日経グッデイ

金哲彦式ウォーキング術 目指せマイナス10歳ボディ!

体幹ウォーキングは足裏の重心移動で完成する

クツのかかとが片減りする人は「歩き癖」に注意

 高島三幸=ライター

体幹を効果的に使うことで楽に歩くことができ、体つきから若々しくなる「体幹ウォーキング」。プロ・ランニングコーチの金哲彦さんが提唱する「体幹ウォーキング」の理論は「腕振り」「骨盤回旋」「着地」「重心移動」の4つの要素から構成される。今回は、その集大成となる「重心移動」をマスターして、体幹ウォーキングを完成させよう。

「今回の重心移動で、体幹ウォークの総仕上げをしていきましょう。ひと通りマスターしたら、自分の歩き方として身に付くまで、繰り返して続けることが大切です」
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 「体幹ウォーキング」の実践編もいよいよ大詰め。今回は、体幹ウォーキングをマスターするために必要な4つの要素のうち、最後のポイントである「重心移動」を紹介していきたい。

 重心移動をスムーズに行うコツは、「足裏の使い方」にある。「そもそも足裏のメカニズムは、つま先を正面に向けてかかとの真ん中を地面に接地させたら、足裏の『外側』『拇指球(ぼしきゅう)』の順に、重心が瞬時に移動していくようにできている。こうした本来のメカニズムを上手に使うことが今回のレッスンの狙いです」とプロ・ランニングコーチの金哲彦さんは解説する。

 足裏には、「アーチ」と呼ばれる「外側の縦アーチ」「内側の縦アーチ」「横アーチ」の3つからなる機能がある(イラスト参照)。ちょうど「おわん」をかぶせたような状態で、互いを支えながら、足を蹴りだす力(バネ)を生んだり、地面や体からのの衝撃の緩和(クッション)を担ったりしている。

足裏には3つの「アーチ」がある
足裏にあるアーチは、「おわん」を逆さにしたような骨格と筋肉の構造。3つのうち、「内側の縦アーチ」が下がった状態は、いわゆる「偏平足」と呼ばれる。
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 しかし、上半身をアンバランスに使っていたり、骨盤や脚部のゆがみが加わったりすると、足裏の「内側の縦アーチ」「外側の縦アーチ」のどちらかだけに負荷がかかる。長く歩き続けると、土踏まずに痛みが出たり、歩き疲れを起こしやすいのはこのためだ。そこで、体幹ウォーキングでは、「かかとの真ん中 」「足裏の外側」「拇指球」の順番に重心を移す、本来のメカニズムを引き出して、特定のアーチにかかる負荷を分散させていくのだ。

重心は「かかと」「足裏の外側」「拇指球」の順に移る

 まず着地する際、初めに地面に接地するのが「かかと」だ。これまで学んできたように、「腕振り」では肩甲骨を動かして腕をしっかり後ろに向けて引き、「骨盤」は左右に回旋させながら脚を前に振り出していく。これでつま先は自然に斜め上を向き、かかとで地面を捉えられるようになる。「かかとは、内側や外側からではなく、真ん中から地面につくことが大切です。ただし、かかとに意識が向き過ぎると、かえってつま先がピンと上に向いたまま、かかとで地面を強く叩くようについてしまいます。脚を自然に動かす中で、かかとのつき方をちょっとだけ気をつけましょう」(金さん)

重心は「かかと」「足裏の外側」「拇指球」の順に移る
かかとの真ん中から着地したら、重心は「足裏の外側」「拇指球」という順で、素早く移っていく。「足裏の感覚を意識し過ぎると、かえってぎこちなくなるため、着地するときのかかと位置だけに気をつけましょう」
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 かかとが地面に接地したら、次は「足裏の外側」で地面を捉えていく。そのとき、前回の「着地」(疲れにくく、楽に歩ける「着地」のコツ )のメソッドで紹介したように、背すじをピンと伸ばした状態を保ちながら、脚の真上にすばやく上半身を乗せること。これで、かかとに乗せた重心が自然に足の外側へと移る。

