日経グッデイ

月イチゴルファーが2年でシングルを目指す!!

「ゴン」が再発! リベンジラウンドで124の大叩き

第6回 練習場での“ごまかし”が本番で露呈

 池田 悟=日経Gooday

鬼編集長の業務命令で、「2年でシングルを目指す」という途方もない目標のゴルフ企画を担当することになった40代記者。フィッティングで自分のスイングにマッチしたクラブを手に入れ、リターンマッチとばかりに意気揚々と西宮高原ゴルフ倶楽部に乗り込んだ。今年、13年半ぶりにゴルフを再開した後、およそ半年の練習の成果と2014年の「打ち納め」を兼ねたラウンドの結果はいかに…。

 フィッティングでクラブのセッティングは完璧(詳しくは、前回「スイングが速くても「硬い」が向くとは限らない!」をご覧ください)。山口信吾先生からの課題のエクササイズも日々のノルマとして歯を食いしばってやってきた。週1回以上は練習場に通った。おかげで自宅近くの練習場ではフロントのスタッフにも顔が利く!? ようになり、 顔なじみの“練友”もできてあいさつや情報を交わすようにもなった。60ヤード以内のショットであれば、目をつぶってアプローチウェッジを振っても、グリーンにボールを乗せられるほど自信もついた。

練習場では思うように練習できない「傾斜ショット」の実践練習。スイングと体重移動を山口信吾先生にチェックしてもらう。
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 雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、創刊後ノ激務ニモ負ケズ、私ハシングルニナリタイ…とばかりに、生活はゴルフ漬けに一変してしまったのである。

 およそ半年の練習の成果と2014年の“打ち納め”を兼ねて、西宮高原ゴルフ倶楽部のティーグラウンドに再び降り立った。初心者には難しい丘陵コースだが、無我夢中でラウンドした初回と比べれば“土地勘”もできている。「110の王」の称号なんてすぐに返上できると密かに思いながら、「まさか今日は100を切っちゃったりして…」と想像(妄想)を巡らせてはスタート前から顔がニヤついていた。いわゆる「根拠のない自信」である。


OBや3パットで埋め尽くされた当日のスコアカード。○印をつけたホールはダフリがあったことを示す。パーオン(基準打数から2打少なくグリーンに乗せること)しているホールもあっただけに、もっとパーをとりたかった。
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 暮れも押し迫った今年最後の回で、読者のみなさん、 特に初心者ゴルファーのみなさんに勇気を与える結果報告ができることをとても意気に感じている。


 スコアは堂々の、ジャジャ~~~~~ン、「124」!


 ゴルフ場でボーリングをしていた訳では決してなく、ましてや朝の血圧測定を報告しているつもりもない。すわ、初回にラウンドしたときのスコアよりも悪かったのだ。


 こんな「叩いた話」は、ゴルファー同士の間に見えない境界線を引いてしまうのだろうか。「年末にはラウンドしよう」と熱心に誘ってくれた“ゴル友(平均スコア80台)”からのメールはいつしか途絶え、練習場で声を交わしていた“練友(推定スコア90台)”は記者の“定位置”である1階の打席には姿を見せなくなった。

 ゴルフはつくづく「孤独との闘い」なのである。

誤った練習方法がコースでそのまま出る

 当日のラウンドを振り返ろう。その様子を何かに言い表すとするならば、「京都の住所」を綴るかの如しだった。

 「上ル、下ル、右入ル、左入ル」

この日は左足の上がり、下がりの「傾斜ショット」を強いられる場面がほとんどだった。スイングするときの構えに加えて、ボールを「右足寄り」「左足寄り」のどちらに置くかといった細部にまで気を配る必要があると痛感した。
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 左足上がりになった打ち上げのライでは、体が開いてボールは右に飛び出す。つま先下がりのライでクラブを振れば、ボールを引っ掛けて左に曲げる。加えて、ダフリ(ボールの手前の芝土を叩く)も多かった。脳内にある運動プログラムが誤作動しているのか、はたまた「神の見えざる手」が上達を阻んでいるのか。高機能を備えた自分にマッチしたクラブを振っているのに、毎ホールきっちり同じミスを繰り返してしまうのである…。もちろん、クラブに罪はない。

