生食、調理、美容にもいい万能オイル
中でも、食用、美容用ともに特に人気なのが、精製されていない「バージン・ココナッツオイル」だ。甘い香りがする、無精製・無添加・非加熱抽出のバージン・ココナッツオイルは、免疫力を高めるとされる「ラウリン酸」をはじめ、豊富なミネラルを含むため、アンチエイジングやデトックスの効果を高めると国民的な人気に。
そのほかにも整腸作用や肌に潤いを与える効果など、健康と美容にスペシャルなオイルとして、白人社会にも知られるようになり、再び一般のスーパーや健康食品店の棚に並ぶようになった。
ココナッツオイルを食用で使うときは、コーヒーや紅茶など温かい飲み物に入れたり、バターの代わりにトーストに乗せるのがポピュラーだ。スプーンでそのまま食べてもよい。また、加熱による酸化にも強く、炒め物や揚げ物などの料理に使う家庭も多い。調理中はココナッツの甘い香りがほのかに漂うため、少しだけバカンス気分に浸りたいときに…といった使い方もできる。
国民的な肥満増加をココナッツオイルが救う?
ところで、OECDの報告書(2014年版)によれば、先進国での「肥満度」は、ニュージーランドが米国に次ぐ第2位。BMI値(体格指数)が用いられているために、必ずしも肥満傾向にあるかどうかは定かではないが、一方でこの国の「ファストフードの購入増加率」は世界第4位ということも見逃せない事実だ。
そもそも150年前に白人がこの地に入植した頃の写真を見ると、原住民だったマオリ族は日本人にも似た体形で、蒙古斑(もうこはん)を持ち、食生活も魚介類や野菜、果実を中心とする「日本食」に近いスタイルだった。
しかし、近代化の波とともに西側諸国から安価な植物油や動物脂(ラード)、加工食品、ファストフードが簡単に手に入るようになり、ココナッツをはじめとする伝統的な料理を放棄してきたことが、太平洋諸島に暮らす人々の肥満問題を深刻化させてきたとの専門家の意見もある。
サモア、トンガ、ニウエ、クック・アイランドなど、ココナッツの名産地に取り囲まれたニュージーランド。世界的にココナッツオイルが人気を集めている潮流に加えて、今もココナッツがポリネシア・メラネシアの人たちの文化と健康に欠かせない存在であるといった再認識が、現地でのブームを後押ししているのかもしれない。