日経グッデイ

月イチゴルファーが2年でシングルを目指す!!

ボウリングの基本技術でアドレスを見直す

第8回 練習場をコースに変える山口流メソッド その1

 池田 悟=日経Gooday

鬼編集長の業務命令で、「2年でシングルを目指す」という途方もない目標のゴルフ企画を担当することになった40代記者。ゴルフに真剣に取り組み始めてからおよそ6カ月が過ぎようとしているのに、前回、前々回と続けて「120」台の大叩きをしてしまった。今回は、これまでのミスを自己分析したうえで、ゴルフの基本である「アドレス」から見直しながら、山口信吾先生の独自の練習法に取り組むことになった。

 本音を打ち明けると、2014年が終わるまでに「100切り」を密かに目指していた。もしも、目標が果たせなかったとしても、「110」ぐらいは楽々切っているものだと思っていた。

 だが、こうした目論見は見事に外れた。それどころか、2回も続けてスコアが「120」台という結末…。連載タイトルにある「110の王」の称号すら達成できていないのが現実であった。とはいえ、信ぴょう性に欠けることは承知のうえなのだが、自分の中に「進歩の手応え」があることも事実である。

コースでミスする傾向を分析したうえで、山口信吾先生の練習法を取り入れる。まずはアドレスの見直しからスタート。
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 今まで続けてきた練習方法を見直すのは当然だとして、これまでのラウンドで頻発したミスを分析して仮説をいくつか立て、一つずつ検証と解決をしていかなければ上達など叶わない。そこで前回の分析(「痛恨! 再挑戦の1人ラウンドも『120』の大叩き」」)を基にしながら、山口信吾先生に伝授してもらった「練習場をコースに変える山口流メソッド」を紹介していこう。

ボウリングの「スパット」を応用して方向性を高める

 まず、最重要課題にしたのが、コースで左右に散るボールの方向性を修正することだ。その改善策には、「正しいアドレス」「クラブを替えたときの重量の変化」を意識して練習に取り組む課題を掲げた。

前回のラウンドでのひとコマ。右斜め下にある池を嫌い、ボールの飛球線は真っすぐを狙っているつもりなのに、アドレスが左に向き気味。この後、ボールは見事に左奥にある池に一直線…。
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 球筋が安定しないのは、アドレスをしたときに「飛球線(ボールが目標に向けて飛ぶ仮想の線)」と両肩を結ぶ線が平行になっていないことが一因だと、前回のラウンド中の写真から判明した。体が右を向けばボールは右に飛び、左ならば自然と左へ飛んで行く。見方を変えれば、ボールは「アドレスした通り」に飛んで行っているわけである。アドレスの改善は、OBの防止以前に、ゴルフの「基本のキ」の習得でもあるのだ。

 本来、飛球線とアドレスしたときの両肩を結ぶ線は、「平行」を保つことが理想だとされる。ところが、記者はアドレスがバラバラであることが多い。仮に、体が右側に8度回ったままアドレス(左肩が内側に回った状態)して打ったとしたら、真っすぐ200ヤード先を狙っていても、右方向におよそ28ヤードずれて飛んで行く計算になる(風などの気象条件や飛距離にかかわるボールの回転数を除いて計算した場合)。右に曲げるのを嫌って、手先だけでスイングを微調整すれば、今度はボールを引っ掛けたり、シャンクが出たりする。

 この課題を解決するために、山口信吾先生から伝授してもらったのが、「スパット」を使った練習法である。スパットとは、ボウリングのレーン手前に付けられた7つある三角形の印のこと。ボールを投げる地点と狙うビンを結ぶ“仮想の線”を引き、その線上にあるスパットを狙って投げるのが上達の第一歩。この練習法をゴルフでも活用するのが狙いだ。「練習場であれば、マットの左前にグリーンで『マーカー』を置いてスパットにします。コースに出たら、ボールの50cmぐらい先にあるディボット(芝が削られた跡)や落ち葉などを代わりにします」(山口先生)。

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マットの左側(ボールが飛ぶ方向)に、目標から「飛球線」を引いてスパットを置く。ゴルフコースに備え付けられているプラスチック製の「マーカー」を活用するといい。

 まずは、ボールの後ろに立って「目標に向けて飛球線をイメージする」、次に「飛球線と両肩を結んだ線を平行にして構える」、「クラブのフェイスを飛球線と垂直になるようにボールの右側にセットする」という一連のルーティンを終えたら、スパットに集中して打つ。

