これらを働かせるのに必要なもの、それは食物繊維だ。「食物繊維は乳酸菌やビフィズス菌のエサとなり、増殖を助けます。ヨーグルトをとるときは食物繊維を一緒にとるといいでしょう。果物やナッツなどを合わせると手軽にとれます」(上西氏)。
果物にも食物繊維は多く含まれる。1日200gを目安にとると、ビタミン、ミネラルだけでなく食物繊維の補給にもなるのだ。
食物繊維に似た働きをする成分にも注目
日本では、“食物繊維とは、ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化成分の総体”と定義されている。
「近年、食物繊維のさまざまな生理作用・機能が明らかになり、食物繊維の定義に当てはまらないものの、食物繊維と類似した作用・機能を持つ食品成分があることがわかってきました。そのため、食物繊維の定義自体を改めようとする動きもありますし、国によっても食物繊維の定義は異なります」(上西氏)
食物繊維に似た働きをする成分には、 難消化デキストリン、レジスタントスターチ、レジスタントプロテイン などがある。
難消化デキストリンは、トウモロコシのデンプンが原料で、食物繊維不足を補うために作られた成分だ。トクホ(特定保健用食品)などに使用されているので、見かけたことがある人も多いだろう。
レジスタントスターチは、穀類やイモ類に多く含まれている。加熱すると減り、冷めると増えるのが特徴で、温かいごはんよりもおにぎりなどに多い。レジスタントプロテインは、酒かすに多く含まれている。
食物繊維は、体の構成成分やエネルギー源にならないため、かつては“役立たず”とされてきた。しかし、便通を促したり、余分なものを排出する働きは、栄養過多な現代人にとって、非常に重要な成分といえる。1日24gを目指して積極的にとろう。
女子栄養大学栄養生理学研究室教授

徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。
専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。
『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。