 前半を終えた時点で、スコアはすでに「63」。結果的に100を切るどころか、110を切ることすら適わなかった。

記者 「練習場でやっていることが、コースではできませんでした。アイアンはダフリも多かったです」

山口先生 「練習場ではミスショットをしていることに気が付きにくいのが原因ですね。マットの上から打つために、多少ダフっていてもクラブがマット上を滑ってボールに当たり距離も出ます。そのためダフっていることに気が付かないのです。練習場ではごまかしが利いて好ショットだと感じるのですが、コースでは芝土をザックリやって頭を抱えることになります。アイアンの練習で『カツッ』という短く乾いた音がすれば、フェースがボールに正しく当たった後でマットを叩けている。すなわち、ダウンブロー(※1)に打てています。ですが、打ったときに『ゴン』『ボン』『ドン』といった音がするのはダフっている証拠です」

記者 「言われてみれば、よくドンという音がしています。ダフリ癖を改善するためのいい練習方法はあるのでしょうか」

山口先生 「右利きの場合、練習場のマットの一番右端にボールを置いて打つ方法(※2)や、ボールのすぐ右側にテープなどで目印をつけて、それを動かさないように打つ方法を取り入れるといいでしょう。いずれにしても、練習場でもできていないことはコースでもできないと肝に命ずることです」

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写真左、山口先生からアドバイスを受ける前までのティーショットの様子。インパクトの後に両腕が詰まり、両足も棒立ちに近いフォームになっている。写真右、左足下がりのライから4Wを打つ際、「もっと腰を入れて、股関節から上体を倒す。左足1本を軸にするようにスイングする」とのコツを伝授される。

記者 「はい。重心移動も意識しましたが、スイングごとにまちまちだし、スムーズではありません」

山口先生 「そうですね。上体が突っ立ったまま、お尻を落とした姿勢でスイングする癖がついているようです。これだと腰を回しにくく、インパクト後の手元がとても窮屈に見える。さらに、体の軸もぶれやすい。お尻を後ろに突き出すぐらい上体を股関節から前傾させて、重心を少し下げて腰を入れ、両足の親指の下にある拇指球(ぼしきゅう)に重心を乗せて構えることです。腰と骨盤をしっかり回せるようになり、いわゆる懐の深いスイングができるようになります。重心移動をしながら股関節を使って骨盤を右へ左へと回す『 腰切り体操』にもっと励んでください」

 ラウンド中のことだった。左足下がりのライで4Wを打つときに、「左足を軸にして体を支えながら、腰をしっかり入れて打ってごらんなさい」との助言を山口先生から受け、その通りにしたら目の覚めるスーパーショットが飛び出した。軸と腰を入れることを意識してスイングしたことで、腰のキレが高まり、それに連動して体重移動もスムーズにできた成果だったわけだ。


※1 クラブを振った際、最下点になる少し手前でボールを打つこと。ボールに適度なスピンがかかり、アイアンで打つときの理想とされている。 ※2 練習場によっては禁止されている場合があるので注意が必要。

コースでの課題は練習場と自宅でほとんど改善できる

 こうして山口先生にラウンドを見てもらった結果、来年に向けて次のような課題が洗い出された。

練習で取り組むべき課題
腰を入れたスイングフォームに見直す
お尻を後ろに突き出して股関節から上体を曲げて前傾し、少し重心を下げて腰を入れて構える。スイングでは「コック、リリース、リコック」を忘れないこと。
目的 ドライバーやロングアイアンなどの長いクラブから、サンドウェッジなどの短いクラブまで、体重移動によって股関節を使い、骨盤を回してスイングできるようにする。
傾斜ショットの基本習得
左足上がりのときには右足に、左足下がりのときは左足に体重を乗せ、傾斜に平行に構えて軸をつくり、軸足1本のつもりでスイングする。つま先上がりでは、傾斜に応じてグリップを短く持つとともに、ボールを右足寄りに置いて打つ。つま先下がりのときは重心を思い切って下げて両足の拇指球に体重を乗せて構える。傾斜地であっても腰を入れて構え、大振りをしないこと。
目的 どんなライでも体の軸を安定させて、ボールをまっすぐ飛ばす技術を身に付ける。
ゲームメイクに関する課題
ショットの前の素振りは、絶対に「無駄振り」はしないこと
目的 素振りは本ショットのシミュレーション。今からどういう傾斜でボールを打つのか、体に注意するべきことを言い聞かせるように、ゆっくりと素振りする。
パー3のホールのティーショットに命を賭けよ
目的 スパットを使った(ボールを打つ方向に目印を置く)練習で方向性を高める。
アプローチショットで15~30ヤードを自在に打ち分ける
目的 ピッチショット(ボールを上げる技術)、チップショット(ボールを転がす技術)を身に付け、ピンに寄せる力を高める。
パターは「上り」「下り」を意識して自宅で練習する
目的 パターマットを使い、「早い方向を下り」「遅い方向を上り」と想定しながら、交互に打つ練習で距離感覚を高める。

