記者「あります! 当日はスタートホールでパー、次をボギーで上がった、3ホール目のパー3でのことです。自信を持って打ったショットが、距離をオーバーして凍ったグリーンの最上段に乗ってしまい、15m近い下りから4パットしたことを引きずりました。挽回しようと意気込んだ次のホールでは、ティーショットをトップチョロして、ハザードに入れてしまい、2打目が岩に当たって後退、3打目は木に当たってまた後退、4打目がトップ、5打目が池…と、結局、ギブアップホールになってしまいました。2打目の状況から、『ダブルボギーでいい』と気を取り直して、素直に真横を向いてボールをフェアウェイに戻さなかったことが招いた結果です。それからは、気分がジェットコースターのように一喜一憂が激しくなりました」
山口先生「今まで取り組んできたマネジメントのミスですね。1つのミスから、ショットが狂い出すことはよくあることです。ですが、それを修正しようとしてスイングを調整しはじめると、ますます収拾がつかなくなる。そういった感じでしょうか」
記者「おっしゃる通りです。当日はパーでスタートできたので、『今日も80台が出せる』との欲が出たのだと思います。前半でギブアップしたホールはあっても、スコアは『50』だったので、後半は『42で回る!』と根拠のない宣言を周囲にしたものですから、かえって力みが取れなくなりました。ティーショットが悪いと、2打目、3打目、パットまでどんどん力が入る。結局、何も出来ずに1日が終わったというのが正直なところです」
山口先生「それはそれで、いい教訓になったのではないでしょうか。先にお伝えしたように、ゴルフは全ホールで好調が続くことはほとんどありません。ドライバーは好調なのにパットはダメ、アイアンがどうしても左に引っかかるといったことが必ず起こります。ですから私は、ラウンドに入る前の練習のときから『その日の心がけ』を決めて、スコアカードの片隅に書いておきます。主に『両足を踏ん張る』『肩を地面と平行に回す』『ゆったり振る』『振り切る』『肩とクラブを同調させる』の5つ。もちろん、これらをすべて行うのは難しいので、1つか2つを前半と後半のホールで『戒め』としておくのです」
記者「どれも今まで先生に指導していただいた基本動作ばかりですね。たしかに、練習場でやらなかったことを試みて状況をさらに悪化させるより、普段取り組んでいることを早く取り戻す方がいい訳ですね。スコアカードに、当日の心がけを記載しておくというのは、いい『おまじない』にもなりそうです」
山口先生「以前のラウンドで、『フェアウェイの右を狙う』『ドライバーは振り切る』といったチェックポイントを声に出してから打ったことがありましたね。すると面白いとに、ナイスショットを連発していました。あの時と同じイメージを心がけられるように、スコアカードに記しておくわけです。特に上がりの3ホールは、スコアを気にしたり、反対に、体力が消耗して体が硬くなっていることに気づかなかったりして、“大叩き”をすることが少なくありません。通例として、最後の3ホールは『難しいレイアウト』に設計されていることが多いためでもあります。崩れる前に防ぐことが理想ですが、ミスしたら『おまじない』を見て、平静を取り戻すように心がける。これもラウンド中のルーティンの一つとして取り入れるといいでしょう」
記者「まさしく、メンタルがゴルフに大きく関わる要因でもあるわけですね」
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