日経グッデイ

ママチャリライダーがセンチュリーライドを目指してみた

ずぶ濡れライダー、センチュリーライドで落車

ハイウェイでまさかのスリップ! 仲間に支えられ命拾い

 中西奈美=日経Gooday

前回に引き続き、ホノルルセンチュリーライド2015のリポートをお届けしています。当日は天気予報が的中し、朝から断続的な雨。これまで苦手だった上り坂を克服して自信をつけた一方、ロードバイクでの雨の中のライドは初体験。ハンドル操作を誤らないか、体に力が入ります。不安は的中し、ハイウェイでスリップ、転倒してしまいました。

 前回、記事でお伝えした通り、センチュリーライドの前日には、東武トップツアーズが主催する「プラクティスライド(初中級者向け)」に参加。途中の上り坂では、自転車を降りることなく上り切るという変身ぶりに自分でも驚きました(「ホノルルセンチュリーライドに向け、いざ出発!」)。そんな中、自信とやる気とそして、「最長距離を走り切れるか」という少しの不安を抱きながら、当日の朝を迎えました。

ハワイでは雨は「神様からの祝福」、でも…

センチュリーライドのコース図
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 しかし午前4時、目覚ましに促されて、眠い目をこすりながらホテルのベランダに出ると、まだ真っ暗な中、小雨が時々強い風に巻き上げられていました。前夜と変わらず、天気予報の雨マークは消えていません。前の晩に望みを託しててるてる坊主を作ったのに、残念。

 でも、がっかりする間もありません。5時半には、スタート地点のカピオラニ公園で、一緒に走る約束をした本企画のアドバイザーであるサイクルライフナビゲーターの絹代さん、東武トップツアーズ ハワイ支店長でベテランライダーの橘田さんと待ち合わせしており、急いで支度をしなければならないからです。

 朝食のゼリー飲料と一緒にクエン酸、BCAAといったサプリメントをとって、この日のために購入した絹代さんと色違いで揃えた「勝負ジャージ」に着替えました。すると、不思議なことに気持ちにエンジンがかかります。以前絹代さんに教えてもらったウォーミングアップ(参照記事「ケガ予防にも効くサイクリング前のウォーミングアップ」)を部屋で念入りにやってから、カピオラニ公園に向かいます。

スタート前にみんなずぶ濡れです。でも、ハワイでは雨は「神様からの祝福」。
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 公園沿いの通りでは、スタートゲートの前に、すでに大勢の参加者が並んでいました。時々雨が激しくなり、自転車を支えて立っていると、ヘルメットから雫が滴り落ちてきます。絹代さんたちを待っている間に開会セレモニーが行われ、「ハワイでは雨は幸福の象徴です!」とMCの女性が繰り返していたのが強く頭に残りました。辺りが暗い中、無事に2人と落ち合い、スタートの合図を待ちました。

 なんと、絹代さんはホテルを出てからスタート地点に並ぶまでの間に、パンクしてしまったそう。「雨の日はパンクしやすい」といわれているので、パンク自体を避けるのは難しそうですが、これまでにパンクの経験がない自分は、自転車がパンクしたら気付くかな?とふと不安に思いました。

まだ辺りが暗い中、絹代さん、橘田さんと会えました。
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朝焼けのダイヤモンドヘッドロードは絶景

雨が上がって海から朝日が昇ってきました。「完走するぞー!」と思わず叫びたくなります。
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 だんだんと空が白んできました。午前6時15分、並んでいた列が前に動き出し、いよいよスタートです。

 流れに乗って走り出すと雨の勢いもおさまってきました。スタート直後はまだ参加者がまとまっているので、二重、三重に並走になる瞬間がありましたが、ダイヤモンドヘッドロードの上り坂に差し掛かると、後続の速い人が次々と前へ抜けて、縦列が整い、走りやすくなってきました。

 海側にせり出したポイントに立ち寄ると、そこから見える朝焼けがキレイ。深呼吸をして、「完走するぞー!」と太陽に向かって叫ぶと気合いがみなぎってきます。よし、がんばろう。

ハートブレイクヒルで「Yes,I can do it!」

 橘田さんを先頭に、私、絹代さん、橘田さんのご友人の西岡さんの順に並んで走り出しました。橘田さんのハンドサイン(後方を走る自転車や自動車に、曲がる方向や減速する意思を示したり、落下物など道路状態に注意を促したりするための手信号)や声かけ(追い抜くときは「on your left」と言う)を、マネしながらスピードを上げて走っていきます。

 すると、難所の一つ、ハートブレイクヒル(Hawaii Kai Dr)が迫ってきました。平均斜度約7%の上り坂が1km弱続き、まるで壁のように見えます。最右列には自転車を降りて押して上っている人もちらほら。でも「今日の自分は上れる気がする…いや、上ってみたい」と思い、前後のギアを一番軽くして坂を上り始めます。

ハートブレイクヒルで奮闘中。笑顔が全くありません。
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 だんだん息が上がってきて、スピードも時速5kmを下回りそうになりますが、「もうダメ」と諦める気分にはなりませんでした。一緒に上っている人たちだって、ツラいはずなのに「あと少し、がんばれ!」などとかけてくれる。そうした声が、私を後押ししてくれて、とうとう上り切ることができたのです!

