日経グッデイ

ママチャリライダーがセンチュリーライドを目指してみた

11時間の泥だらけライドで手に入れた160kmのゴール

最後は太陽の祝福の下、「ホノルルセンチュリーライド」完走!

 中西奈美=日経Gooday

ホノルルセンチュリーライド2015のリポート、いよいよ完結編です。センチュリーライド当日は天気予報が的中し、朝から断続的な雨。そんな中、苦手だった上り坂を克服して自信をつけたり、ハイウェイで転倒したり、前半からいろいろありましたが、その後どうなったのか。気になる結末をお届けします。

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 雨の中スタートしたホノルルセンチュリーライド2015(前回記事:「ずぶ濡れライダー、センチュリーライドで落車」)。ホノルルの断続的な雨は、ライダーに容赦ありませんでした。雨天時のライドに慣れていない私は、40km地点のハイウェイでスリップして転倒…。でも、異常がないことを確かめた後、少し休んでライドを再開、先を急ぎました。

 その先に、特に初心者が完走する上で気をつけなければならない難所が待っていたのです。スタートから60km地点にあるエイドステーション「セブン・イレブン(7-Eleven)」は、午前10時30分までにそこを通過しないと先に進めなくなってしまいます。間に合わなかったらエイドステーションで折り返さねばならず、100マイル(160km)完走を果たすことができません(最長75マイル[120km]になる)。

 アクシデントの後、ライドを再開したのが午前9時半ごろ。…ということは、残り20kmを1時間で走らないと、エイドステーションを通過できないという状況でした。まだ半分も走っていないのに、100マイル完走を諦めることはできません。

制限時間ギリギリに到着、間に合った!

 空はだんだん白んできたものの、雨が止む気配はありませんでした。「雨が降るとパンクしやすい」というのは本当で、路肩でチューブ交換している人をよく見かけました。路面には凸凹があったり、ガラスや金属の破片が散らばったりしていますが、自転車が走る速さでそれを見つけて回避するのはほぼ不可能なので、パンクするか否かは“運”なのかもしれません。

 そう考えると、パンクに対する不安を抱えていても仕方ありません。今はとにかく、センチュリーライド完走に向けて、協力してくれているサイクルライフナビゲーターの絹代さんとベテランライダーの橘田さん、西岡さんから遅れないように走るしかない!と気持ちを再び引き締めて走ります。ぶつけた膝や頭の痛みもまったく感じませんでした。

 右側に山が切り立った道に入るとエイドステーションのテントが見えてきました。足切り時間の10分ほど前でしょうか、無事にエイドステーションに到着しました。あ~~、本当によかったぁ!

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 絹代さんたちの勧めもあり、エイドステーションの救護所に寄ると、ボランティアの女性が膝の手当てをしてくれるとのこと。コンプレッションタイツを履いていたおかげか擦り傷程度で済んでいました。消毒した後、絆創膏を貼っておしまいです。

 皆のもとに行くと、「まるで戦士みたいですね」と絹代さんが濡らしたティッシュを差し出してくれました。自分ではわからなかったですが、前を走る自転車の跳ね返りで、顔中、泥が混じった無数のしぶきが飛び散っていたのです…! 見るとウエアも前後とも縦にしぶきの跡が残っています。でも、私だけではありません。同じように雨の中を走ってきた人たちはみな泥だらけです。

海岸線を走る道は強い横風にさらされる

 難所のエイドステーションの先には、ホノルルセンチュリーライドの魅力の一つ、海岸線をなぞるカメハメハハイウェイ(Kamehameha Hwy)がありました。天気の良い日は、青い空とオーシャンブルーを堪能できるらしいのですが、あいにくの曇り空。海風が強く、波の音は風切り音にかき消されてしまいます。

