50%の力でもボールを打てる練習を
アドレスの修正に加えて、もう一つ確認しておくべき課題は「クラブ重量の変化を意識して振る」ことである。これは練習中に気づいたことでもあるが、300gほどの軽いドライバーやウェアウェイウッドを振るときには、フルスイングになっていることが多い。その後、クラブをアイアンに持ち替えると、番手に関わらずドスライスが頻発する。これは軽いクラブを振った「身体記憶」が残ったままで、フルスイングをしているため、「肩や腕の回転が遅れているから」との仮説を立てた。
こうした分析に、山口先生は「軽いウッド系、重たいアイアン系にかかわらず、まだ下半身主導で左へ振り切っていないからだと考えられます。私はクラブを振る際、ブランコを漕ぐようなイメージとタイミングで練習してきました」と助言してくれた。
ブランコの踏み台が、後ろに向けて頂点まで達したら、一瞬止まった後に、再び前に戻ろうとして「自然落下」を始める。この落ち始める瞬間に脚へ力を込めると、ブランコは前に向けて加速していく。ゴルフのスイングにも似たような原理があると山口先生は説明する。
「バックスイングしたときに腕の力を抜けば、腕とクラブの重みでゆっくり『自然落下』を始めます。このとき、股関節を使って右足に乗せた重心を左足に移していくのが、ブランコを漕ぐときに当てはまる動作です。重心の移動に合わせて、腰を回していけば、ヘッドは自然に加速します。クラブごとに力加減を意識するよりも、下半身主導で『肩や腕の力を抜いてゆったり左に振り切る』ことを心がけてはどうでしょうか」(山口先生)。
練習場では100%のフルスイングをするだけではなく、50~60%の出力で振ってみることも大切だと山口先生は薦める。「練習のときからゆったり振ることに慣れておけば、無意識に余計な力が入るコースでは、スイングの理想だとされるちょうど80%ぐらいの力で振れるようになってきます」(山口先生)。
「仮想ラウンド」をすればクラブチェンジも気にならない!
山口先生の練習法を取り入れてみると、球筋がすぐに変わってきた。3つのスパットを置き、「飛球線」「アドレス」「クラブセット」の順番で正しく構えるためのルーティンを終えたら(ルーティンの順番は好みで構わない)、先生の練習法を少し自分流にアレンジして、50、80、100%の力加減を1セットにしてボールを打つ。そして、クラブを変える…。
最初に40球ほどうち終わったら、クラブを1打ごとに代えて、50~80%の力で40球ぐらい打つ。そして最後の仕上げは、コースを回っているイメージで、「1W、6 I、9I、AW」「4W、5 I、8 I、SW」「5UT、7I、9I」といったクラブを組み合わせて50球ほど打っていく。こんな「仮想ラウンド」をしているだけで、練習が楽しくなり、クラブの交換も全く面倒だとは思わない。
「一般ゴルファーを練習場で見ていると、自動でティーアップされるボールを同じクラブで次々に打ち続け、なんとなく納得したらクラブを交換して、また同じことを繰り返しています。一見すると基本練習をしているようですが、ミスの原因に気づかないままだと、間違った修正をどんどん付け足してしまい、スイングを悪くする場合もある。練習場で数発目にいい球が打てたとしても、コースでは役立ちません。私の経験から申し上げると、テーマや目的のない練習を続けても上達は望めません」(山口先生)
コースで生まれるナイスショットは、練習場での「一球入魂」が原点なのだ。
次回は、「子ども用の座椅子で打ち上げホール対策!?」をご紹介します。ぜひ、ご覧ください。
写真/水野浩志(練習場)、相田克己(コース)
ゴルフ作家

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