 「1球ずつ『あの目標に向かって打つ!』と自分に言い聞かせることが大切です。ゴルフのショットは、ハザード(池やバンカーなど)や林を意識すると、不思議とそこに打ち込んでしまうものです。ティーグラウンドがそもそもOB方向に向いているホールもあります。構えに入ったら、スパットの助けを借りながら、1球ごとに異なる目標に向かって打つ練習を繰り返しましょう。練習場でもコースでも打球の方向性が良くなってきます。『スパットゴルフ』を重ねていれば、ハザードに心を乱されて打ち込んでしまう失敗は徐々に減ってきます」(山口先生)。

 実際に練習場で3つのスパットを作り、「左」「真ん中」「右」を打ち分けてみると、狙った目標に向けて真っすぐ飛ぶようになってきた。試しに、飛球線とアドレスを合わせずに3方向へ打ってみると、球筋は定まらなくなり、ミスショットが増える。今さらながら、「ゴルフの基本」を実感できた気がする。

2階の左右両端が上達への特等打席!?

 ところで、読者のみなさんは練習場を訪れた際、何を基準に打席を選んでいるだろうか。飛距離がわかりやすく、また短いアプローチ練習ができる「1階」の打席。それとも、1球でもボールをたくさん打つとの目的で、1階よりもボール代が安い「2階」や「3階」の打席。現在、記者は4つの練習場を目的によって使い分けているが、土日ともなれば「1階の中央打席」はどこも満席が常である。

 先にご紹介した「スパット」に続いて、山口先生に薦められたのが「2階」の打席を使った練習法だ。しかも、右または左の両端が「特等打席」になるそうだ。

 「1階の打席は、無意識にボールを打ち上げようとして、左肩を上げて打っていることが多い。こうした癖の蓄積を防ぐためにも、下に視界が広がる2階の打席を活用するのです。自然体で構えることができて、球筋が最も分かりやすい。打ち下ろしホールを想定した練習もできます」(山口先生)。

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【写真左】2階右端の打席から「右側に林がある」と思って打つ。狙いは左の奥。右を避けようとして左を向いて構えると、体が開くため、かえって右に打ち込みやすくなる。【写真右】2階左端の打席から「左側に林がある」と思って打つ。狙いは右奥。どちらの打席も目の前や背後にネットや鉄柱が迫り、意外に気になる。記者の場合、左からの圧迫感に弱い傾向があり、クラブがネットにぶつかるような感覚になるため、どうしても腕を縮めて打ってしまうのだ。

 さらに、左右の両端の打席を選ぶのは、視覚的なプレッシャーが加わったときに、体がどんな癖を出すのかを知っておくためだという。「練習場では、目の前や背後に迫るネット、鉄柱、壁面など、視覚的に気になる要素をあえて自分に与えてみます。左右どちらの打席でミスが多くなるのか。コースの左右の危険を避けながら斜めに打つ練習にもなります」(山口先生)。

 なるほど、前回のラウンドでも、目の前に林が迫ってくるようなティーグラウンドがあったり、左側にクリーク(小川)が続くフェアウェイがあったりと、視覚的なプレッシャーがかかるホールがいくつも続いていたことを思い出した。

 ちなみに記者の場合、左端が苦手だった。スイング後にクラブが背後のネットにぶつかるイメージが出るためだ。コース上では、自分の前後左右にある「危険情報」に心を乱されないようにするためにも、普段の練習のときから自分の癖を修正しておく。「スパット」や「2階打席の両端」を活用した練習は、まさに打ちっぱなしをコースに変える方法になるのだ。

50%の力でもボールを打てる練習を

 アドレスの修正に加えて、もう一つ確認しておくべき課題は「クラブ重量の変化を意識して振る」ことである。これは練習中に気づいたことでもあるが、300gほどの軽いドライバーやウェアウェイウッドを振るときには、フルスイングになっていることが多い。その後、クラブをアイアンに持ち替えると、番手に関わらずドスライスが頻発する。これは軽いクラブを振った「身体記憶」が残ったままで、フルスイングをしているため、「肩や腕の回転が遅れているから」との仮説を立てた。

 こうした分析に、山口先生は「軽いウッド系、重たいアイアン系にかかわらず、まだ下半身主導で左へ振り切っていないからだと考えられます。私はクラブを振る際、ブランコを漕ぐようなイメージとタイミングで練習してきました」と助言してくれた。