 ここに挙げられた課題は、次回から詳しく紹介していくが、初心者や伸び悩んでいるゴルファーにも共通しているのではないだろうか。しかも、その解決方法は「どれも練習場や自宅でも取り組める内容ばかり」(山口先生)である。恥をかくのを承知で先に掲載したスコアカードをご覧頂ければ、先生からの課題はシングルを目指すどころか、100を切るまでのマストにもなる。

 OBを4回防いでいれば「8打」減り

 ダフリを11回防げば「11打」縮められる可能性があり

 残り15~30ヤードをワンピンに寄せれば「5打」減る機会を得られ

 さらに、グリーン上で3パットを9回防げば「9打」は縮まる

 机上の空論だがこれで33打、つまり「124」だったスコアは「91」になる。とはいえ、パー72のコースでぎりぎりシングルに相当する81で回るには、単純計算で18ホールの半分はパーで上がり、残り半分はボギーに抑えなければならない。これまでのゴルフ人生で「パー」を連続で取った記憶などない記者にとって、シングルプレーヤーはもはや「神」に近い存在である。

腰がしっかり入り、股関節からきれいにスイング動作が始まる山口先生のドライバーでのティーショット。どの番手のクラブを使っても、フォームは同じだ。
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山口先生 「シングルプレーヤーだからといって、いつもナイスショトを打ち続けられるわけではありません。ティーショットが曲がる日もあれば、バンカーや谷、きつい傾斜からリカバリーショットを強いられる日もたくさんあります。ダブルボギーだって出ます。ドライバーの調子が全くダメだった今日だって、何とか知恵と工夫を凝らしてスコアを81でまとめた。ゴルフは山あり谷ありだからこそ、なんだか人生みたいでおもしろいのです。定規で真っすぐ線を引いたようなボールを打つゴルフもすごいのですが、私はどうも好みませんね」

 我が人生を振りかえれば、目の前にある絶壁の「山」を登り、断崖の「谷」に落ちることしばしばだ。だが往生際が悪い性質だし、「悪運」も強いほうである。2014年の打ち納めのスコア「124」を再スタートに、この先1年半でシングルまで上達したら…。もしも「ゴルフ文学界」なるものがあれば、ノンフィクション大賞はいただいたも同然だ。もう一度、これまで書き溜めたゴルフノートを見返して、すぐに練習の見直しから始めることにしよう。

「集中的に週3日ぐらい練習してください」

山口先生 「ところで、今は週にどれぐらい練習に通っているのでしたっけ?」

記者 「えっ、はい。週1日は必ず確保して、通えるときは土日の2日練習しています」

山口先生 「そうですか。感覚を早くつかんで一気に開眼できるように、これからは週2日、できれば集中的に週3日ぐらい練習してみてください」

 …師匠の言うことは絶対である。こうして終電の時間とせめぎ合いながらやっと原稿を書き終えても、翌朝7時から練習場でクラブを振る1日が平日にも加わることになった。



 冬ノ寒サニモ負ケズ、忘年会ヲ断リ懐ノ寒サヲ凌ギ、ソレデモ私ハシングルニナリタイ…。



山口信吾先生が薦める3分ドリルで手首の「コック」を使ったスイングを習得!

 これまで紹介した「コック、リリース、リコック」の習得について、「どうもコツがつかみにくい」との読者からの声に応えて、もう1つの簡単なドリルを紹介しよう。その前に、読者のみなさんは、ゴルフを始めたときや、スイングに悩んでいるときに、次のような疑問を持ったことはないだろうか?



