自分に基準を設け『攻める』『守る』を判断していく
ここまで紹介した内容は、単なる決め事で、適切な判断で攻守を柔軟に切り替える「コースマネジメント」からは程遠いかもしれない。それを象徴するかのように、午前中の好スコアで気が緩んだせいか、午後は「3つの決め事」などどこへやら…。後半は、前半とは打って変わりダボ、ボギー、ダボが続き、10打も余計に叩いてしまう有様。
でも、結果が出ればやっぱりうれしい。早速、ラウンドを振り返った後に、「90切り」をした報告を、いの一番に師匠である山口先生に報告した。
山口先生 「それはそれは嬉しい知らせですね。早くも88とは素晴らしいです! コースマネジメントを意識したとのことですが、実は多くのゴルファーが場当たり的にプレーをして、ただでさえ難しいゴルフをかえって難しくしているように見受けられます。ゴルフも将棋と同じように、次の一手、その次の一手、そのまた次の一手と、先を読みながら『悪手』を避け『最善手』を見つけることが面白さであり、醍醐味でもあると私は考えています。ちなみに、私は、いつもショットに入る前に、3つの作戦を立てて臨みます」
記者 「やっぱり私と同じ3つなのですね」
山口先生 「内容は随分違います(笑)。私の場合は、残りの距離やグリーン周りやピンの位置などの状況に応じて、真っ向からピンを狙う『バーディ作戦』、花道などの安全なところを狙って打ち、次のアプローチでぴったり寄せてパーを拾う『パー作戦』、得意な距離を残して刻んで悪くてもボギーを確保する『ボギー作戦』の、どれかを選ぶようにしています。多くの人が、状況を考えずに自動的に残りの距離に応じたクラブを選んで打ち、深いバンカーや池、ライの悪いところへ打ち込んで大叩きをしています。状況に応じて自分の技量に見合った作戦を立てることが重要です。私が『バーディ作戦』を選ぶのは150ヤード以下で、難しいハザードが待ち受けていないときです。150ヤードを超えれば、即、『パー作戦』か『ボギー作戦』に切り替えます」
記者 「先生の場合は、1打ごとに状況判断をしながら、臨機応変に作戦を変えていくのですね」
山口先生 「コースマネジメントとはまさに『敵(コース・状況)を知り、己(技量)を知る』ことだと思っています。先にご紹介した『パー作戦』では、カップに寄せやすいところから前向きな気持ちでアプローチを打てるので“寄せワン(アプローチショットを1パットで決めやすい位置につけること)率”が高いのです。もしも、『バーディ作戦』でグリーンを外せば、ライが悪いところから、『あー、失敗した』という後ろ向きの気持ちでアプローチを打つことになる。そんなときには寄せワンなど望みようもありません」