12世紀から続く石けん、野菜や果物を使ったケアも
ビオ商品に限らず、パリのマダムたちのナチュラル志向も最近ますます進んでいるようだ。
オリーブオイルで作られた昔ながらの「マルセイユ石けん」(フランスでは皮膚科医も皮膚トラブルの時はこの石けんのみの使用を薦める)や、12世紀から続くオリーブオイルとローリエで作られた「アレプ(Alep)石けん」、さらにパックにはミネラルを含んだ土を太陽で乾かした緑色のピュアな粘土(Argile verte/アルジル ベルトゥ)といった根強い愛用者が多い商品も再び注目されている。女性には欠かせない化粧水は添加物を含んだものを使う人は少なく、日本でもおなじみのブランド「エヴィアン」や「アヴェンヌ」の水の霧スプレーを常用し、モイスチャークリーム(保湿用化粧品)を軽く塗るだけのスキンケアが多くなってきた。
というわけで、マダムたちの声を街で聞いてみた。
二児の母で保育園に勤務するイザベルさん(45歳)は、「特に何もしないわ。でも、パリの水は硬水で石灰が含まれていて肌に良くないから、自宅に水道水を軟らかくする装置を付けているの。これだけで肌も髪も柔らかいままよ」と、やはり“シンプル&ナチュナル“志向。
医療系フリージャーナリストで一児の母でもあるローランスさん(51歳)は、「私は皮膚が薄いのでスキンケアは必須。でも、アルガンやラべンダーのビオのオイルやクリームを常用しています。パックには旬の野菜や果物、イチゴ、キュウリ、ビートをスライスやピューレにして使い、月に一回は“海の塩“でゴマージュ(優しくマッサージをしながら皮膚表面の古い角質を取り除く美容法)しています」と、その透き通るような肌の秘密を語ってくれた。
男性の意識は「白髪が増えると貫禄がつく」
一方、アンチエイジングを本気で意識し始める40代以降のパリの女性の多くが、ジム、ジョギング、バレエ、ヨガ、サイクリングといった運動を少なくとも週に一度は行っていることも興味深い。
「週末に近くのスタジアムを走ることがアンチエイジングケアかな。スキンケアはモイスチャークリームを朝晩、洗顔後に塗るくらい」と言うのは、ギリシャ語教師のマリアさん(48歳)。モデルのようなスタイルと笑顔の美しい彼女は、なんと4人の子どもを持つ母!「年を取ればそれだけ賢くなって、高いのに効果が実感できない化粧品にはもう手を出さないわ」と笑う。
このように、パリの女性の多くは鏡を覗き込んで額のしわの数を数えたり、ブランドのクリームをコレクションしたりすることにはあまり興味はないようだ(もちろん、すべての女性ではないが)。まして年を重ねた女性は「若い子のような初々しい可愛さ」など求めない。
なぜなら、これまでの生き方、そして今の生き方から醸し出される、体全体から発する“オーラ”の美しさ、今の自分のナチュラルな美しさこそが、年を重ねた女性の最大の魅力だと考えているからだ。“雰囲気美人”のマダムがパリに多いのは、きっとそのためだ。
ちなみに…。フランスの男性に日常でのアンチエイジング法について質問してみると、「健康のためにスポーツはするけど、アンチエイジングなんてまったく気にしないよ」という声ばかり。「白髪は増えたけれど、おかげで貫禄がついたでしょう」と、むしろ前向き。たしかに、ステッキさえオシャレな小道具のように持つ、素敵な年配の男性が多いのもパリらしさである。
美術館でアートを、劇場でバレエやコンサートを、ヴァカンスで広大は自然を…と、たくさんの美しいものに触れ、心と体でそれらを吸収し、気持ちよく体を動かし、恋をして(!)、そしてナチュラル&シンプルなケアで自分らしくいること。それが現代のパリの女性のアンチエイジング法だと言えるのではないだろうか。
