日経グッデイ

ママチャリライダーがセンチュリーライドを目指してみた

転んで、濡れて、走り切った20km

坂道や雨との戦い…温かいコロッケが救いに

 中西奈美=日経Gooday

クロスバイクの乗り方をチェックしてもらった帰り道、アドバイザーをお願いしているサイクルライフナビゲーターの絹代さんから25kmライドのお誘いが…。「初心者でも完走できるし、完走すると自信になりますよ」との力強い言葉に背中を押され参加を決めましたが、当日、予想外の試練が私を待ち受けていました。

 前々回の記事(「勘違いだらけだったクロスバイクの乗り方・降り方」)で、絹代さんからお誘いを受けたライドは、3連休初日の2014年11月1日、日本旅行主催の「第2回 たびーら・スウィーツ・ライド 湘南-鎌倉」です。女性ライダー向けの企画で、茅ヶ崎や鎌倉などいわゆる湘南エリアを自転車で走るというもの。初心者向けの「ポタリング25㎞コース」(制限時間:6時間、参加費:税込4000円)と、自転車に乗り慣れた人向けの「チャレンジ85㎞コース」(同7.5時間、6000円)の2つが設けられていました。

25kmのポタリングに参加

 私と絹代さんが参加することにしたのは「ポタリング25㎞コース」。江の島をスタートし、海沿いの国道を東に走った後、江ノ電の線路脇を通って極楽寺や長谷寺、鶴岡八幡宮など歴史的建造物を巡って逗子まで行き、スタート地点の江の島に戻ってくるコースです。

 ちなみに、ポタリングとは「ぶらぶらする」という意味の英単語potterから派生した言葉で、自転車に乗って気ままに回ること。イベントでは、決められたスタートとゴールの間で寄り道をして楽しみます。

江の島を出発し、海沿いの道を走りながら、歴史的建造物を巡るルートです。(大会プログラムより)
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 参加を決めてから、(あの時はママチャリでしたが)自宅から会社まで撮影のために、15㎞を死に物狂いで走った記憶がほんの一瞬頭をよぎりました。が、絹代さんの励ましに勇気づけられ、ヤル気満々で準備を進めました。そう、前日に天気予報を見るまでは…。

 「明日の天気は曇り時々雨。昼過ぎから断続的に雨が降るでしょう」

 雨の中で自転車に乗るなんて初めてのことです。それまで膨らんでいたヤル気は一気にしぼんでしまいました。濡れた路面は滑りやすいと聞くし、大丈夫かな…。ただ、イベント自体は雨天決行。前日の夜に絹代さんと相談し、朝から雨でなければ参加することにしました。「予報では降水量は1mm程度と言っていたし、ちょっとくらいの雨なら、濡れても平気だろう!」と自分に言い聞かせる私。いつも着用している、少しの雨ならしのげるジャケットと雨に濡れた時の着替えを用意し、晴天を祈りながら当日の朝を迎えました。

総勢8人で出発

着替えを済ませ、受付でゼッケンなどを受けとりました。どうか雨が降りませんように…!
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 いよいよやってきたイベント当日。早朝から曇り空が広がっていましたが、幸い雨は降っていません。よかった…! 集合場所に到着したら、着替えを済ませて受付でゼッケンとプログラム、地図を受け取ります。「楽しんできてくださいね」と受付の人に言われ、テンションが上がります。

 その後、参加者がコースごとに集まって、交通規則の注意点やトラブル発生時の対処法、女性ならではの「美脚になるための自転車の乗り方のコツ」(講師は絹代さん)などのミーティングを経て、全員で準備体操をしました。

準備体操で肩甲骨回りや脚の筋肉をほぐすと体がポカポカと温かくなってきました。
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 そして、いよいよ出発です! 今回は絹代さんの自転車仲間と合流させていただくことになり、総勢8人のグループで一緒にポタリングに出ることになりました。初心者は私だけなので、「迷惑をかけないようにしなくちゃ」と緊張が高まります。

