日経グッデイ

月イチゴルファーが2年でシングルを目指す!!

バンカーショットの極意は「砂を爆発させる!」

第15回 山口流“一発必脱”の線消し練習法で高く遠く

 池田 悟=日経Gooday

鬼編集長の業務命令で、「2年でシングルを目指す」という途方もない目標のゴルフ企画を担当することになった40代記者。自称、「バンカー好き」の記者の思い込みは、はかなくも砂上の楼閣として崩れ去ることに…。今回は、山口信吾先生による直伝の“一発必脱”バンカーショットに取り組んだ。

 昨年、13年半ぶりにゴルフを再開(関連記事:「13年ぶりにクラブを手にした40代オヤジでもシングルになれる!? 」)して以来、この連載で指導をお願いしているゴルフ作家の山口信吾先生から唯一、感心されるショットがある。

 それが、「バンカーショット」だ。

アゴの高いバンカーでも密かにへっちゃらだと思っていたが、「知らぬが仏」とは言ったもので…。
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 自分自身でも失敗は少ないほうだと思ってはいたが、山口先生からはときおり、

 「バンカーショットだけはシングル級の腕前ですね(笑)」

 と、冷やかされることしばしば。打ち出す方向に切り立った壁がある、いわゆる「アゴが高い」バンカーだろうと、1、2打目で打ち込んでしまったグリーンまでずいぶん距離があるフェアウェイバンカーだろうが、さほど苦手意識はない。まして、グリーンを囲むように設けられたガードバンカーからのショットなどは、ワクワクしてピンを狙いたくなるほどだ。

 「これまで、だてにバンカーに打ち込みまくってきたわけじゃない」。山口先生にも賞される“美技”の背景について、自分ではこう分析している。

 山口先生いわく、「バンカーショットでは、ボールの右手前からしっかりとクラブを砂に打ち込むこと。つまり、“ダフって”振り切ればよいのですから、決して難しいショットではありません」。この連載を開始した当初から、幾度も綴ってきたように、ダフるのはお手のものである。これがいい方に作用しているらしい。「ダフリ王」も、ことバンカーに立てば「水を得た魚」(?)となるのである。

バンカーは“コツ”を知っているかどうか

 こうした経緯もあり、本編ではバンカーショットの基本練習をご紹介して来なかったが、脱出させるのに四苦八苦しているゴルファーは少なくない。実際、急斜面からのショットで、5打も、6打も要する“バンカーラッシュ”を目撃したこともある(この連載の担当カメラマンであるM氏なのだが…)。

山口先生 「バンカーショットになると、途端に身構えたり、変に気負ったりしてスイングを変える人がいます。ですが、バンカーからは、一発で脱出できる“コツ”を知っているかどうかに尽きます。加えて、厳しい言い方をすれば、多くのゴルファーは練習不足です」

山口先生のバンカーショットのひとコマ。砂を爆発させるような見事な「エクスプロージョン」。この後、ボールは見事にピンに絡んだ。
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 …というわけで、いつも当連載の撮影にご協力して頂いている「吹田ゴルフセンター」のバンカー練習場を訪れることになった。ご参考までに、この施設は200ヤード超の「メイン練習場」に加えて、50ヤードの「アプローチ専用練習場」、高麗芝を敷いた「パット練習グリーン」、そして「バンカー練習場」と、まさに「至れり尽せり」なのだ(これほどの施設は東京都区内にはないのでうらやましい…)。

バンカーに引いた線をきれいに消しながら振る

 まずは5球ほどバンカーにボールを適当に散らし、思い思いに打っていく。

 1球目、「ナイスアウト!」。

 2球目、「ナイスアウト!」。

 3球目、「あれれ、トップ気味…だ」。

 4球目、「あらら、今度はダフッたぞ」。

 5球目、「えーーっ、ダフリチョロかよ~」。

 本物のシングルプレーヤーである山口先生にも称賛された“バンカーショットだけはシングル級”だったはずの評価は、あっさりとボロが出てしまった。これぞまさしく、「砂上の楼閣」がもろくも崩れ去った瞬間である。

山口先生 「バンカーの練習でショットが狂い始めたのは、手打ちになっているからです。ボールを飛ばそうとして腕や手先の力加減だけで振っていると、疲れから砂の抵抗にスイングの力が負け始めます。するとトップやダフリ、ひどいときにはシャンク(ボールが横に飛び出すこと)が起こります。それでは、こんな練習をやってみましょう。バンカーの上に1本線を引いてみてください」