 ブランコの踏み台が、後ろに向けて頂点まで達したら、一瞬止まった後に、再び前に戻ろうとして「自然落下」を始める。この落ち始める瞬間に脚へ力を込めると、ブランコは前に向けて加速していく。ゴルフのスイングにも似たような原理があると山口先生は説明する。

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フィニッシュしたときの右足の違いを見れば、同じアイアンでも下半身主導で振ったかどうかが一目瞭然。右の写真は、腰をしっかり回したことで右のつま先が自然に立ち上がっている。

 「バックスイングしたときに腕の力を抜けば、腕とクラブの重みでゆっくり『自然落下』を始めます。このとき、股関節を使って右足に乗せた重心を左足に移していくのが、ブランコを漕ぐときに当てはまる動作です。重心の移動に合わせて、腰を回していけば、ヘッドは自然に加速します。クラブごとに力加減を意識するよりも、下半身主導で『肩や腕の力を抜いてゆったり左に振り切る』ことを心がけてはどうでしょうか」(山口先生)。  

 練習場では100%のフルスイングをするだけではなく、50~60%の出力で振ってみることも大切だと山口先生は薦める。「練習のときからゆったり振ることに慣れておけば、無意識に余計な力が入るコースでは、スイングの理想だとされるちょうど80%ぐらいの力で振れるようになってきます」(山口先生)。

「仮想ラウンド」をすればクラブチェンジも気にならない!

 山口先生の練習法を取り入れてみると、球筋がすぐに変わってきた。3つのスパットを置き、「飛球線」「アドレス」「クラブセット」の順番で正しく構えるためのルーティンを終えたら(ルーティンの順番は好みで構わない)、先生の練習法を少し自分流にアレンジして、50、80、100%の力加減を1セットにしてボールを打つ。そして、クラブを変える…。

背後にある木や林が気になり、視覚的・心理的にクラブが振れなそうな状況は、コース上でもたくさん出てくる。難しい状況でもミスを極力避けることが、スコアを縮めるためには欠かせない。
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 最初に40球ほどうち終わったら、クラブを1打ごとに代えて、50~80%の力で40球ぐらい打つ。そして最後の仕上げは、コースを回っているイメージで、「1W、6 I、9I、AW」「4W、5 I、8 I、SW」「5UT、7I、9I」といったクラブを組み合わせて50球ほど打っていく。こんな「仮想ラウンド」をしているだけで、練習が楽しくなり、クラブの交換も全く面倒だとは思わない。

 「一般ゴルファーを練習場で見ていると、自動でティーアップされるボールを同じクラブで次々に打ち続け、なんとなく納得したらクラブを交換して、また同じことを繰り返しています。一見すると基本練習をしているようですが、ミスの原因に気づかないままだと、間違った修正をどんどん付け足してしまい、スイングを悪くする場合もある。練習場で数発目にいい球が打てたとしても、コースでは役立ちません。私の経験から申し上げると、テーマや目的のない練習を続けても上達は望めません」(山口先生)

 コースで生まれるナイスショットは、練習場での「一球入魂」が原点なのだ。






次回は、「子ども用の座椅子で打ち上げホール対策!?」をご紹介します。ぜひ、ご覧ください。


写真/水野浩志(練習場)、相田克己(コース)

山口信吾(やまぐち しんご)さん
ゴルフ作家
山口信吾(やまぐち しんご)さん 1943年生まれ。九州大学工学部を卒業後、同大学院を修了。69年に竹中工務店に入社。72年にハーバード大学大学院を修了後、シカゴの大手設計事務所に勤務。75年に帰国し、竹中工務店に復帰。43歳からゴルフを始め、還暦を前に一念発起し、独自の練習法によって2年でシングルを達成した。ベストハンデキャップ8。新聞および雑誌に寄稿多数、ゴルフの著作は14冊にものぼる。
 撮影協力

太平洋クラブ 成田コース

吹田ゴルフセンター

衣装/ラウンド写真・ウィンドジャケット1万4040円(ホワイト)、パンツ(グレー)1万800円、ベルト1万260円(ホワイト)。練習写真・フリースパンツ9720円(オリーブ)、トップス7020円(ホワイト)、ストリームパンツ7560円(ブラック)、ストリームジャケット9180円(ダークグレー)、以上すべてアンダーアーマー。