社会人になって以降、プールなど滅多に行かない中年記者。しかし、ぎくしゃくした泳ぎを小学生の息子にばかにされ、一念発起。大学最強水泳部の監督の指導を仰ぐことに。心許ないクロールしかできないわが身も省みず、流ちょうな4泳法メドレーを1年で完成させることが目標だ。
いよいよ背泳ぎで25mを泳ぐ仕上げのレッスンに突入する。前回(「背泳ぎのストロークの美しさは指先と肘の使い方で決まる」)は、プールサイドで腕のストロークにおける指先、手首、腕のフォームや、腕を垂直に上げたタイミングで呼吸することを中央大学水泳部の高橋監督に教わり、マスターした。今回は、これらをプールの中で実践して、いよいよ美しい背泳ぎを完成させるのだ。果たして水中でも落ち着いてできるものだろうか…。
水中で腕と呼吸のタイミングを合わせる
まずは水中で、腕のストロークと呼吸のタイミングを合わせることから始まった。「息を吐くと、浮袋の役割を果たす肺の中の空気が減るので、ただでさえ体は沈みやすくなっています。また、背泳ぎでは腕を水から出した後で真っ直ぐ伸ばしたまま半円を描いて入水するので、腕が真上を向いたタイミングでは腕の重さ(重力)が体にかかることになります。この腕が真上を向いたタイミングで息を吐くと、さらに体が沈んでしまうのです」(高橋監督)。
腕のストロークと呼吸のタイミング合わせがきちんとできていないと、下半身が沈んでフラットな姿勢を保てなくなってしまうために、先のレッスンへ進めなくなる。ストロークの腕を水上で上げる前(体に腕を沿わせている状態のとき)に「パッ」と息を吐き、腕を上げるタイミングで「ハー」と吸い込んで、指先が進行方向を向いたら「ウン」と息を止めるタイミングの取り方が理想となるのだ。
最初は高橋監督に水中で体を支えてもらいながら、呼吸のタイミングの取り方に専念して練習した。「ストロークの腕の形はまだそれほど気にしなくてもいいですよ」と高橋監督。水の上を回す腕の動きと呼吸のタイミングを合わせることに加えて、片方の腕が入水するときにもう一方の腕が水から出る(リリース)ように両腕の動きのタイミングを合わせてみた。すると、「入水した腕をスーと伸ばして(ストレッチングタイム)、手のひらで水をつかむキャッチに入るところで、片方の腕をリリースすると、泳ぎがきれいになりますよ」(高橋監督)とアドバイスを受けた。回数を重ねて慣れてきたところで、1人で泳ぎながら、このタイミングの取り方を体に覚えこませた。
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- 小指から静かに入水させて水面近くをかく