 先生の指示に従い、クラブの先端を使ってバンカーに3mほどの横線を一本引く。ちょうどバンカーを二つに分ける境界線を引くイメージだ(写真)。

バンカーに横線を一本引く。この線の左手前にクラブのヘッドを入れ、線をきれいに消す練習を繰り返す。
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山口先生 「では、線をまたぐ形で構え、線の少し左側にボールがあるという前提で、本番さながらにスイングをしてみてください。スイングで線を消しながら、一振りごとに少しずつ前方(構えたときの正面側)に移動します。砂を高く、遠くまで飛ばしましょう。ボールがあるとそれを意識しすぎて振り切ることが難しい。ボールがなければ思い切って振り切れます。いわば“バンカーショットの素振り”で砂の抵抗に負けずに振り切ることを覚えるのです」

砂を前方に向けてふっ飛ばす「エクスプロージョン」

 30回は連続で振り続けただろうか。はじめは快調に線を消して進めたが、やがて狙いが定まらなくなり、最後のほうは腕に力ばかり入る。かなりヘトヘトである。記者がクラブを振った跡を振り返って見てみると、線の消え方にとてもムラがあった。線より前にクラブのヘッドが入った跡、後ろに入った跡…と、様々なのだ。山口先生にも同じ練習を手本として見せてもらうと、砂は高く遠くまで舞い、バンカーに引いた線はきれいに消えている。それどころかヘッドが砂に入った痕跡も滑らかで、ほぼ同じ位置になっているのだ。

記者 「無我夢中で線を消してみましたが、だんだん腕に力が入らなくなり、砂の抵抗が強く感じられるようになって一定のスイングができなくなります」

山口先生 「そうなのです。腕や手だけで振る『手打ち』になると、スイングがバラバラになります。そうなると、結果的に、砂の中からヘッドがしっかり振り抜けずに、上手くボールを打ち出せません。練習するときには、“バサっ”と砂を高く遠くに吹き飛ばすように、腰をしっかりと回してクラブを振り抜く。バンカーショットのことを『エクスプロージョン』と呼ぶのは、“砂を爆発させる”ことが由来です。下半身を安定させておいて、背筋と腹筋を使って体幹(上半身)を回してスイングする。こうして砂の抵抗に負けずに振り切るのがコツなのです」

砂の抵抗を恐れずにしっかり振るほどいい球が出る

 次に、砂に引いた線の前側(自分の左手側)に、ボールを30㎝ほどの等間隔に置いて、実際に打っていく。ボールを打つという感覚よりは、ボールの手前から砂ごと“ふっ飛ばす”ように振る。なるほど! 砂の抵抗を恐れずにしっかり振り切れたときほど、「バン!」という気持ちいい音と共にSW(サンドウェッジ)のバウンス(ソール部分に施された膨らみ)が上手く利いて、ヘッドが砂の中からすうっと抜けていく。しかも、空中に飛び散る砂の中から、ボールだけが“ふわり”と上がる。何回も練習しているうちに、バンカーショットが安定してきた。

線の前側に30㎝間隔でボールを置き、先ほど練習した「線消し」の素振りと同じスイングでボールを実際に打つ。勢いよく砂を前方に飛ばしていく。
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 コツをつかんできたら、ここからは実験とばかりに、面白半分でいろいろな打ち方を試してみる。ボールにヘッドを直接ぶつけて打ったり、わざと15㎝ぐらい手前の砂を打ってみたり。さらに両足のスタンスをクローズやオープンにして、クラブのフェイスを「開く」「閉じる」などでも試してみた。なるほど、山口先生に教わった基本から逸脱したスイングだと、狙ったところにボールをコントロールできないどころか、バンカーから安定して出せないことがつくづくわかった。

 砂を前に吹き飛ばすように、ボールの少し右手前にヘッドを入れてクラブを振りぬく。調子に乗って打ち続けていると、突然、前から強い向かい風がひと吹き…。まるで大砂嵐にでも合ったかのように、砂じんをモロにかぶる。そうか!! テレビでゴルフのトーナメントを観戦していると、時折、プロゴルファーたちがバンカーショットの後に、くるりと背中を向けて反転したりする。向かい風のときには、舞い戻った砂じんを全身に浴びてしまうほど、大量にエクスプロージョンさせていたことがその理由だったわけだ。

