日経グッデイ

世界の健康 早耳ダイジェスト

【N.Y.発】ジュースを飲んで米国人が世界一健康になる!?

食事をジュースに置き換えてダイエットや不調解消の効果を高める

 太田あや=BIO ARTS NYC, INC.代表

体の解毒(デトックス)を促す専用ジュースバーが増加中

果物や野菜だけで作る「コールド・プレス・ジュース」が、ニューヨークで空前のブームになっている。専門のジュースパーやカフェなども増加中。体質や目的に応じたメニューも充実している。

 ヘルスコンシャスなニューヨーカーの間で、空前のブームになっているのが「ジューシング(Juicing)」だ。これは、3日間または1週間などの一定期間、野菜や果物のジュースだけを飲むデトックス(解毒)プログラムで、ダイエットや不定愁訴の改善を目的としたもの。「ジュース・クレンズ(Juice Cleanse)」とも呼ばれている。人間の生命活動の中で最も重労働な生理活動である“消化”の負担を減らし、細胞の新陳代謝に欠かせないビタミンやミネラルをたっぷりとることで、老廃物や有害物質の排せつを促し、体の代謝と栄養素を吸収する機能を回復させるとされる。

  ジュース・クレンズでは、主に「コールド・プレス・ジュース(Cold Pressed Juice)」と呼ばれるジュースを飲む。水を一切使わず、新鮮な野菜や果物だけを「低温低速圧搾方式」で絞る。機械の熱やかく拌などで食物のビタミンやミネラル、酵素などを損なうのを防げるとされ、ミキサーを使って食物繊維も丸ごとジュースにする「スムージー」よりも消化の負担が軽く、より早く確実なデトックス効果が得られるといわれる。

 とはいえ、毎回自宅でジュースを手作りするのは、多忙なニューヨーカーにとっては、なかなか難しい。そんなニーズに応えて、ニューヨークでは専門ジュースバーが急増し、各店舗が工夫を凝らしたメニューを提供している。

客の体質や目的に合わせたプログラムを提案

  コールド・プレス・ジュースは、ボトル1本に数キロの新鮮な野菜や果物を使うため、約5~10ドルと決して安くない。それでも継続する人が後を絶たないのは、およそ1000円ほどかかる1食の食事代を「コールド・プレス・ジュース」に置き換えている人が多いため。生活が不規則で多忙な30代、40代ビジネスパーソンでも手軽に取り入れられるうえに、ダイエットや不調改善の効果を実感しやすいからだ。

 マンハッタンで20店舗以上を展開する「ジュース・プレス」は、ローフード研究で知られるフレッド・ビスキィ博士がメニューを監修する本格派。100%オーガニックの素材を使い、75類のメニューがあり、毎日続けて飲んでも飽きない。体調や体質改善の目的に応じてブースター(ジンジャー、マカ、抹茶などのプラスアルファの栄養素)もブレンドできる。マネージャーのキムさんは「味にもこだわり、野菜嫌いの人でも一度飲んだら癖になる」と話す。

ローフード研究で有名なフレッド・ビスキィ博士がメニューを監修する「ジュース・プレス」。100%オーガニックの素材を使ったメニューはバリエーションが豊富。
「ウェルネス・コンシェルジェ」と呼ばれるスタッフが、目的やレベルに応じて一人ひとりにアドバイスをくれる「オーガニック・アベニュー」 。

 ジュース・クレンズの先駆けとして知られるのが「オーガニック・アベニュー」。店内では“ウェルネス・コンシェルジェ”と呼ばれるスタッフが常駐しており、客の体質や目的に合わせた個別プログラムを提案してくれる。

体内の老廃物が不調を引き起こす

 “精肉屋の娘”という個性的な名前のカフェ&ジュースバー「ブッチャーズ・ドーター」。「まるで肉屋が肉をさばくように、たっぷりの野菜や果物をさばいてジュースを作る」という意味が込められている。

 一方、ボトル詰めしたコールド・プレス・ジュースを製造販売するメーカーも次々と登場し、スーパーやデリでも気軽に買えるようになった。スターバックスがコールド・プレス・ジュースのブランドを手がけたことも拍車をかけた要因だ。

ブッチャーズ・ドーターのコールド・プレス・ジュース。レモングラスや梨、キュウリ、ショウガの入った「イースタン・プロミス(写真右)はクレンズ効果が高いとされる。ビーツ、ニンジン、ベリー類の入った「ルビー・イン・ザダスト」(写真左)は抗酸化作用が期待できる。価格はともに約10ドル。

 そもそも「何となく疲れが取れない」「気力が湧かない」、さらに「不眠」や「イライラ」といった不定愁訴は、体内の老廃物が原因とも考えられている。老廃物とは、食べものを消化しエネルギーが生成される際に生み出される不必要な物質、つまり体にとって“残りカス”のようなもの。加えて、食品添加物や農薬、環境汚染物質といった有害な物質も体内に取り込んでいる。こうした老廃物や有害物質を追い出す“解毒システム”が人間の体には備わっているが、日常的な過食や暴飲暴食などで内臓を酷使することで、現代人は排せつ力が弱まっているといわれている。

  ニューヨーカーの生活に定着しつつある「ジューシング」は、単なる健康ブームを超えて、米国人をいつか“世界一健康な国民”にする日が来るのかもしれない。

(文・写真:太田あや=BIO ARTS NYC, INC.代表)