ゴルフ用語には横文字が多いからなのか、複数の意味が混在して使われているものが少なくない。ここでは、本編でもよく登場する用語「アドレス」について、もう一度おさらいしてみよう。
アドレスはそもそも、「ボールを打つ前に足の位置を決めて構えること」を指しているが、そこには「姿勢(ポスチャー)」や「足の位置」「肩のライン(アライメント)」といったすべての要素を含んでいる。例えば、「アドレスと飛球線を平行に合わせる」と一言でいっても、右利きの場合「足の位置が飛球線と平行でも、左肩が少し内側に入っている」といった構えでアドレスをしているゴルファーも少なくない。山口先生によれば、「両足と両肩のラインが飛球線に対して平行になるように構えることが基本中の基本。この基本を身につけずにいくらボールを打っても“下手を固める”ばかりです。クローズドやオープンで構えるアドレスは確かにありますが、基本が十分に身についていない初心者には絶対に勧めません」とアドバイスする。
記者をはじめとする初心者によくあるのが、「両肩のライン」「スタンスの向き」「飛球線」がバラバラで構えてアドレスしていること。「目標を意識すると、無意識に肩のラインを目標に向けて構えてしまいます。両肩のラインが左を向いていると感じるぐらいで飛球線と平行なのです。コースの形状や風景によっては、脳が錯覚して構えを乱すこともあります。そこで、いつも飛球線に対して平行で構えられるように、練習場でアドレスのルーティンを身につけて、コースでも必ず実践するのです」(山口先生)。
ルーティンとはルーティンワークの略で、ご存じの通り「定型業務」のこと。メジャーリーガーのイチロー選手が、バッターボックスでユニフォームの右肩を左手で軽くつまんでからバットを構えたり、テニスプレーヤーの錦織圭選手が、ボールを4回コートについてからサーブを打ったりするのも、ルーティンの1つだ。「ショットに至るまでに決まったルーティンをすることで、体と心を整えて緊張をほぐしたり、周りの環境に影響されずに一定の動作を体に再現させたりする役割があります」(山口先生)。簡単にいうならば、ナイスショットを打つのに必要な正しい構えを再現するための “おまじない”みたいなものだ。
山口先生のルーティンのプロセスは、下の写真で示したとおり。「どんな状況下でも、ルーティンを経てから、スイングに入ります。雨の日でも、暑い日でも、決まったリズムを保つことが大切です」(山口先生)。
(写真:水野浩志)
ゴルフ作家

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