日経グッデイ

月イチゴルファーが2年でシングルを目指す!!

アプローチショットの練習が上達の早道になる!

第11回  「男の狩猟本能」が駆り立てられる? アトランダム練習

 池田 悟=日経Gooday

鬼編集長の業務命令で、「2年でシングルを目指す」という途方もない目標のゴルフ企画を担当することになった40代記者。今回はゴルフのスコアメイクに欠かせないショートゲームにおける、アプローチショットの練習に取り組むことになった。ゴルフ作家の山口信吾先生によれば、「アプローチの精度を上げれば、長いクラブも上手くなる!」とのこと。しかし、15ヤード先の目標に全然ボールが寄せられず…。

 この連載で指導をお願いしている山口信吾先生と一緒にラウンドしていると、ピンまで100ヤード以内のアプローチショットでミスをすることはまずない。それどころか、「魔法の杖をクラブに変えたのではないだろうか」と思えるほど、放たれたボールはほぼワンピン以内にピタリと止まる。シングルプレーヤーが「神」のように見えるシーンの一つである。

ラウンド後にアプローチショットをもう一度、山口先生にチェックしてもらう。「ボールを上げようとして手打ちになり、左肩が上がっています。股関節を使って重心移動をして腰を切る(回す)基本スイングを心がけてください」(山口先生)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、ケーススタディーとして、次のようなシーンを思い浮かべて頂きたい。

 パー5のロングホールでの3打目、グリーン手前のラフからピンまでの距離はおよそ20ヤード。グリーン上は緩やかな上りで、エッジ(芝を短くカットしたグリーンを囲むエリア)まではおよそ5ヤード。ライはやや勾配のある左足上がりで、芝は逆目。アプローチをワンピン以内に寄せればバーディーチャンス、2パットでもパーセーブは確定できる。

 恐らく、中・上級者ゴルファーであれば、「ボールを転がす、上げる」「クラブ選択とスイングイメージ」などを即座に決めて、スコアメイクにつなげていくに違いない。だが、記者を初めとする初心者の多くは、こうした状況から“突然やらかす”こと請け合いである。

ゴルフの上達とスコアアップのカギは、ピンまで残り30ヤードからアプローチショットのミスを減らすこと。
[画像のクリックで拡大表示]

「トップ」「ダフリ」「チョロ連発」…。

 ときにグリーンを越えてバンカーや池にポロリもあれば、残り20ヤードから痛恨の谷落ちOBまである。ティーグラウンドやフェアウェイからのショットですら安定しない初心者が、グリーン周りのアプローチショットでも叩いてしまえば、スコアカードにはあっという間に「8」「9」「10」…といった数字が並ぶことになる。

 これまでのラウンドでもミスが多かったアプローチショットの問題を、早速、山口先生とともに解決していくこととなった。

目の前にある15ヤード先のカップにすら寄せられない

山口先生 「それでは、今から私が指示する場所を狙って打ってください。まずは、正面にある20ヤードの表示板! はい次、右奥の30ヤード!! 今度はAWに持ち替えて、次…」

 ゴン、ドン、カツっ、パスっ…。

 もちろん、鍛冶屋に弟子入りしたわけではない。記者がSW(サンドウェッジ)、AW(アプローチウェッジ)、PW(ピッチングウェッジ)のいずれかのクラブを使ったときの打球音は、およそ先のような感じだ。山口先生が指示した目標に寄るどころか、ボールは左右に散り、オーバーやショートを繰り返す。目の前にある15ヤード先のカップにすら寄せられないのである。

記者 「全然、ボールが狙った場所に寄せられません。10ヤード前後だと『手打ち』で力を加減して距離を合わせたり、30ヤードになるとバックスイングの大きさで調整したりしますが、スイングスピードも定まらず、手首のコックの使い方もまちまちになります」

山口先生 「前回のラウンドでもよく見かけましたが、せっかくグリーン近くまで来ているのに、アプローチでトップしてグリーンの奥にこぼしてしまうのはなんとももったいないことです。アプローチショットの練習では、SA、AW、PW、9Iを使い分けながら、どのクラブでも一定の球筋で打てるようにしていきます。短いアプローチショットを打つときにも、『軸足に加重する』『股関節を使って重心移動をさせて腰を回し切る』というスイングの基本は変わりません。例えば、こんな感じです」

20ヤード先の狙いに向けてアプローチショットを試すが、手打ちになってしまう。重心移動が正しくできていないことは、記者がスイングするときのひざの位置からでもわかる。
[画像のクリックで拡大表示]

アプローチの練習は長いクラブを上達させる早道

 山口先生が繰り出すアプローチショットは、“カツっ”という乾いた打球音とともに、狙いを予告した所にピタリとボールが止まる。放物線を描いて「ふわり」と柔らかく飛ぶ球筋もあれば、バックスピンがかかったボールが着地した瞬間に「キュッ」と一瞬止まった後、ツー、コロ、コロ…と狙いに向けてゆっくり転がっていく球筋もある。記者がお手上げだった15ヤード先のカップにだって、次々とチップイン(アプローチショットがカップに入ること)していく。

山口先生 「今お見せしたアプローチショットは、ボールを上げる『ピッチショット』、転がす『チップショット』を打ち分けています。ですが、どちらもスイングするときの基本動作は変えていません。アプローチの精度を上げる練習というのは、スイングの基本動作をしっかり身に付けることにもつながる。実はドライバーやロングアイアンなどの長いクラブのショットを上達させるのは、アプローチショットの練習が早道だと考えています」