 今回のイベントでは、自転車のレンタルサービスがありました(レンタル料5000円)。「イベントに出てみたいけど、自転車を運ぶのが大変」と思う人にとって、とても便利なサービスです。スタート前のメカニックサポートが充実していて、自転車の扱いに慣れていない人でも安心して参加できます。

今回のイベントで一緒に走った仲間と。小さなライダーが、応援のためマイ自転車で乗りつけてくれました!
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 スタート地点の江の島から続く大きな橋を渡ると、海沿いの道に出ました。多くの車が行き来する国道で、車と併走して走るのはまだ一人では怖くて絶対にできません。必死で先頭の絹代さんについていきました。イベントに参加する前は、編集部の皆に「海風に当たりながら気持ちよく走ってきます!」などと大見得を切っていましたが、実際のところ海なんか見る余裕は全然ありませんでした。

初めての坂道で悶絶…

 20分ほど走り、左に曲がると標高差が50mほどある、まっすぐな坂道がそびえ立っていました(少なくとも私にはそう見えました)。ギアを軽くして坂道を登り始めましたが、600mも続く坂道は甘いものではありません。中腹まで上るとふくらはぎや太ももが疲れてしまい、ペダルがろくに踏み込めない状態に。それでも走り続けようと、自転車に乗ったままバランスを保つため、ハンドルを右に左に切っているうちに…

坂道の途中で、足の筋力が限界に達し、ほぼ止まっている状態です。この後に転倒してしまいました。
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ドッシーン!

転んで地面に膝を着いた時にタイツが破れてしまいました。新調したばかりだったのに…とほほほ。
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 痛い!! なんと、自転車ごと倒れてしまったのです。借りた自転車をかばおうと地面に着いた膝には大きな擦り傷ができ、血がにじんでいましたが、ここはグッと我慢。すぐに自転車を起こしてまたぐも、“坂道発進”は大失敗。ペダルを踏み込んでも前に進まないどころか、またバランスを崩してしまいました。おっとっとっと…。

 倒れた音に驚いた絹代さんが戻ってきて手を貸してくれました。「坂道は無理せず、降りて押して行った方が安全ですよ!」とアドバイスをもらい、残りの坂道は、自転車を降りて上りました。頂上の平坦な道から気を取り直して、再度乗車です!

 
笑っていますが、擦りむいた右膝が痛い…
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絹代さんはラクラク坂道を登っていきます。
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身をもって知った「雨対策は怠るべからず」

 残念なことに、天気予報は的中してしまいました。江の島を出発してから途中、極楽寺やドラマ「続・最後から二番目の恋」のロケが行われていたスポットなどを回って、1時間半ほど経ったころ、ポツポツと雨が降り出しました。

長谷寺の駐輪場。雨が降ってきたので、自転車のサドルやヘルメットが濡れてしまっています。
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長谷寺の前で記念写真。雨が降ってきてしまったので、参拝は断念しました。
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 雨の心配をしながらも、前日の準備の際、意外にかさばるので登山用のレインウエアを家に置いてきてしまったことを激しく後悔しますが、後の祭り。自転車は雨をよけるものが一切ないので、全身で雨を受けるしかありません。

 少しだけ防水機能があるジャケットを着ていましたが、30分ほど走っていると雨が染み込んできました。しかも、ヘルメットの中で髪の毛も濡れ、指先のない手袋では手も冷たい。風を受けると全身が冷え切ってしまい、エイドステーション(コースの途中で飲み物や軽食を配布する施設)では温かいコロッケに思わず手が伸びました。

 身をもって雨対策の大切さを思い知った私。11月上旬でそれほど寒くなかったのが幸いして、体調を崩すことはありませんでしたが、一緒に走った仲間を心配させてしまいました。しかも、ずぶ濡れで走るのは格好悪い。

