社会人になって以降、プールなど滅多に行かない中年記者。しかし、ぎくしゃくした泳ぎを小学生の息子にばかにされ、一念発起。大学最強水泳部の監督の指導を仰ぐことに。心許ないクロールしかできないわが身も省みず、流ちょうな4泳法メドレーを1年で完成させることが目標だ。
今回のレッスンはビート板なしで、フラットなバタ足を完成させるのが課題だ。これまでに学んだ「パッ」「ハー」「ウン」の呼吸、視線と腹圧を意識した姿勢、そしてアップキックをすべて取り入れる。中央大学水泳部の高橋雄介監督(3ページのプロフィール覧を参照)は、「ビート板やプルブイなどの補助具に頼らずに、呼吸とキックがきちんとできれば、もうクロールは泳げたも同然だよ」と励ましてくれた。
これまでバタ足できれいに泳ぐことなど考えたこともなかったが、ビート板に頼ることなく呼吸、姿勢、アップキックをすべてそつなく行わなければならないので、少々プレッシャーを感じた。「初めから完璧にやるのは大変だから、まずはプルブイを股に挟んでやってみましょう」と、高橋監督は相変わらず優しい。
最初は無我夢中で泳いでいたが、まずはアップキックに集中し、続いて姿勢を立て直した。そして、最後に呼吸法を整えようと試したが、「ハー」で息を吸う時間がほとんどない。息を十分に吸えないから足が沈み、ますます呼吸が難しくなる悪循環に陥っていった。
再び高橋先生が助け舟を出してくれた。「呼吸する時間を稼ぐために『スカーリング』を覚えましょう」。
スカーリングとは、平泳ぎのように左右へ手を軽くかく動作のことだ。これを加えると、呼吸のために顔を上げた状態で浮き続けることができる。
実際にやってみたが、初めて聞いたテクニックだけに、慣れが必要だった。最初のうちは、両手を左右にかいた後で、顔を水面上に上げようとしてプールの底に向けてかき、また両手を元に戻すといった動きになってしまう。プールから出て自分がスカーリングを行っている写真を見直すと、まるで犬かきのような情けない格好になってしまっていた。
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- 体が沈んでも息を止めれば浮いてくる!