 でも、まだセンチュリーライドは始まったばかり。上り坂を克服できた余韻に浸っている時間はありません。その直後のエイドステーションで、軽くストレッチをして筋肉をほぐし、この先のロングライドに備えました。

エイドステーションで上り坂の疲れを癒したらすぐに出発です。
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雨でスリップ! ハイウェイでまさかの落車

 海沿いの道から内陸方面に曲がると、雰囲気が一転。熱帯の植物が生い茂り、太古の世界にタイムスリップしたかのような道に入りました。だんだんと雲行きが怪しくなり、空は鉛色。「雨がまた降ってきましたね」と絹代さんが声をかけてから何分も経たないうちに、音を立てて雨が降り出しました。

雨の中のハイウェイ。サングラスをかけていないと目を開けていられません。
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 実は、雨の中をロードバイクで走るのは初めて。前の人から離れないように距離を詰めて走ると、雨の日は道路の泥水をタイヤが跳ね上げて、後ろの人にかかるなんてことを初めて知りました。ウエアや顔は泥だらけ、サングラスがなかったら目を開けていられなかったでしょう。

 前を走る橘田さんに遅れないように走り続けると、ハイウェイに出ました。スピードを出した自動車に後ろから追い抜かれると、空気抵抗でフワッと右側に押し出される感じが怖くて、ブレーキをこまめにかけながら走っていました。路面が濡れているせいか、「なんとなくブレーキの利きが悪いな…」と思っていた瞬間、

 ガシャーン!!!

 自転車ごと車道側に転倒してしまいました。

 白線の中に埋め込まれていたキャッツアイ(道路鋲)に乗り上げ、そこでブレーキをかけたためタイヤが滑ってしまったのです。ビンディングで足がペダルに固定されていたのが幸いしたのか、左膝と左側頭部を地面にぶつけたものの、自転車から放り出されることはありませんでした。

 後ろを走っていた西岡さんがすぐに駆け寄り、靴とペダルのロックを外し路肩に私を誘導してくれました。なんと、西岡さんは救急救命士。意識を確認するために「名前は言えますか?」「今日は何月何日ですか?」と尋ねたり、地面や自転車にぶつけて痛む所を確かめてくれました。絹代さん、橘田さんも心配して声をかけてくれました。

 ふと気付くと、その様子を大勢の人が心配そうに見ています。落車した瞬間を見ていた後続のライダーや、その情報を聞いたサポートカーの人が集まっていたのです。後で聞いた話ですが、車道に倒れた様子を見て、後ろから走ってくる自動車を回避させようと誘導してくれた人、曲がってしまったハンドルのステムを元に戻してくれた人もいたそうです。みなさん、先を急いでいるのに気遣ってくださり、本当にありがとうございます。そして、一緒に走っている西岡さんが救急救命士だったとは、おかげで命拾いしました。

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まさか自分が落車するなんて…とショック(写真左)。なんと、通りかかった今中大介さんが曲がったステムを直してくれました(写真右)。

 結局、左のふくらはぎがつるような感じがするだけで、気になる大きなケガなどはなく、間もなく走行を再開することに。ほんの一瞬だけ、「ドロップアウトしようかな」と考えましたが、すぐに「無理せず、完走してこい」と送り出してくれたドS編集長の顔が頭に浮かんで、邪念はかき消されました。

 「休んでいる場合じゃない。早く進まなくちゃ」と気が急いてきます。…というのも、この先“足切り時間”が厳しい(午前10時30分までに通過しないといけない)エイドステーションが控えていたのです。この時すでに「エイドステーションの足切り時間前に通過するには、残り約20kmを1時間で走らないと間に合わない」という状況でした。

 次回は、エイドステーションやゴール地点に設けられた「制限時間」との闘いの様子をお伝えします。ここ数年で最も天候に恵まれなかったセンチュリーライド2015、いよいよ完結編です。次回(2015年10月27日公開予定)をお楽しみに。

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自転車:17万円(税別)(FELT ZW7
ビンディング:9500円(税別)(LOOK KEO クラシック2

(写真:東武トップツアーズ提供)
絹代(きぬよ)さん
サイクルライフナビゲーター・健康管理士・自転車活用推進研究会理事・飯田市エコライフコーディネーター
絹代(きぬよ) 1975年横浜市生まれ。東京大学農学部卒業後、国際協力事業団(JICA)勤務を経て、英国大学院で身体運動と栄養について学ぶ。自転車ロードレースの実業団、日本代表の広報スタッフも経験。現在は雑誌、TV、ラジオなどのメディア、各種イベントで、MCや、自転車フィットネスの提案を行うなど、自転車を軸に健康、美容、エコのフィールドで活躍中。また、自転車を使った町おこしや、女性のためのイベント、子ども自転車教室のスタッフも務めるなど、自転車の活用や普及、啓発のためにも積極的に活動している。近著に『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』『自転車と旅しよう!』など(ともに枻出版社)がある。