日経グッデイ

ママチャリライダーがセンチュリーライドを目指してみた

160km完走を可能にした2カ月間のトレーニング

ビンディングと固定ローラーを取り入れ、最後のパワーアップ

 中西奈美=日経Gooday

前回まで3回にわたって、「ホノルルセンチュリーライド2015」で160km完走を危ぶまれながらも、なんとかゴールした様子をお伝えしました。今回は、それを可能にしたセンチュリーライド参加までの2カ月間のトレーニング内容を紹介します。

[画像のクリックで拡大表示]

 2015年9月27日に開催された「ホノルルセンチュリーライド2015」で100マイル(160km)に挑む前、最後に走ったロングライドは7月20日の「第4回 南会津ロードツアー『走ってみっぺ南会津!』」(参照記事:「センチュリーライドの前哨戦で100kmに挑戦して分かったこと」)での90km。それからセンチュリーライド本番までの2カ月は、夏の暑さや天候不良、仕事のやりくりの難しさなどから、自転車に乗り続ける時間を確保するのが難しい状況が続きました。

後輪に固定ローラーをつけて、地面から浮かせます。
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで、本番の2カ月前辺りからトレーニングとして取り入れたのが「固定ローラー」です。「自転車で走る時間がなくて…」とこぼしていた私を気にして、本企画でアドバイザーをお願いしているサイクルライフナビゲーターの絹代さんが勧めてくれました。

 後輪の軸を専用の器具で浮かせて固定するので、ペダルを回すとその場でリアタイヤが回転します。私が借りた固定ローラーは、後輪のタイヤに接触させるローラーが回転時の負荷になるので、道を走っているような感覚でペダルを回すことができる優れもの。路上を走りに行く余裕はないけれど、自宅でちょっと時間ができたときに、固定ローラーに自転車をセットして乗るようにしていました。

 絹代さんによると、固定ローラーで効果的に体力アップをさせるコツは以下の通りです。

 だらだら乗っているのはNG!

 5分間「キツイ!」と思う強度でペダリング
 10分間「少しキツイ!」と思う強度でペダリング
 のどちらかをトレーニングの間に混ぜ込んでいく

 すき間時間を使うと、1週間に2~3回は固定ローラーを使うことができました。絹代さんからのアドバイスの通り、10分近く重いギアでペダルを回していると、汗がにじんできます…そう、屋外を走っていたときは風が体に当たって、汗が乾いていたのですが、固定ローラーでは風もなければ景色も変わりません。汗をぬぐいながら音楽を聴いたり、携帯の動画を見たりと、飽きないように工夫をしながらトレーニングを続けました。

後輪にローラーを密着させると、路上を走っているような感じでペダリングできます。
[画像のクリックで拡大表示]

遠征は60km×2回、ビンディングも投入!

 固定ローラーばかりではなく、路上に出て走っておかないと…と、仕事の合間を見つけて、絹代さんと一緒に2回、東京から少し足を延ばして走り込みに行くことに。ただ、今年は夏の終わりから天候に恵まれず、リスケジュールにリスケジュールを重ねて、気がつけば2回とも本番まで1カ月を切ってからの走り込みとなりました。2回の走り込みでそれぞれ意識したのは次のようなことです。

【1回目】ロードバイクでのビンディングに慣れる

9月4日(ホノルルセンチュリーライド2015まであと22日)@霞ヶ浦

 ビンディングとは、シューズの底板に取り付けたクリートを専用のペダルで固定する機構のこと。「長時間、効率良くペダリングするためには、ビンディングを使いたい」。特に上り坂が苦手な私がそう考え、引き足の力を無駄にしないビンディングをロードバイクで使い始めたのがこの日でした。

 クロスバイクの時に使ったビンディングと違い、クリートを取り付けるビンディングシューズの底板は脚の力を無駄なく伝えるために硬く、クリートやペダルは互いをしっかりとらえるために大きいのが特徴です。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
今回、ロードバイクに取り付けたビンディングペダル(写真左)とシューズの底板に取り付けたクリート(写真右)。

 センチュリーライド本番まで日が迫っているので、「絹代さんと一緒に走れるうちに早く使い慣れないと!」と、気持ちが焦っていましたが、クロスバイクに乗っていたときにビンディングを使っていたこと(参照記事:「愛車も私もパワーアップ! ビンディングペダルに挑戦」)を体が覚えていたのか、ペダルとクリートの着脱は意外とすんなりできるようになりました。よかった…。

久しぶりのビンディング。「カチッ」と、確実に着脱できる力加減を確かめながら慣らしていきます。
[画像のクリックで拡大表示]
この日は霞ヶ浦に沿って走りました。(Suunto Movescount MYMOVEより)
[画像のクリックで拡大表示]

 比較的アップダウンの少ないルートでしたが、ビンディングの操作に慣れることと、長時間自転車に乗り続けることを目標に総距離56.3kmを走りました。

霞ヶ浦の反対側はハス畑が広がっていました。
[画像のクリックで拡大表示]

【2回目】アップダウンのあるコースで体力アップを目指す

9月15日(ホノルルセンチュリーライド2015まであと12日)@埼玉県比企郡

 10日前にビンディングを使い始めてからまたまた天候に恵まれず、なかなか路上を走ることができませんでした。久しぶりの晴れ間、たまっていた仕事を前日までに片付けて絹代さんと埼玉県の比企郡に走りに行くことに。