ホノルルセンチュリーライドでは、100マイルに挑戦する人だけが通る海沿いのカメハメハハイウェイ。
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 海岸線に沿った道は風除けになるものがないので、海からの強い風に、前輪が下からフワッと持ち上げられる感覚が何度かありました。怖い。風にあおられるたびにとっさに上体を前にかがめて、ハンドルをしっかり握り、「前を走る自転車のハンドサインを見逃すな」「道路の状態を確認せよ」…と全神経を集中させ、気が付けば体に力が入っている状態が続きました。

スタートから100kmを超えて自分の限界を知る

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スタートから80km地点、100マイルの折り返し地点に到着。

 午前11時半すぎに100マイル折り返し地点のスワンジービーチパーク(Swanzy Beach Park)に到着。スタートから5時間以上経っていました。近くにあるコンビニエンスストアまで歩いて昼ごはんを買いに行きますが、あろうことか食欲が全くわきません。温かいコーヒーとクッキーサンドを買いましたが、全部は食べきれませんでした。エイドステーションで振る舞われていたバナナやオレンジ、クラッカーにも手が出ません。それでも、スタミナ切れを防ぐために、サドルバッグに入れていたゼリー飲料とサプリメントを無理やり胃に流し込みました。

 いよいよ復路、自分史上最長距離への挑戦です。

 スタート地点から100kmを過ぎると、往路で通ってきた同じ景色の道に入りました。自転車をさらうような風がなく、雨も上がったので、だんだん集中力が切れてきました。脚も疲れてきたような気がします。起床時間が早かったので少し眠気も感じていました。

「立ちゴケ」2回、坂道で自転車から降りるもゴールへ向かう

 アクシデントなどのため往路で時間がかかってしまった分、復路は巻いていかないと午後5時までにゴールすることができません。エイドステーションでの休憩は必要最低限で切り上げたので、疲れが全く解消されず溜まる一方です。それを察知した体は省エネモードになってきて、油断してはいけない赤信号でまた、やってしまいました。

 左足のビンディングを外して、着地した瞬間ふらり…。

 左の膝に力が入らず、自転車ごとバタン! いわゆる「立ちゴケ」です。しかも2回もやらかす始末。一緒に走ってくれている仲間にも、自分の疲れをあらわにしてしまいました。「このまま頑張れば、制限時間内にギリギリゴールできるかもしれない」という、ボーダーラインの時間でしたが、絹代さんたちと相談して、「無理をせずに走り、制限時間は過ぎてもゴールに向かう」ことになりました。私は恐縮しきりです。

 復路は最後に、マカプウ・ビーチ・パーク(Makapuu Beach Park)を臨む長い上り坂が待っていました。少しでも体力を復活させるために、私は自転車から降りて押して上ります。ホノルルセンチュリーライドで唯一、自転車で上るのをあきらめた坂…。私なんかよりずっとずっと体格のいい女性が、私たちを後ろから抜き去って、グングン上っていくのを見て「自分はなんで上れないんだろう?」と、その違いを不思議に思います。往路ではまだイキイキしていたマカプウ岬…写真を撮ってもらっておいてよかった。

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復路のマカプウ・ビーチ・パークでは無理せず自転車を押して行きました(左)。往路はマナナ島が浮かぶ海をバックに絹代さんと記念撮影(右)。

祝福(?)の太陽の下、キレイになった愛車でゴールへ

 大きな坂を上りきったら、あとは下るだけ。乾いた下り坂を気持ちよく風を切って走ります。やっとのこと、天気もハワイらしくギラギラとした日差しになってきました。眠気が一気に吹き飛び、テンションが上がります。雨で日焼け止めは落ちてしまったけど…、気にしない気にしない。

 午後4時30分、最後のエイドステーション「クアパ・プリ・スクール(Kuapa Pre-School)」に滑り込みました。30分前にこのステーションの制限時間を過ぎてしまったので、テントや机をボランティアの人たちが片付けているところでしたが、まだ残っていた飲み物とバナナをもらって最後のエネルギー補給です。そして、雨で泥だらけになった相棒も、用意してあったホースから水を勢いよくかけて泥を洗い流してもらいました。

 晴れて、相棒もきれいになって、あとはゴールできれば文句なし。

 残り16km地点。このまま行けばゴールの制限時間をオーバーするのは確定です。もう、フィニッシュゲートは撤去されているかもしれないけど、とにかくゴールすることに決めました。

 ホノルル滞在中に何度も自転車で通ったダイヤモンドヘッドロードを越えると、スタートしたカピオラニ公園が見えてきました! あぁ、もう人がまばら。でもゲートはまだあった!!