股関節を使って重心を左足から右足へと移しながら、腰を切って(回して)スイングする山口先生のアプローチショット。先生のスイングの基本動作は、ドライバーからSWまで一貫して変わらない。
[画像のクリックで拡大表示]

記者 「そうすると、やはり私はまだまだ基本が身に付いていないわけですね。スイングの基本動作を確認しながらアプローチ練習の効率を上げる方法はあるのですか」

 ここで山口先生が取り出したのは、鉄製のおもりが付いた練習用ゴムティーだった。ボールの右側にゴムティーを10cmほど離して置き、その隙間を狙ってクラブのフェイスを正しく入れて打つ練習を反復する(写真)。ダフリを起こせばゴムティーに当たり、トップになれば“カツっ”という乾いた打球音がしなくなる。手打ちになりやすいスイングを矯正していくわけだ。

鉄製のおもりが付いたゴムティーを使い、ボールとの隙間にしっかりクラブを入れて打つ練習を反復する。腕や手首だけでスイングを調整すると、まず正しく当たらない。短く乾いた「カツっ」という打球音が出ていれば合格。
[画像のクリックで拡大表示]

山口先生 「クラブを腕や手首だけで操作したり、重心移動がしっかりできていなかったりすると、短いアプローチショットでもダフリやトップを起こします。クラブが正しくボールとティーとの間に入れられれば、フェイスでボールをしっかり捕らえている“カツっ”という短く乾いた打球音がするはずです。チップショットやピッチショット、さらにランニングアプローチといった打ち分けはまた改めてお教えしますが、まずはアプローチショットでも基本のスイングを心がけてください。ちなみに、私は週2回、打ち放題の練習場で、AWを使ったアプローチをみっちり1時間行います」

1球ごとに狙い所を変える『アトランダム練習』が効果的

 ティーとボールの隙間にクラブを入れることを少し意識しながら、これまで山口先生から習った「軸足への加重」「股関節を使って重心を移しながら腰を切る(回す)」という基本を心がけてスイングを繰り返してみる。すると、練習を始めたときに出ていた打球音「ゴン、ドン、カツッ、パスッ」が、少しずつではあるが「カツっ」に変わってきた。おもしろいもので、腕や手首、腰で力を加減して打っていたときよりも、基本を忠実に守りながら「しっかり打つ」ほうが、ボールのコントロールが格段に上がることがわかった。

アプローチは5~30ヤードの間で、一球ずつ目標を変えながら打つ「アトランダム練習法」で行う。
[画像のクリックで拡大表示]

山口先生 「だんだん良くなって来ました。慣れてきたら、次は1球ごとに奥や手前、左、右と狙いを変えて打つ『アトランダム練習』をしてください。狙う場所が毎回違うコースでのシチュエーションを想定しながら、“一発必中”でしとめる実践練習にもなります」

 アトランダム練習は「童心がくすぐられるゲーム感覚」…、いや「男の狩猟本能」が駆り立てられるようなおもしろさがある。ドライバーやロングアイアンのように大きくスイングする必要がないから、体への負荷もなく、飽きることなく打ち続けられる。

「どんなに短い距離のショットでも、腕や肩、腰の力加減で調整してはいけません」(山口先生)
[画像のクリックで拡大表示]

山口先生 「多くのゴルファーは、200ヤードを越えるような大きい練習場に行くと、30ヤード以内のアプローチ練習をするのは、なんだかもったいないと思ってしまうものです。その気持ちはよくわかりますが、ストレス解消のためや爽快感を得るためにドライバーを振り続けても上達は望めません。レベルとスコアの両方をアップするための大きな課題は、ピンまで残り30ヤード以内から3打以内で上がれるようにすることです。スコアで100切りを目指すのであればグリーンに乗せるだけでいい。90を切るためにはピンから数メートルに寄せる技術が必要です。30ヤード以下のアプローチを徹底的に磨いてください」

 帰京後、自宅リビングルームに「50㎜丈の人工芝」と「5ヤードのパターマット」を敷いて、昼夜を問わずにアプローチ練習に取り組むことになった。「カツっ」、そして「ツー、コロ、コロ…」の打球音と転がり…。

 下の階に住むご家族のみなさま、うるさかったらごめんなさい。

次回は、『「上げる」「転がす」アプローチを徹底練習する』をご紹介します。ぜひ、ご覧ください。



(写真:水野浩志)

山口信吾(やまぐち しんご)さん
ゴルフ作家
山口信吾(やまぐち しんご)さん 1943年生まれ。九州大学工学部を卒業後、同大学院を修了。69年に竹中工務店に入社。72年にハーバード大学大学院を修了後、シカゴの大手設計事務所に勤務。75年に帰国し、竹中工務店に復帰。43歳からゴルフを始め、還暦を前に一念発起し、独自の練習法によって2年でシングルを達成した。ベストハンデキャップ8。新聞および雑誌に寄稿多数、ゴルフの著作は14冊にものぼる。2015年3月より「WEBRONZA」(朝日新聞社)において、新規ゴルフ連載『ゴルフがある喜びと幸せ』がスタート。
 撮影協力

西宮高原ゴルフ倶楽部

吹田ゴルフセンター

ラウンド衣装/山口先生・ポロシャツ9180円、インナー7560円、パンツ1万800円、ベルト8100円。記者・ポロシャツ8640円、インナー8100円、パンツ1万800円、ベルト8100円。練習衣装/山口先生・ストリームパンツ7560円、ストリームジャケット9180円。記者・フリースパンツ9720円、トップス7020円、以上すべてアンダーアーマー。