 最後は、足裏の外側から親指の付け根の下にある膨らんだ部分「拇指球」、そして「親指」へと重心を移していく。「拇指球でしっかり地面を上から押し込むイメージで歩くと、スムーズに重心が移っていくはずです」(金さん)。一連の動きが足裏でスムーズに繰り返されれば、体の上下動が少ない、流れるような美しいフォームになる。これこそが、「体幹からの力」と「地面から受ける力」を効率良く使うことを目的とする体幹ウォーキングの真骨頂ともいえる。

 「これまでに紹介した『腕振り』『骨盤』『着地』をマスターしていれば、重心移動は自然に足裏で再現されているはずです。重心移動に気をとられて足裏の感覚ばかりに意識が向くと、かえって体全体の動きがぎこちなくなります。ときおり足裏に注意を向けるぐらいにして、『足裏が痛くなる』『歩くと疲れる』と感じるようならば、腕の振り方や骨盤の回旋などの上体の使い方から見直してみる。例えば、骨盤を左右に回旋させるときに、どちらかに差があれば、かかとの真ん中から自然に着地させることはできません」(金さん)

クツ底の減り方で歩き癖を判断できる

 一方、重心移動における足裏の使い方のNG例は、かかとの「外側」や「内側」での接地。例えば、かかとの外側で接地したら、足裏の外側だけ、あるいは内側だけを使って重心を移動している人が少なくないと金さんは指摘する(イラスト参照)。

重心が内側、または外側に抜ける癖が出やすい
かかとから「内側」だけを通って拇指球へと重心が移る(イラスト左)、反対に「外側」だけを通り、拇指球に重心が乗らずに小指で地面を押してしまう(イラスト右)人は、脚の筋肉の使い方に偏りがあり、ゆがみといったトラブルを抱えている可能性が高い。
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 「重心が外側だけしか通らない人は、脚の外側にある筋肉ばかりに負荷がかかる。反対に、内側だけの人は、内側の筋肉ばかり使うことになる。こうした『歩き癖』を意識して日常からも改善していかないと、足の筋肉のつき方が左右で違ってきたり、ゆがみといったトラブルを強めたりする原因になりやすい」(金さん)

 自分の歩き癖がわかりづらいという人は、「靴のカカトの減り方が左右で違う」「外側だけよく減る」といった普段から履いているクツからでも判断できる。心当たりがある人は、ぜひ、体幹ウォーキングを日常の歩き方から取り入れてみよう。

 さらに、足裏全体をベタベタと着地させてしまう、いわゆる「ベタ足歩き」もNGの歩き方だ。

 着地するたびに上体と地面から一気に加わる衝撃を和らげようとして腰と膝が曲がる。加えて、足の真上に体を真っすぐに乗せられず、骨盤がうまく使えなくなり、臀部や腹筋の力が抜けた歩き方になる。結果的に、脚は大きく動かせないために、腰と脚とをつなぐ体幹の大切な筋肉「腸腰筋(ちょうようきん)」を衰えやすくする。つまり、体幹ウォーキングで目指している、歩くだけで「引き締め効果」「ダイエット効果」を得るといった“ご利益”も薄れる訳だ。

「体幹ウォークならば長き続けても疲れない」

 「重心移動が、かかとの真ん中、足裏の外側、拇指球といった順でスムーズにできて初めて、ハムストリングスや下腿三頭筋(かたいさんうときん)といった脚部の裏側ある筋肉群も動かせるようになる。脚全体がバランスよく効果的に動かせるようになれば、歩幅もさらに広くて力強くなります」(金さん)。そのほかにも、地面からの衝撃を受け止める「アーチ」がまんべんなく鍛えられるために、長く歩き続けても疲れにくくなり、「偏平足」「外反母趾」「浮き指」といった、脚のトラブルを防ぐことにもつながるのだという。