 最後は絹代さんと一緒にゲートをくぐりました。スタートから約11時間、目標としてきた100マイルを走り切りました。

制限時間を過ぎてしまったけど、フィニッシュゲートは…まだありました!
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制限時間を超えたけど…約11時間で完走

 センチュリーライドの前哨戦として7月に参加した「走ってみっぺ南会津」(参照記事:「センチュリーライドの前哨戦で100kmに挑戦して分かったこと」)では、90kmを走った末のゴール直後に涙が出てきましたが、ホノルルセンチュリーライドでは完走できて、とにかくホッとしました。

 片付けを始めていたテントで、完走証を受け取り100マイル完走のシールを貼ってもらい、イベント終了です。

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100マイルの完走証(左)。センチュリーライドでの走行記録(右、SUUNTO Ambit3 Sport HR Coralでのログデータ)。

 アドバイザーの絹代さん、センチュリーライドでゴールに導いてくれた東武トップツアーズ ハワイ支店長の橘田さんとベテランライダーの山根さん、何度も転んだ私を助けてくれた救急救命士の西岡さん、そのほか私に勇気を与えてくれた皆さん、本当にありがとうございました。次回は制限時間内で完走したい! 絶対来るぞ。

センチュリーライド完走の途中で私を救ってくれた皆さん。ありがとうございます!
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自分史上初の全身筋肉痛…

 翌日はホノルルセンチュリーライドの興奮が冷めないまま、帰国の途につきました。落車の時に痛めたであろう首、立ちゴケした時にハンドルにぶつけた太もものほか、筋肉痛で全身が痛く、歩くのもやっとの状態。ずっとハンドルを握っていた手は力が入らず、瓶のフタが開けられない、字が書けない…という不便が生じました。でも、ホノルルを発ってしまうのは本当に残念。

 さて、目標としていたホノルルセンチュリーライドを無事完走し、1年続けてきたこの連載もそろそろ一区切りの時期。でも終了の前に、次回はホノルルセンチュリーライド2015参加に向けて、絹代さんと一緒に、もしくは個人でトレーニングした様子をまとめてご紹介。センチュリーライドで完走を果たした、パワーアップのヒントをお届けします。

自転車:17万円(税別)(FELT ZW7
ビンディングペダル・クリート:9500円(税別)(LOOK KEO クラシック2) スポーツウォッチ:5万2000円(税別)(SUUNTO Ambit3 Sport HR Coral
コンプレッションタイツ:1万8000円(税別)(アライメントライドロングタイツ

(写真:東武トップツアーズ提供)
絹代(きぬよ)さん
サイクルライフナビゲーター・健康管理士・自転車活用推進研究会理事・飯田市エコライフコーディネーター
絹代(きぬよ) 1975年横浜市生まれ。東京大学農学部卒業後、国際協力事業団(JICA)勤務を経て、英国大学院で身体運動と栄養について学ぶ。自転車ロードレースの実業団、日本代表の広報スタッフも経験。現在は雑誌、TV、ラジオなどのメディア、各種イベントで、MCや、自転車フィットネスの提案を行うなど、自転車を軸に健康、美容、エコのフィールドで活躍中。また、自転車を使った町おこしや、女性のためのイベント、子ども自転車教室のスタッフも務めるなど、自転車の活用や普及、啓発のためにも積極的に活動している。近著に『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』『自転車と旅しよう!』など(ともに枻出版社)がある。