日経グッデイ

金哲彦式ウォーキング術 目指せマイナス10歳ボディ!

階段を使えば体幹ウォーキングは“筋トレ”になる!

ヒップの筋肉で体を持ち上げ、負荷をかける

 高島三幸=ライター

歩くだけで体が引き締まり、若々しさを取り戻せる「体幹ウォーキング」。プロ・ランニングコーチの金哲彦さんの指導のもと、体幹を動かすために必要な筋肉のほぐし方や使い方を学びながら、体幹ウォーキングのメソッドを習得してきた。今回からは、体幹ウォーキングを日常生活に積極的に取り入れ、歩くだけで「筋トレ」にできる方法をご紹介しよう。

 これまで、体幹ウォーキングをマスターするために必要な骨格筋のストレッチや動かし方を皮切りに、メソッドの主軸となる「腕振り」「骨盤」「着地」「重心移動」といった4つのポイントを学んできた。本連載が始まって以来、体幹ウォーキングにチャレンジしてきた読者の中には、「体が引き締まってきた」「歩くことが気持ちいい」と実感しはじめた人も多いのではないだろうか。

 そこで今回からは、これまでにマスターした体幹ウォーキングを日常生活で活用したトレーニング方法をご紹介しよう。「まとまった時間を運動に割けない」といった忙しいビジネスパーソンの悩みにも応えられる、歩くだけで筋トレになる “一石二鳥”の方法だ。

ヒップの筋肉を使って体を引き上げるように
骨盤を左右に回旋させた動力で片脚を引き上げ、階段の面に脚をのせる。ヒップに力を入れて、着地させた足裏でぐっと地面を踏み込むと、膝が伸びて上体が骨盤の真上に乗る。一歩ずつヒップを使って上るので、ヒップアップ効果が期待できる。
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骨盤を左右に回旋する動きがスムーズにできれば、自然と脚が前に出るので、“省エネ”で上れるようになる。普段、地下鉄の階段などを上っても疲れにくくなる。
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 「体幹ウォーキングの効果をより高めるためには、普段の歩き方から意識を変えることも大事です。わざわざトレーニングウエアに着替えて歩く時間を作ったり、スポーツクラブに通って筋トレをしたりしなくても、日常で動き回るときに体幹ウォーキングを心がけていればいい。つらい、面倒だと思いながら始めた“続かない筋トレ”に励むぐらいならば、体幹ウォーキングを生活習慣にして、それ自体をトレーニングにしてしまう。例えば、駅や社内などの『階段』は、格好のトレーニング場所です。生活環境の中に『坂道』があれば、これも積極的に活用していきます」とプロ・ランニングコーチの金哲彦さんは言う。

階段を上るときはお尻の筋肉で体を持ち上げるように

 体幹ウォーキングを使ったトレーニングの第1回目は、日々利用する機会が多い「階段」を使った方法をご紹介しよう。「上り」は筋肉に負荷をかける、「下り」は脚をリズミカルにく動かす(さばく)ための格好のトレーニングになる。

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太ももの前側の筋肉を使って脚を引き上げるではなく、体幹ウォーキングの基本となる骨盤の左右の回旋を使って脚を振り上げるようにしよう。

 「これまで学んだ『腕をしっかり後ろに引く』『骨盤を左右に回旋した動力で脚を引き上げる』というポイントに加えて、階段を上るときには、ヒップに力を入れて足裏で階段の面をぐっと踏み込むこと。すると、膝が伸びて上体が骨盤の真上に乗り、体の軸が真っすぐに保てます。体幹を使うだけではなく、一段ずつ上るたびにヒップにある大殿筋(だいでんきん)を使うため、ヒップアップ効果も期待できます。大きな筋肉が鍛えられるため、体の代謝アップにもつながります」(金さん)。

階段を上るときは「ヒップ」の筋肉を使う
ヒップにある「大殿筋(だいでんきん)」を効果的に使うと、太もも裏側にある「ハムストリング」も連動する。脚部から腰背部にかけてつらなる筋肉群は、骨盤の前後の柔軟性に影響している。一方、太もも前側の筋肉を使うと、腰が抜けやすくする。
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顔を下に向けるのはNG