 この日は山間部のアップダウンがしっかりあるルート(奥武蔵自転車旅行社考案)とのこと。スタート地点のときがわベースで準備をしながら、男性スタッフに周辺のサイクリングコースについて聞いてみると、「上り坂の練習をするにはいい坂がたくさんありますよ!」とのこと。…これは覚悟せねば。

 「もし、足りなかったら“おかわり坂”もありますからねー!」とスタッフに見送られて、ときがわベースを出発しました。直後から高低差が70メートルある上り坂が控えています。

スタート直後から緩やかな上り坂を攻めていきます。
[画像のクリックで拡大表示]

 上り始めると、サイクルコンピュータが表示する速度は低空飛行のまま…。しかし、ビンディングで足がペダルに固定されているので、そう簡単には自転車から降りることができません。「降りたいけど降りられない」という状態で、ノロノロと坂を上り切りました。

 絹代さんのアドバイスもあり、脚の血流を良くするために履いたコンプレッションタイツのおかげで、脳貧血になることはありませんでした。おお、やった!

 しかし、上り坂の疲れがてきめんに出てきた場面がありました。道に迷ってしまったときのこと、自転車を押して移動しなければならないときに、右足のビンディングが外れず自転車ごと転倒してしまったのです。倒れた瞬間に荷重がかかったのか、右のブラケット(ハンドルでレバーが付いている部分)が内側に大きく曲がってしまうという事態に…(驚)。「自転車、壊しちゃったかも」と肝を冷やしました。

 応急処置として、絹代さんに協力してもらって腕力でハンドルを元の形に戻し、先に進みました。絹代さんに聞くと、シフトレバーやワイヤーなどに異常があると、自転車が制御できなくなることもあるので、スポーツバイクを扱っている専門店に持ち込み、点検してもらったほうがいいとのこと。

一度大きく曲がってしまったハンドルを気にしながら走ります。大丈夫かな…。
[画像のクリックで拡大表示]

 そんなアクシデントに見舞われながらも、総距離55.9kmを走り切り、ホノルルセンチュリーライド完走を目指しての追い込みを終えました。このときは「完走できそう、でも、完走できないかも」と、自信は半分くらいでした。

アップダウンのあるコースが、国内最後の走り込みになりました。(Suunto Movescount MYMOVEより)
[画像のクリックで拡大表示]

 ハンドルが曲がってしまった自転車は、その後、近所のスポーツバイク専門店に持って行き、メンテナンスをしてもらいました。「ホノルルセンチュリーライドを走りに行くんですよ、仕事ですけどね」なんて、恥ずかしくておちゃらけて見せましたが、店員さんから「しっかり整備しますから、完走してきてくださいよ!」と励まされると、「頑張らなくちゃ」と気持ちが引き締まりました。

 ホノルル行きが近づくにつれ、不安と緊張感が増しましたが、絹代さん、自転車の用具を借りたメーカーの担当者さんなど、本企画でお世話になった人々や編集部のみんな、家族からの「がんばって!」のエールに背中を押され、「完走できる自信はないけど、きっとなんとかなる!」と自分を鼓舞しながら、旅の支度を始めました。その後のセンチュリーライドの様子は別の記事で紹介した通りです(参照記事:「ホノルルセンチュリーライドに向け、いざ出発!」「ずぶ濡れライダー、センチュリーライドで落車」「11時間の泥だらけライドで手に入れた160kmのゴール」)。

これからも自転車を乗り続けます!

これからも自転車に乗り続けます!

 2014年10月以来続けてきたこの連載も、この回をもって終了します。今まで読んで応援してくださった皆さん、ありがとうございました。雨の中のライドや疲労感を残さない走り方など、まだ課題は残っているので、これからも私は自転車を趣味の一つとして続けたいと思います。この連載を通して、1人でも多くの人に自転車が興味を持ってもらえたら嬉しいです。

自転車:17万円(税別)(FELT ZW7
ビンディングペダル・クリート:9500円(税別)(LOOK KEO クラシック2) スポーツウォッチ:5万2000円(税別)(SUUNTO Ambit3 Sport HR Coral
コンプレッションタイツ:1万8000円(税別)(アライメントライドロングタイツ
固定ローラー:2万8600円(税込)(Minoura Quattro-C

絹代(きぬよ)さん
サイクルライフナビゲーター・健康管理士・自転車活用推進研究会理事・飯田市エコライフコーディネーター
絹代(きぬよ) 1975年横浜市生まれ。東京大学農学部卒業後、国際協力事業団(JICA)勤務を経て、英国大学院で身体運動と栄養について学ぶ。自転車ロードレースの実業団、日本代表の広報スタッフも経験。現在は雑誌、TV、ラジオなどのメディア、各種イベントで、MCや、自転車フィットネスの提案を行うなど、自転車を軸に健康、美容、エコのフィールドで活躍中。また、自転車を使った町おこしや、女性のためのイベント、子ども自転車教室のスタッフも務めるなど、自転車の活用や普及、啓発のためにも積極的に活動している。近著に『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』『自転車と旅しよう!』など(ともに枻出版社)がある。