これまで体幹ウォーキングを始める前段階として、歩く時の正しい姿勢や、体幹をスムーズに動かすためのエクササイズを紹介してきた。これらを実践しただけでも、普段の姿勢や歩き方が変わってきたことを実感できた人も多いのではないだろうか。今回からは、いよいよ「体幹ウォーキング」の実践編に入ろう。まずは体幹のバランス力とウォーキングの安定した推進力を高めるために欠かせない「腕振り」をご紹介しよう。
ここまでご紹介したエクササイズで体幹にある筋肉のスイッチをONにしたら、いよいよプロ・ランニングコーチの金哲彦さんが提唱する「体幹ウォーキング」の実践編に入ろう。
体幹ウォーキングは、体全体を使って歩くため、全身の筋肉が刺激されて自然に体が引き締まる。また、エネルギー消費量や基礎代謝量が増すので太りにくい体質に変わる。さらに、姿勢が整うことで疲れにくい体になり、ストレス解消にもつながる。体幹ウォーキングを身に付ければ、心身ともに若々しさを取り戻せるわけだ。
このように、良いこと尽くめの体幹ウォーキングだが、まずは何に気をつけて歩けばいいのだろうか。金さんに聞いてみた。
「初めから細かいことを考え過ぎると、ロボットのようなぎこちない歩き方になってしまいます。エクササイズで体幹をほぐしたら、あれこれ考えずに歩いてみるといい。ただし、歩く時間が長くなるにつれて、いつもの猫背に戻ったり、筋肉が緩んでしまったりして、だんだんと体幹を動かせなくなると思います。そこで、ウォーキングの際に気をつけるべきポイントを4つに分けてご紹介するので、1つずつマスターしてほしい」(金さん)
体幹ウォーキングは、「腕振り」「骨盤の動き」「着地」「重心移動」の4つの要素で成り立っている。今回は、体幹のバランス力とウォーキングの安定した推進力を高めるために欠かせない「腕振り」を実践して行こう。
腕を振るときの一番のポイントは腕を「大きく前に出す」のではなく、「後ろに引く」ことだ。その重要な役割は、背中にある肩甲骨が担っている。
「兵隊の行進のように、腕を大きく前に振っても肩甲骨は動きません。そこで、腕を後ろにしっかり引きます。こうすると肩甲骨が背中の中心に寄り、僧帽筋(そうぼうきん)などの肩甲骨周辺の筋肉がよく動くようになる。すると骨盤や下半身の筋肉も次々と連動していく。腕を引いて歩くことは、それ自体が全身運動になり、体脂肪も燃えやすい歩き方になるのです」(金さん)。つまり、腕を後ろに大きく引くことさえ意識しておけば、ダイエット効果にもつながるのだ。