 階段を上るときは、顔の向きにも注意しよう。顔を下に向けてしまうと、背骨の形状から猫背気味になりやすく、体の軸をまっすぐに保てない。スマホを眺めながら階段を上る姿はその典型的な例だ。「顔は斜め下から正面ぐらいに向けて上ります。階段でつまずかないように注意しながら、平らな道で体幹ウォーキングを行うのと同じくリズミカルに脚を繰り出し、ヒップの筋肉で体を持ち上げるように心がけましょう」(金さん)。階段では脚の動かし方に加えて、ヒップの筋肉にまで意識を向けておけば、足腰が鍛えられていくことが日増しに実感できるはずだ。


 一方、階段を上る際によく見かけるNG例は、「階段に脚をのせる度に、膝を曲げ、さらに太ももの前部の筋肉(大腿四頭筋)を使って体を持ち上げること」だと金さんの指摘する。一見すると、膝をバネ代わりにしながら、脚部全体を使っているようだが、「膝を曲げ伸ばしすると腰が引けてしまい、太ももの前側の筋肉ばかり使うことになる。脚に負荷をかけるためのトレーニングにはなるかもしれませんが、すぐに疲れるうえに、体幹もしっかり使えません」(金さん)。

 階段を上る際には、先に上げた脚に力を入れて体を持ち上げるのではなく、後ろに残した脚の大殿筋と体幹の力を生かして上方に荷重を移動させる。この意識を忘れないようにすることが大切だ。

膝を曲げ、太ももの前側を使って階段を上るNG例
腰が引けた状態で上ると、着地の時に膝が曲がる。すると、太ももの前部を使って体を持ち上げようとするため、上体が軸の真上に乗らず、体幹をしっかり使うことができない。
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下りはリズミカルに脚を動かし、俊敏性を高める

 一方、階段を下るときは、脚の動かし方(さばき方)がポイントになる。

 「下りは、体幹ウォーキングを活用するというよりは、脚をリズミカルに動かす(さばく)、つまり俊敏性を高める意識をしておくといいでしょう。ここでも一段ずつ膝を曲げて“ドスン、ドスン”と下りるのではなく、“スタ、スタ、スタ…”と、軽やかにリズムよく下りていくイメージを持ってください」と金さん。

下りはリズミカルに脚を動かす
下りは、脚の動かすスピード(ピッチ)を上げる意識を。小刻みに骨盤を左右に回旋させ、その動力で脚を左右交互に素早く動かす。着地は足裏の土踏まずから前を使って、“スタ、スタ、スタ”とリズミカルに下りる。
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NG例
腰が引けた状態で、一段ずつ足裏全体で地面に着地しながら“ドスン、ドスン”と下りない。下りるたびに着地した方のひざが曲がって全体重が乗るため、ひざに痛みが生じやすくなる。
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 ポイントは、骨盤を小刻みに左右へ回旋させて、脚を素早く振り出しながら、土踏まずより前側を着地させて下りていくこと。ここでも姿勢は前屈みにならないように気をつけ、体の軸は真っすぐ伸ばしたままで下りていく。リズミカルな足さばきでスムーズな荷重の移動ができれば、一歩一歩、脚を動かすたびに強いブレーキをかける必要がなくなり、脚への負担も軽減できる。

 このように、階段を使った体幹ウォーキングは、生活の中で簡単できるトレーニングになる。

通勤はできるだけリュックサックの活用を

 もしも、通勤で手さげ式のビジネスバックやショルダーバックを使っている人、同様に、足元は革靴、ハイヒールという人は、どうしても正しい体幹ウォーキングを実践しにくい。「できれば、カバンはリュックサック、シューズは面倒でもウォーキングに向いたもの選ぶほうがいい」(金さん)。

 オフィス内の移動はエレベーターから階段に変え、電車の乗り換えで長いエスカレーターがあれば迷わずに階段を選択する。自身のライフスタイルの中で“階段トレ”を取り入れられる場所は、意外に多いものだ。それでもオンビジネスのときにはどうしてもできない人は、休みの日に体幹ウォーキングを行うなかで、積極的に階段の上り・下りを加えてみてはいかがだろうか。

 次回は、「坂道」を使った体幹ウォーキングについて紹介したい。

(写真:竹井俊晴/イラスト:三弓素青)

金哲彦(きん てつひこ)さん
プロ・ランニングコーチ
金哲彦(きん てつひこ)さん 1964年生まれ。早稲田大学在籍時に箱根駅伝で4年連続で山登りコースの5区を担当し、区間賞を2度獲得した。現在は、五輪出場選手向けのランニング指導から、一般向けのウォーキング指導まで、幅広い層に向けたコーチングを行っている。駅伝やマラソンの解説者としても活躍している。