鬼編集長の業務命令で、「2年でシングルを目指す」という途方もない目標のゴルフ企画を担当することになった40代記者。いよいよ山口信吾先生の「入門試験」を受けることになったが、思わぬところに体の弱点が露呈することに。
先生との約束の日、一路、ご自宅のある大阪へと向かった(これまでの経緯は、「13年ぶりにクラブを手にした40代オヤジでもシングルになれる!?」をご参照ください)。
「暑い中、よくお越しくださいました」との言葉とともに、先生は優しい笑みで記者を迎えてくれた。その容姿は身長170cm、体重は50㎏を少し超えるほど。かなり細身であることに改めて驚く。プロフィールにもあるように、先生がゴルフを始めたのはなんと43歳になってからだ。

山口先生がゴルフを始めたきっかけは記者と同じく、仕事上での「業務命令」だったという。還暦を見据えて一念発起し、独自に考案した練習方法を駆使して、わずか2年でシングルまで上りつめた。中年期からゴルフを始めた先生の貴重な経験こそが、この企画と記者の現状に合致すると考えたわけだ。
先生もゴルフを始めて十数年もの間、ほぼ我流同然で続けていたという。世の中の標準的なゴルファーたち!? と同様に、練習法に迷い、ゴルフ理論を次々と試し、クラブを何本も買い換え、練習では無心で何百球もボールを打ち続け、コースに出ては一喜一憂する。HC(ハンディキャップ)18(*1) の腕前までは到達したが、そこから成長しないジレンマを抱えていたそうだ。
「私のような非力な人でも思い通りにボールが打てる」
そんなある日、ラウンド中に打った目が覚めるショットに、先生はひらめいたという。「体の仕組みを最大限に生かせば、私のような非力な人でも思い通りにボールが打てる。ゴルフの基礎中の基礎に当たる、体の使い方を徹底的に見直したのです」(山口先生)。

上達のカギを握るのが、「股関節、手首の二つの関節と骨盤の動き」だと山口先生は言う。関節を動かせる範囲のことを「可動域」というが、股関節と骨盤をしなやかに、そして手首を滑らかに動かせる範囲を広げることが上達には不可欠だと力説する。可動域の広さとは、「柔軟性の高さ」とも言い換えられる。なるほど、先生宅を訪れる前に「真向法体操」の宿題が課せられた理由がようやく分かった。
山口先生 「私の宿題は試してみましたか?」
ということで、先生の前で「真向法体操」をすぐに実演することに。
先生、そして撮影を担当してくれたカメラマンから、「おおっ~」と驚嘆する声が上がったかどうかは、分からない…。読者のみなさんの期待に反する結果で恐縮なのだが、44歳の中年男性にしては、体は柔らい方なのである。1カ月前には、久しぶりの柔軟体操で夜中に奇声を発していた記者は、きっと別人である。少し緩んだお腹はご愛嬌としても、先生から与えられた課題は
「まだ楽勝っス」
と内心ではほくそ笑んでいた。いやはや、間に合ってホントよかった…。
先生 「40代半ばの体だと思えば、すばらしい可動域ですね。これは期待できるね」
筋骨隆々になるまで筋トレで鍛え、そんな筋力に頼るゴルフは「やがて加齢で通用しなくなる日が来る」と山口先生は指摘する。しかも体への負担は増すばかりで、すぐに腰や肩、膝が悲鳴を上げる。今年、古希(70歳)を迎えた先生の周りにも、
「ドライバーの飛距離がすっかり落ちた」
「体が痛くてクラブが振れない」
といった理由で、ゴルフから遠ざかっていった仲間がたくさんいたという。
