日経グッデイ

金哲彦式ウォーキング術 目指せマイナス10歳ボディ!

ウォーキングの基本は「腕の引き」と「骨盤の前傾」

肩甲骨と連動させることがポイント

 高島三幸=ライター

 前回は、見た目がかっこ悪いウォーキングの例や、そうなる主な原因を紹介した。2回目となる今回は、かっこよく見える歩き方、すなわち“体幹を使ったウォーキング”を紹介したい。そもそも、かっこよく見える理想のウォーキングとはどのようなものだろうか。

写真1◎ 体幹を使った理想の歩き方
[画像のクリックで拡大表示]
基本は、腕を後ろに引く際に肩甲骨をしっかり動かし(3)、片足が着地すると同時に、その足側の骨盤が前方に出るように意識しながら、体重を移動すること(4)。常に体の中心軸が少し前傾するよう心掛ける。

 金さんによると、3つのポイントがあるという(写真1)。1つ目は「腕の振り方」だ。ウォーキングの時に、腕を大きく前に振る人がいるが、「体幹ウォーキング」では、腕は後ろに引くことが鉄則。その際、腕を動かすだけでなく、肩甲骨をしっかり動かすように意識することが大事だという(写真1-(3))。

 2つ目は「体重移動」だ。片足が着地すると同時に、その片足の側の骨盤が素早く前方に出るように意識しよう(写真1-(3)→(4))。スムーズに体重が移動すれば、ムダのない歩き方になる。

 3つ目は「体の軸」だ。頭のてっぺんから足の裏まで1本の軸が通っているようにイメージしてみよう。その軸をほんの少しだけ前傾になるよう意識する(写真1-(5))。すると、着地時の衝撃を体幹で受け止めやすく、体がスムーズに前方へ移動できる。効率的に体重移動できれば、余計な部位に力が入らないため、長時間歩いても疲れにくくなるのだ。

 「これらの3つのポイントをふまえた歩き方と、自分の現状の歩き方を比較してみましょう。その違いを修正していくのが、『体幹ウォーキング』をマスターする近道です」と金さんはアドバイスする。

肩甲骨を寄せて腕を引く

 ここからは、“体幹ウォーキング”を実践するためのコツを大きく2つ紹介したい。まずは体幹を使った「腕振り」から。基本の姿勢を作るために、肩甲骨を背骨に向けて寄せてみよう(写真2)。すると自然に胸が開き、背筋がスッと伸びる。次に、その姿勢のまま腕を後ろに引いてみる(写真3)。引いた側の肩甲骨がしっかり動いているのを感じられればOKだ。

写真2◎ 肩甲骨を背骨に向けて寄せた姿勢を取る
肩甲骨を寄せていない状態
肩甲骨を寄せた状態
写真3◎ 肩甲骨を寄せた姿勢から腕を引く

 その時、肩が上がったり、肩甲骨の動きが固かったりする人は、肩に力が入っている。あるいは、肩甲骨の可動域が狭い可能性がある。腕振りを始める前に、「肩甲骨を寄せるエクササイズ」(写真4)を試してみるのがお薦めだ。

 そのエクササイズとは、顔を真っすぐ前に向けて立ち、肩の力を抜いてリラックスしながら立つ。次にバンザイをするように左右の腕を伸ばして上げてみよう。この時、腕が顔より前方にならないように意識してほしい。次に左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす。肩甲骨を背骨に寄せるように意識するのがポイントだという。

写真4◎ 肩甲骨を寄せるエクササイズ
(1)肩の力を抜いてリラックスしながら立ち、バンザイをするように左右の腕を伸ばす。
(2)左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす。

骨盤を前傾させて歩幅を広げる

 肩甲骨を使った腕振りができれば、次は「骨盤」だ。歩く時に骨盤を意識している人は、あまりいないのではないだろうか。骨盤とは背骨と大腿骨(太ももの骨)をつないでいる骨で、上半身と下半身をつなぐ役割を担う。

 「骨盤の動きが固いと上半身と下半身がうまく連動せず、動きがバラバラになります。股関節から下だけを動かして歩く人がいますが、それは骨盤がうまく使えていない証拠。歩幅が狭くなり、足腰に負担がかかってしまいます」と金さんは話す。

 骨盤をうまく使って足腰の負担を減らすには、「骨盤を前傾させる」ことがポイントだそう(写真5)。しかし、「骨盤を前傾させる」と言われても、イメージしにくい人は多いはず。そこで丹田(へそから4~5㎝程度下の部位)に力を入れてみよう(写真6)。

写真5◎ 骨盤を前傾させた姿勢
足を肩幅に開き、肩の力を抜いてリラックスして立つ。次にお腹に力を入れて、お尻を引き上げるイメージで骨盤を前傾させる。
写真6◎ 丹田の位置
へそから4~5㎝程度下の部位。人間にとって、体の重心に当たる。

 丹田に力を入れると、体が安定するので誰かがあなたの体を押しても倒れにくくなる。重心を安定させて、お尻を後ろに引き上げるようにイメージすれば、骨盤は自然に前傾する。その際に注意したいのは、お腹を突き出さないこと。腹筋の弱い人が無理に骨盤を前傾させようとすると、お腹が突き出て腰が反りすぎてしまう。腹筋に適度な力を入れ、腰が反りすぎないようにしよう。

 「骨盤を前傾させられれば、無理に骨盤を動かそうとしなくても、自然に歩幅が広がり、ダイナミックに歩くことができます。骨盤の部分も脚だと思って歩くといいでしょう。また、肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなります」(写真7)。

写真7◎ 骨盤を前傾させながら手を振る
肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなる。

 骨盤の動きが悪い人は、骨盤周りの筋肉をほぐすようなエクササイズ(写真8)を試してみるといいと金さん。1つは「骨盤回し」だ。手を腰にあて、骨盤をグルグル回すだけの簡単な運動だが、骨盤周りの筋肉がほぐれる。ポイントは、頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識すること。

写真8◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ(1) 「骨盤回し」
[画像のクリックで拡大表示]
足を肩幅程度に開き、リラックスして立つ(1)。次に手を腰にあて、骨盤をグルグル回す(2~5)。頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識する。

 もう1つは「骨盤足踏み」(写真9)。骨盤を使ってその場で足踏みをするだけの運動だ。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げるようにイメージしてみよう。

写真9◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ (2)「骨盤足踏み」
[画像のクリックで拡大表示]
骨盤を使って、その場で足踏みをする。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げる。

 今回は、「体幹を使った腕振り」と「骨盤を前傾させる」の2点のイメージがつかめればOK。この基本姿勢を普段から意識するだけでも、あなたの歩く姿は劇的に変わるはずだ。

 次回は、日常生活で固くなった体をほぐし、体幹ウォーキングがしやすくなるための準備体操「体幹エクササイズ」を紹介していこう。

(撮影:村田わかな)

金哲彦(きん てつひこ)さん
プロ・ランニングコーチ
金哲彦(きん てつひこ)さん 1964年生まれ。早稲田大学在籍時に箱根駅伝で4年連続で山登りコースの5区を担当し、区間賞を2度獲得した。現在は、五輪出場選手向けのランニング指導から、一般向けのウォーキング指導まで、幅広い層に向けたコーチングを行っている。駅伝やマラソンの解説者としても活躍している。