このツアーの目玉の一つは、観光バスの低層部分を、自転車が乗せられるように改造したサイクリングバス。都内の集合場所まで参加者が自ら自転車を運んできた後、バスに積み込んで目的地まで運んでもらいます。「自分の乗り慣れた自転車を専門スタッフが積んで行ってくれるので、自家用車がない人でも自分の自転車で参加できますよ」と、絹代さんが勧めてくれました。
そう、わが家は車を所有していないので、週末のライドはもっぱら自宅を起点にしたルートばかり…。そのことを少し残念に思っていたので、サイクリングバスを使ったイベントを絹代さんから教えてもらったときには、思わず身を乗り出していました。
自宅から集合(解散)場所まで往復する距離を加えると、イベント当日の総距離は50km、早朝ライドの2.5倍の距離になります。でも、最近は体力がついてきている感じがしていたので、自分がどのくらい今、走れるのかを知るのにいい機会。しかも、「50km完走できたら、自信になりますよ! クロスバイクの卒業イベントにいいかもしれませんね」と、絹代さんから背中を押してもらい、参加を決めました。
なにせ、センチュリーライドを走破するには、車体がより軽く、長距離走るのに向いたロードバイクにいずれ乗り換えることになっています(注:クロスバイクでセンチュリーライドを完走する人は大勢います)。「ホノルルセンチュリーライドにエントリーするなら、残された時間は5カ月しかないので、そろそろロードバイクに乗り換えておいた方がいいですよ」との絹代さんからのアドバイスもあったので、「このイベントで『50km完走』という思い出を作ってクロスバイクを卒業しよう!」と決意し、準備を進めました。
はじめての輪行スタイルに右往左往
さて、当日は朝5時には自宅を後にしました。東京駅近くの集合場所まで、6kmほどの道のりをクロスバイクで移動しなければなりません。途中、曲がる交差点を間違えてしまい、通行人のいないオフィス街で迷子になりながらも、集合時間の6時10分には集合場所にたどり着きました。
そこではすでに10人ほどが、乗車の準備を始めていました。自転車を毛布の上に置いて、何か作業をしています。
「げっ!!!」。一瞬凍りつきました。なんと、前輪と後輪を外しているではありませんか。メカ音痴の私が、これまで「できればやりたくないな…」と避けていた“輪行(りんこう)”と同じスタイルです。
輪行とは、公共交通機関を使用して自転車を運ぶこと。自転車を折りたたんだり、ホイールを外して、専有面積を小さくしてから乗り込むのが基本です。クロスバイクやロードバイクは、車輪とフレームに分解したものを、専用の袋に入れて運びます。
以前、絹代さんにチューブ交換について教えてもらった時(「クロスバイクのチューブ交換、習うより慣れよ!」)に、ホイールの外し方も習ったのに、その日以来、ホイールを外したことはありませんでした。復習を怠った自分を反省。
なんとか記憶をたどり、同行のカメラマンさんに手伝ってもらいながら、前輪と後輪を外し、積み込む形にすることができました。作業の途中、私たちが手間取っていると、このイベントに同行するサイクルサポーターと呼ばれる、自転車のメカニックに詳しい男性が「大丈夫ですか」と声をかけてくれました。
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- 準備ができた人から自転車を積み込む