社会人になって以降、プールなど滅多に行かない中年記者。しかし、ぎくしゃくした泳ぎを小学生の息子にばかにされ、一念発起。大学最強水泳部の監督の指導を仰ぐことに。心許ないクロールしかできないわが身も省みず、流ちょうな4泳法メドレーを1年で完成させることが目標だ。
今回のレッスンではいよいよクロールの腕の動き(ストローク)について教わることになった。クロールをマスターするために、これまで呼吸、姿勢、アップキックなど、地道な練習を積み重ねてきた。中央大学水泳部の高橋雄介監督(2ページのプロフィール欄を参照)によると、クロールで推進力を生む7割はストロークにあるとのことなので、いよいよ鍵となるテクニックを学んでいく訳である。ところが、最初に教えてくれたのは、前回マスターした呼吸法からだった…。
バタ足で泳いだときには顔を真正面に上げる「前呼吸」だったが、クロールでは横向きに上げる「横呼吸」に変える必要がある。まずは「左右のどちら側が呼吸をしやすいですか」と高橋監督。自分は右利きなので、当然右側に顔を上げて呼吸するほうが違和感なくできると思っていたが、「利き腕の逆側のほうが呼吸をしやすい人もいます」(高橋監督)という。自分の好みで呼吸すればよいそうだ。
ただし、注意しなければならないのは、横呼吸の際の顔の方向だ。まずは、ビート板の上に左手を乗せた状態で、横呼吸を練習した。自分はこれまで真横を向いて呼吸していたが、「正解は斜め後ろの方向なんです」と高橋監督(写真1)。その方がフラット姿勢を保ちやすいという。逆に水を吸い込むのを恐れるあまり、横を向いて顔を上げてしまうのは最悪な横呼吸だと高橋監督は指摘する(写真2)。
「顎が前方に上がり、胸を張ってしまうと、体が立つような姿勢になるため、下半身が沈んでしまいます。顎を引いたまま斜め後ろを見ること。腹圧をしっかり入れるのも忘れないでください」(高橋監督)。これが優雅で速いクロールをマスターするための大切なポイントになる。実際に斜め後ろを見て呼吸してみると、確かにお腹に力を入れやすい。しかし、下の写真で比べて見ると分かるように、顔を水面から上げない分だけ、素早く息継ぎをする必要がありそうだと感じた。
腕は大きな円を描いて回す
次に、ストロークを極めるには、手のひらや腕の動かし方など多くの大切なテクニックをマスターする必要があるが、大まかに動かし方を把握するため、高橋監督にプールサイドで模範演技を行ってもらった(写真3)。
「細かいテクニックについては今後のレッスンで伝えていきますが、初心者はまず腕を真っすぐ伸ばした状態で、大きな円を描くように腕を回しながら水をかくことを意識してください。肩甲骨と手を大きく回せば、横呼吸するためのスペースが広くなるので、呼吸が楽になります」と高橋監督が教えてくれた。
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- 息を吐いた後に手を前に戻す順番が正解!