大勢で走る心強さ

 悪戦苦闘する私にお天道様が同情したのか(?)、1時間ほど昼食を取りながら休憩すると、雨が上がりました。また降られないうちにゴールにたどり着こうと、当初のルートを短縮して(ポタリングでは、走る人の状況に合わせてルートを短くすることも可能)ゴールまでの道を8人、縦列で走り始めました。坂道や雨といったピンチを切り抜けた安心感からか、雨が上がった帰りの平坦な道は余裕を持って走ることができました。

「雨が上がっているうちに、ゴールを目指そう!」と8人が縦列で走ります。
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ゴール間近の橋の上。海を見る余裕が出てきました。
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 トータルで20kmのポタリング、無事終了です。出発から4時間が経っていました。

 ゴール地点で待っていたのは、「完走証」。20㎞なんて、自転車に乗る人なら大した距離ではないかもしれませんが、初めてスポーツバイクで走り切ったという達成感は何ともいえず嬉しかったです。

「ポタリング25kmコース」の完走証。雨のため途中、ショートカットしてしまい、実際には20㎞しか走っていませんが、初めて手にした完走証にやり遂げた感が募ります。
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 当日、8人で走ることになり、初心者であるが故のプレッシャーが強かったのですが、「ペースは速すぎない?大丈夫?」「ちょっと慣れてきたみたいだね」などと声をかけてもらったおかげで、肩の力を抜いて走ることができました。また、これから自分も挑戦するであろう、ロードバイクに乗っている仲間の姿を目の当たりにし、チャレンジ意欲が燃えてきました。

 さて、イベントの翌日に筋肉痛になるかと思いきや…生活に支障が出るようなトラブルは皆無でした。自転車を押して坂道を上ったからでしょうか。擦りむいた右膝はしばらく痛みましたが(涙)

 今回のポタリングで、坂道の攻略法や雨の日対策など、次の課題が見えてきました。今後、絹代さんにこれらについて指導してもらうつもりです。

ライドの目玉はエイドステーションのスイーツたち!
 

 今回、参加したのは「スウィーツ・ライド」ということもあり、エイドステーションでは地元・神奈川のお菓子や軽食が提供されていました。新鮮卵を使ったプリンやワッフル、温かさが染みた牛肉コロッケのほか、江の島名物シラスを使ったカレーパンやアジサイをかたどったサブレ…など、筋肉を使ったカラダが欲しがるものばかり。

 「自転車で走ったんだし、ちょっとだけならご褒美もいいよね…」と言い訳をしながら、気がつけば全制覇。それでも足らず、サブレを1枚、帰り道のお供にさせてもらいました。

エイドステーションでは「スウィーツ・ライド」の目玉、甘味や軽食が提供されていました。雨宿りも兼ね、多くのライダーが身を寄せています。
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雨で体が冷えたライダーから人気だったのは、温かい牛肉コロッケ。
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25kmのエイドステーションでは、約10種の食べ物・飲み物が並んでいました。
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 エイドステーションではありませんでしたが、行く道の途中、創業300年の老舗和菓子屋「力餅屋」で求肥力餅が振る舞われました。その後の走る力になったことは言うまでもありません!

創業300年の老舗和菓子屋「力餅屋」
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こしあんがたっぷり乗った求肥餅に、取材のことを忘れ、絹代さんと大はしゃぎ。
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 取材協力:日本旅行

 自転車(絹代さん)6万円(税別)(Rail 700:ホダカ)、(記者)4万8000円(税別)(Rail 700A):ホダカ)

絹代(きぬよ)さん
サイクルライフナビゲーター
絹代(きぬよ)さん 1975年生まれ。東京大学農学部出身。国際協力事業団(JICA)を経て、タレントとして活躍。講演会やスポーツイベントのMC、自転車ロードレースの広報活動もこなす健康管理士。1児の母でもある。2004年にクロスバイクでホノルルセンチュリーライド(160km)を完走。2007年からロードバイクに乗り始める。『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』『自転車と旅しよう』『自転車のフィッティングがわかる本』(いずれも枻出版)、『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)など自転車に関する書籍を多数手掛ける。 (写真:横川 誠)