ドライバーのOBがなくなった要因は「ルーティン」の見直し
しかし最近、プライベートでのラウンドにおいては、ドライバーでOBを打つことはなくなった。緊張を強いられるような場面でも、平常心でドライバーを振れるようになっている。その要因は、次に挙げる3つがかみ合ってきたからではないかと自己分析している。
まずは、狙った場所に絶対打つという「意志」を持つこと。次に、目標物を見つけてボールまでの飛球線を引く際に目印にする「スパット」(参照記事:「ボウリングの基本技術でアドレスを見直す」)を設定すること。これら2つの基本については、この連載で指導を仰いでいるゴルフ作家の山口信吾先生からも常々「絶対、あそこに打つという強い意志を持ちましょう」「スパットに集中してください」との助言を受けてきた。しかし、意識して取り組んではいたものの、それだけではショットが今一つ安定しなかったという経緯がある。
そして最後にたどり着いたのが、「ルーティン」をしっかり見直すことだった。自分のスイングのリズムや感覚に合うように、素振りの目的や回数、ボールの前で両足を揃えて構えたときに、左と右のどちらの足から開いてスタンスを決めるか…。そんな細かいことまで意識しながら、自分にしっくりくるルーティンを探し続けた。
上級者は必ずボールの後ろに立ってからルーティンを始めている
ラグビーのワールドカップにおいて、日本代表の五郎丸歩選手がプレースキックの前に必ず行って話題になったあの「謎の儀式」も、ルーティンである。五郎丸選手はキックするまでに、「右の手のひらを体の中心に向けて揺らす」「ポーズを取る」…といったいくつかの動作からなるルーティンを取り入れている。こうしてキック成功率80%以上という、ラグビー界では驚異の数字を保ち続けている。
多くのゴルファーたちも同様に、様々なルーティンを意識の有り無しにかかわらずスイングに入るまでに行っている。ボールの前で構えてからクラブを何回かワッグル(体幹や肩、腕、手首などを動かしながらヘッドを軽く動かすこと)したり、クラブヘッドを剣先のように目標物に向けてから構えに入ったり。その方法はどれも個性的だが、上級者ゴルファーたちを観察して気づくことは、「必ずボールの後ろに立ち、狙う場所を決めることからルーティンを始めている」ことだ。
「スポーツにおけるルーティンは、心と体を平静に整えることを目的にしています。ゴルフにおいては、どんな状況下にあっても『不安』や『邪念』といったことを振り払うことにもつながります。言うなれば、いつも通りの自分になるための儀式です」(山口先生)
