そんなアドバイスを聞きながら、その日、記者が経験したフィッティングの詳細と感動を記事にできないかとの打診を、米山さんにそっと差し向けてみた。
米山さん 「日経Gooday…、シングルを目指す企画? 恐らく、大丈夫だと思いますが、上司に相談してみますね」
「ぜひヤマハのクラブでシングルを実現させてください」
フィッティングを終えてから1週間後、取材先からグッデイ編集部に戻ると、記者宛に大きなダンボールが6箱届いていた。てっきり「引越しをせよ」を意味する、鬼編集長からの突然の異動命令かと思った…が、目を何度こすって見直しても、そのダンボールには「YAMAHA」の文字が刻まれている。
…詳しい経緯は割愛するが、ヤマハのご厚意で「モニター」としてクラブセットを貸与してもらうことになったのである。同社のゴルフブランドは、主に上級者層に認知、愛用されることが多かったようで、2015年モデルからはゴルフにアクティブに取り組みたい、もっと上達したいと思っている初級者層にまでPR対象を広げて、ブランド力をさらに高めたいとの理由からだった。
「どうぞこのクラブで練習に励まれ、ぜひ当社のクラブでシングルを実現させてください」
2年後にシングルになれなかったら「残念ながら罰金を徴収します」とは書かれていないし、「定期的に試験を受けてもらいます」とも綴られていない。内心「ラッキー」とは思いながらも、有名メーカーのPRを担えるほど力があるのか…。だって、ヤマハといえば、2012年の日本男子プロゴルフツアーで賞金王に輝いた藤田寛之プロも使用しているではないか!!!
いやいや、これは大変な重責を担うことになったぞ…。その夜、一連の経緯をわが師匠の山口信吾先生に伝えると、静かにこう語ってくれた。
山口先生 「ヤマハ、そうですか! クラブ作りに妥協しないメーカーですね。これはきっと世界に通用するピアノを作り続けている楽器メーカーならではの哲学が、クラブにも反映されているのだと思います」
これまた大変なプレッシャーである。
山口先生 「それと、クラブはすべて重さを量り、折れ線グラフを作って可視化するといいですよ。ドライバーなどのウッド系、ユーティリティーやアイアンなど、クラブのタイプに応じて、グラフの線がなだらになるほどいいセッティングです。上達してからもクラブのバランスはとても気を遣うポイントです」
そこで、クラブを計量してグラフにしたもの(上図)を先生に診てもらうと、「文句なし! さすがにヤマハのクラブは本格的です」と、無事に合格を頂いた。早速、新しいクラブを携えてコースを回り、また先生にチェックをしてもらう運びとなった。
心の底では密かに、
「いゃ~、見違えるほど上達したじゃないですか。これはたいたしもんだ!」
と、目を細める山口先生の顔に思いを馳せたまではよかったのだが…。
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