足裏の感覚を駆使して砂の「硬さ」「深さ」を探る

山口先生 「基本的なバンカーの打ち方はわかってきたようですね。どんどん練習しながら、次のステップでは、距離感と共にタテ・ヨコのコントロールをつけるようにしてください。砂の抵抗に負けずに、しっかりクラブを振り抜く。フォロースルーでクラブが肩まで上がり、しっかり首にシャフトが巻きつくようにフィニッシュの姿勢が取れるようになれば合格です」

 ボールを“一発必脱”するだけであれば、「すぐに習得できるはず」(山口先生)だという。しかし、コースの整備状況や天候によって、砂質が「サラサラ」または「ザラザラ」のときもあれば、砂の量が「多い」「少ない」の違いもある。

山口先生によるバンカーショットの練習風景。記者の頼りないスイングのときとは違い、大量の砂が前方に向けて飛び散っているのがわかる。
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山口先生 「本コースでのプレーでは、ボールを打つ前にクラブを砂に付けた時点で、1打のペナルティーが科せられるのは周知の通りです。すると本番で必要なのは、バンカーの外で『狙い』を決めてから、球筋をイメージして『素振り』を終えておくことです。さらに、その日の砂の状態は、足裏の感覚を最大限に駆使して、『硬さ』や『深さ』を探るのです」

 こうした細やかなルーティンやコツも知らずに、「バンカーは苦手ではない」などと言っていた記者の無知ぶりは、改めて赤面もの…だったわけである。

しまった!! 砂がほとんどない“ベアグラウンド・バンカー”だった

 今回は主にグリーン脇にあるバンカーから、SW(サンドウェッジ)を使って“一発必脱”させる基本練習について学んだが、ゆくゆくはコースをラウンドする中で出くわす様々なケースでのバンカーショットもご紹介できたらと思う。30~50ヤードの距離をAW(アプローチウェッジ)やPW(ピッチングウェッジ)、9番アイアンを使い分けてピンを狙う方法から、『急斜面の左足下がり』や『目玉』、そしてバンカー縁でバックスイングができないような難易度の高いライからの打ち方、フェアウェイバンカーやグラスバンカーでの対処方法まで、実践で求められるケーススタディーはいくらでもある。

 山口先生との練習を終えてから数日後。自宅近くにある河川敷のショートコースを訪れ、あえてバンカーにボールを打ち込み、山口先生直伝の “一発必脱”のスイングを試みた。バンカーの外で狙いを定め、素振りをするルーティンを終えて、万全の態勢で、いざ砂をエクスプロージョン!

 次の瞬間、手がビリビリっとしびれ、“ガツ~ン”という派手な音とともに、ボールは哀れグリーン奥のOBゾーンへ…。

 しまった!! ルーティンに気を取られ過ぎて、砂がほとんど入っていない“ベアグラウンド・バンカー”だったことを、すっかり確認し忘れていたのだ。間髪入れずに叫んだ、ゴルフ好きの定番「オヤジギャグ」で本編を締めることをお許し頂きたい。

 「いや~ん、バンカ~~ん

 次回は、打ってよし、転がしてよしのミラクル「8番アイアン」をご紹介する予定です。ぜひ、ご覧ください。


(写真:水野浩志)

山口信吾(やまぐち しんご)さん
ゴルフ作家
山口信吾(やまぐち しんご)さん 1943年生まれ。九州大学工学部を卒業後、同大学院を修了。69年に竹中工務店に入社。72年にハーバード大学大学院を修了後、シカゴの大手設計事務所に勤務。75年に帰国し、竹中工務店に復帰。43歳からゴルフを始め、還暦を前に一念発起し、独自の練習法によって2年でシングルを達成した。ベストハンデキャップ8。新聞および雑誌に寄稿多数、ゴルフの著作は14冊にものぼる。2015年3月より「WEBRONZA」(朝日新聞社)において、新規ゴルフ連載『ゴルフがある喜びと幸せ』がスタート。
撮影協力

西宮高原ゴルフ倶楽部

吹田ゴルフセンター


ラウンド衣装/山口先生・シャツ(ブルー)7020円、パンツ1万800円、ベルト8100円。記者・シャツ(オレンジ)7020円、ゴルフインナー(ホワイト)5400円、パンツ1万800円、ベルト8100円。練習衣装/山口先生・ストリームパンツ7560円、ストリームジャケット9180円。記者・フリースパンツ9720円、トップス7020円、以上すべてアンダーアーマー。