生食もいいが、野菜は煮汁ごと食べるのもアリ

ビタミンCの成人の摂取推奨量は1日100mgだ。これは、壊血病の予防というよりは、心臓血管系疾患の予防や抗酸化を目的に算出されたものだ。
ビタミンC 100mgは、野菜なら赤ピーマン1/2個、果物ならグレープフルーツジュース(濃縮還元)コップ1杯に含まれる量なので比較的とりやすい。実際、『国民健康・栄養調査(平成25年度)によると、成人の平均摂取量は1日100mgとなっている。しかし、これは平均値なので、半数近くは不足気味かもしれない。
「ビタミンCは生鮮食品だけでなく、お茶やジュース、惣菜類、パンなどに酸化防止剤として幅広く含まれているため、欠乏する(つまり壊血病になる)ことはまずありません。非常にまれなケースとして子どもの壊血病が報告されていますが、この例では、母親が厳格な食事コントロールをしていて、野菜には全て火を通し、加工食品を一切与えていなかったといいます」(上西氏)
ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱いため、調理による損失が大きいといわれる。確かに、新鮮な野菜や果物を生で食べれば効率よくとれるが、必ずしも生食でなければいけないわけでもないという。
「野菜のビタミンCは加熱すると壊れますが、長時間グツグツ煮ない限り、ゆでたり煮たりした汁に溶け出しています。つまり、煮汁ごと食べる具だくさん味噌汁のような料理なら十分にとれます。サッと加熱するとカサを減って量がとれるので、損失分をカバーできるという利点も。前述の子どもはよく加熱した野菜だけを食べて、煮汁は食べていなかったのかもしれません」(上西氏)
タバコを吸う人、ストレスが多い人は多めにとろう
ビタミンC=美容ビタミンというイメージがあるが、抗酸化作用で生活習慣病やがんを予防したり、病気に対する抵抗力を高める働きがあるため、働き盛りの男性にもおすすめしたい。とくに、喫煙者やストレスが多い人は、ビタミンCが不足しがちだ。タバコを吸うとニコチンなどの有害物質が体内に入ってくるため、活性酸素が大量に発生する。それを消去するためにビタミンCが使われるのだ。
「タバコを吸う人は、吸わない人よりも1日あたり35mg以上余分にビタミンCをとる必要があります。受動喫煙でも血液中のビタミンC濃度が低下するという報告があるので、身近に喫煙者がいる人も注意したほうがいいでしょう」(上西氏)
また、ビタミンCはストレスがあると消費される。「私たちの体はストレスがかかると副腎皮質ホルモンが大量に分泌され、血圧や血糖値を上昇させてストレスに対抗します。ビタミンCは副腎皮質ホルモンの合成に欠かせないビタミンです」(上西氏)。この場合のストレスは、不安や緊張、イライラといった精神的なものだけでなく、暑さ寒さ、過労、睡眠不足なども含む。
ビタミンCはとりすぎると尿中に排泄されるので過剰症の心配はないが、サプリメントなどで1日に3~4g以上摂取すると、下痢を起こすことがあるという。
「ビタミンCは体内にとどまる時間が短いので、一度にたくさんとるよりも、三度の食事のたびにこまめにとるのが理想です。サプリメントで補う場合も、1日2回よりも3回とるもののほうがいいでしょう」(上西氏)
- 野菜、イモ類、果物を積極的に食べる。
- 野菜やイモ類を加熱する場合、煮汁ごと食べる。
- 抗酸化作用を求める場合、ビタミンEと合わせてとる。
- 喫煙者やストレスが多い人は多めにとる。
- 一度にたくさんよりもこまめにとる。
この5点に注意して、ビタミンCを賢くとろう。
女子栄養大学栄養生理学研究室教授

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。