 「右手と左手の使い方にはどんな役割と違いがあるのか?」「どうして、左手だけグローブをするのか?」



 こうした素朴な疑問に、山口先生は「ヒントは『テコの原理』にあります。右利きの場合、右手が力点、左手が支点となり、テコの原理を使ってクラブのヘッドを大きく速く動かしています」と答えてくれた。


 「バックスイングやフォロースルーでは、左手でグリップの端を押し(押し手)ながら、右手はクラブを体側に引く(引き手)。この動きが手首の『コック』『リコック』をつくります。『リリース』では、ダウンスイングの最終段階(インパクトに近いところ)で右手を緩めてヘッドを落とせばよいのです。このときヘッドが落ちる反動で手元が持ち上がるため、左手でグリップをしっかり押さえます。この左手での抑えが不十分だとトップします」(山口先生)。自分ではテコの原理を使ってクラブを振っているとの自覚はないかもしれないが、右利きのどんなゴルファーも、右手を力点に、左手を支点にしたテコの原理を使っているわけだ。


 「両手を離してクラブを握り(スプリットハンド)、ゆっくりスイングすれば、右手と左手の役割分担を理解できます。右手と左手の役割を正しく理解することが重要です。頭で理解したことと体の動きの同化は、反復練習でしか身に付けられません。ちなみに左手だけにグローブをするのは、クラブが支点となる左手の中でズレるのを防ぐためです。支点のわずかなズレは、テコの原理によって増幅されて『作用点』であるヘッドが大きくブレるのです」(山口先生)


 ここでは右手と左手を離してクラブを握り、「押す」「引く」を意識しながら、「コック、リリース、リコック」(写真)を繰り返してみよう。手首を「タテ」にスムーズに動かせるようになってきたら、右手を左手に少し近づけて、実際にスイングするときの握り方に変えていこう。

テコの原理で「コック」する
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左手と右手はこう動かす
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両足を肩幅に開いて立ち、お尻を後ろに引き、股関節から上半身を倒して構える。右手と左手を離してグリップを握る(スプリットハンド)。次に、左手を下に向けて押し、右手を上に引いて手首をコックさせる。肩の力を抜いて、テコの原理を使いながらクラブのヘッドを上に上げよう。
テコの原理で「リリース」する
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左手と右手はこう動かす
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クラブのヘッドがトップにきたら、今度は左手でグリップを上に向けて引き、同時に「支点」にしていた右手の力をゆるめて、手首をリリースする。
テコの原理で「リコック」する
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左手と右手はこう動かす
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クラブが地面についたら、再び、左手でグリップを下に押し、同時に右手は引き上げながら手首を「リコック」させる。左手と右手が、それぞれ「押し」「引き」ができているかを感じながらゆっくりと一連の流れを続けてみよう。慣れてきたら、スプリットハンドのままスイングする「ヨコ」の動きを加えると、「コック、リリース、リコック」のコツがよりつかみやくすなる。

(次回は、「練習場をコースに変える目からウロコの練習法」をご紹介する予定です。ぜひ、ご覧ください)

(写真:水野浩志/竹井俊晴・ドリル)

山口信吾(やまぐち しんご)さん
ゴルフ作家
山口信吾(やまぐち しんご)さん 1943年生まれ。九州大学工学部を卒業後、同大学院を修了。69年に竹中工務店に入社。72年にハーバード大学大学院を修了後、シカゴの大手設計事務所に勤務。75年に帰国し、竹中工務店に復帰。43歳からゴルフを始め、還暦を前に一念発起し、独自の練習法によって2年でシングルを達成した。ベストハンデキャップ8。新聞および雑誌に寄稿多数、ゴルフの著作は14冊にものぼる。
 
撮影協力
西宮高原ゴルフ倶楽部
ラウンド衣装/ポロシャツ9180円(ブルー)+インナー7560円(ホワイト)、ポロシャツ8640円(グレー)+インナー8100円(ホワイト)、パンツ(ホワイト・ブラック)1万800円、ベルト8100円(ホワイト、ブラック)、ウィンドジャケット1万4040円(ホワイト)、1万6200円(ダークグリーン)、以上すべてアンダーアーマー