栄養調査(平成25年度)によると、成人の平均摂取量は1日100mgとなっている。しかし、これは平均値なので、半数近くは不足気味かもしれない。

 「ビタミンCは生鮮食品だけでなく、お茶やジュース、惣菜類、パンなどに酸化防止剤として幅広く含まれているため、欠乏する(つまり壊血病になる)ことはまずありません。非常にまれなケースとして子どもの壊血病が報告されていますが、この例では、母親が厳格な食事コントロールをしていて、野菜には全て火を通し、加工食品を一切与えていなかったといいます」(上西氏)

 ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱いため、調理による損失が大きいといわれる。確かに、新鮮な野菜や果物を生で食べれば効率よくとれるが、必ずしも生食でなければいけないわけでもないという。

 「野菜のビタミンCは加熱すると壊れますが、長時間グツグツ煮ない限り、ゆでたり煮たりした汁に溶け出しています。つまり、煮汁ごと食べる具だくさん味噌汁のような料理なら十分にとれます。サッと加熱するとカサを減って量がとれるので、損失分をカバーできるという利点も。前述の子どもはよく加熱した野菜だけを食べて、煮汁は食べていなかったのかもしれません」(上西氏)

タバコを吸う人、ストレスが多い人は多めにとろう

 ビタミンC=美容ビタミンというイメージがあるが、抗酸化作用で生活習慣病やがんを予防したり、病気に対する抵抗力を高める働きがあるため、働き盛りの男性にもおすすめしたい。とくに、喫煙者やストレスが多い人は、ビタミンCが不足しがちだ。タバコを吸うとニコチンなどの有害物質が体内に入ってくるため、活性酸素が大量に発生する。それを消去するためにビタミンCが使われるのだ。

 「タバコを吸う人は、吸わない人よりも1日あたり35mg以上余分にビタミンCをとる必要があります。受動喫煙でも血液中のビタミンC濃度が低下するという報告があるので、身近に喫煙者がいる人も注意したほうがいいでしょう」(上西氏)

 また、ビタミンCはストレスがあると消費される。「私たちの体はストレスがかかると副腎皮質ホルモンが大量に分泌され、血圧や血糖値を上昇させてストレスに対抗します。ビタミンCは副腎皮質ホルモンの合成に欠かせないビタミンです」(上西氏)。この場合のストレスは、不安や緊張、イライラといった精神的なものだけでなく、暑さ寒さ、過労、睡眠不足なども含む。

 ビタミンCはとりすぎると尿中に排泄されるので過剰症の心配はないが、サプリメントなどで1日に3~4g以上摂取すると、下痢を起こすことがあるという。

 「ビタミンCは体内にとどまる時間が短いので、一度にたくさんとるよりも、三度の食事のたびにこまめにとるのが理想です。サプリメントで補う場合も、1日2回よりも3回とるもののほうがいいでしょう」(上西氏)

  • 野菜、イモ類、果物を積極的に食べる。
  • 野菜やイモ類を加熱する場合、煮汁ごと食べる。
  • 抗酸化作用を求める場合、ビタミンEと合わせてとる。
  • 喫煙者やストレスが多い人は多めにとる。
  • 一度にたくさんよりもこまめにとる。

 この5点に注意して、ビタミンCを賢くとろう。

上西一弘(うえにし かずひろ)さん
女子栄養大学栄養生理学研究室教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。