 「かかと」「外側」「拇指球」という理想の重心移動ができていると、一歩踏み込んだ時にしっかり膝が伸びて、上半身が体の真上にきちんと乗る。腰が落ちないため、上下動の少ない、流れるような美しい歩き方になる。

「かかと」「外側」「拇指球」という理想の重心移動ができると、一歩踏み込んだ時にしっかり膝が伸びて、上半身が体の真上にきちんと乗る。腰が落ちないため、上下動の少ない、流れるような美しい歩き方になる。
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 「そもそも人の歩き方というのは、身に付いた癖や習慣が強く出るものです。これまでに紹介してきた体幹ウォーキングのメソッドを繰り返して、ぜひ、体に覚え込ませましょう。根気強く続ければいつか習慣になり、意識しなくても普段の歩き方が『体幹ウォーキング』になっているはずです」と金さんはアドバイスする。日常から体幹ウォーキングを心がけていれば、なにもつらい運動や苦しいトレーニングに励まなくても、「マイナス10歳ボディ」は手に入れたのも同然なのだ!

コラム 体幹ウォーキング「腕振り」「骨盤」「着地」のおさらい

 これまで紹介してきた「腕振り」「骨盤」「着地」が正しく身についているか、簡単におさらいをしておこう。

 まず1つ目は、ウォーキングの動きの始点となる「腕振り」 (腕は前に振るのではなく、後ろに深く引いて歩く )だ。肩甲骨同士をしっかり開閉させて、腕を後ろに向けて大きく引こう。おさらい項目は下記の3つだ。きちんとマスターできているか、歩きながらチェックしていこう。

チェックポイント

 腕振りは、1回1回しっかり後ろに引けているか。

 腕を後ろに引いた時、引いた側の肩甲骨がきちんと体の中央へと動いているか。

 肩に余計な力が入っておらず、リラックスした状態で腕を振れているか。

 2つ目は「骨盤」(疲れにくく、楽に歩ける「着地」のコツ )だ。腕振りで肩甲骨を動かしながら“スイッチ”を入れた体幹の力を、下半身に連動させる役割を果たす。腕の振りに合わせて、骨盤を少し前に傾けながら左右にスムーズに回旋しているか。骨盤から脚を振り出すイメージで歩ければOK。

チェックポイント

 丹田(へそから4~5cm程度下の部位)に力が入っているか。

 骨盤は自然に前傾できているか(尻を後ろに引き上げるようにイメージできるか)。その際、お腹は突き出ていないか。

 肩甲骨の動きに連動して、骨盤が左右ともにスムーズに回旋できているか。

 骨盤の回旋に連動して、脚が一緒に前に振り出せているか。

 3つ目は「着地」(疲れにくく、楽に歩ける「着地」のコツ )だ。地面からの反発力を、前に進むための推進力に代える。足が地面についたらつま先は正面を向け、足の真上にすばやく体を乗せること。背すじ、膝を伸ばすこと。

チェックポイント

 着地した際、背すじがピンと伸びて体の軸がまっすぐ保てているか。

 着地した際、上半身(重心)は、脚の真上に自然と乗るように意識できているか。

 つま先とひざはまっすぐに正面を向いているか。

次回からは、「体幹ウォーキング」をベースに、ワンランクアップさせたトレーニング編をご紹介する。

(写真:竹井俊晴/イラスト:三弓素青)

金哲彦(きん てつひこ)さん
プロ・ランニングコーチ
金哲彦(きん てつひこ)さん 1964年生まれ。早稲田大学在籍時に箱根駅伝で4年連続で山登りコースの5区を担当し、区間賞を2度獲得した。現在は、五輪出場選手向けのランニング指導から、一般向けのウォーキング指導まで、幅広い層に向けたコーチングを行っている。駅伝やマラソンの解説者としても活躍している。