2008年のリーマンショック以降、タイのGDP(国内総生産)は再びプラス基調に持ち直し、経済発展の中で社会が急激に様変わりしている。特に顕著なのが首都バンコクだ。都心近郊では、ショッピングモールが続々と誕生し、高層コンドミニアムがあちらこちらで建っている。また、道路を見渡せば、高級外国車を含む自家用車が増え、渋滞がよりひどくなっている。消費意欲が旺盛な中間層が増えて購買力が増したことを背景に、健康志向の一環としてゴルフ人気が高まりを見せている。
ゴルフ人気は「適度な運動」と「気軽さ」
10年前のバンコク市内には、例えばフィットネス・クラブは数える程しかなかった。しかし今や、高級アパートメントやコンドミニアムなどには必須の施設になっている。食のヘルシー志向も高まり、オーガニックの食材が増えたり、ヘルシーさが受けて日本食がブームになったりしている。
こうした消費市場を支えているのが、今も拡大している中間層の存在だ。シンガポールのメガバンク・DBSが発表した2013年の調査によれば、タイの人口6700万人に占める中間層はおよそ1700万人だとされる。消費意欲が旺盛な中間層の間で、昨今、人気が高まっているのがゴルフだ。あるベテラン・ゴルファーによれば、「ここ数年の印象ですが、ゴルフ場の混雑具合から考えるに、プレイヤーの人口が1.5~2倍ぐらいに増えているのではないか」と語る。タイ国内のゴルファー人口は推計100万人とされているが、2012年には日本の大手ゴルフクラブメーカーが市場に参入するなど、今後も拡大が期待されている。
健康志向の一環としてゴルフに人気が集まる理由は、「適度な運動」と「気軽さ」にあると考えられる。
実際にゴルファーたちに聞いてみると、「健康のために何かスポーツをしたかったが、激しく動くスポーツだと反対に体を壊しそうで避けたかった。でも、ゴルフならちょうどいいと思った」(50代男性)、「本当はランニングをしたかったが、クルマの排気ガスがひどく、市内で走るのが嫌だった。ゴルフが最も身近で出来そうなスポーツだった」(40代男性)といった理由が挙がる。
初心者に“優しい”システムでゴルフを始めやすい
特にバンコクでは、ゴルフコースが近郊に多いことも、中間層たちに人気を集める要因であろう。
中心部からクルマで1時間圏内に約40ものゴルフ場がある(タイ国内では約170コース)。そのうち、およそ3割は、ブームを背景にこの10年でオープンしたもの。近郊のコースは、午前6時から夜は11時までオープンしているため、仕事の前後にハーフプレイを楽しむ人も少なくない。ゴルフで1日を費やさずに済み、日中の暑さも避けられる。そのうえ野外でのエクササイズにもなるとの理由から、ゴルフは健康志向を満たすスポーツとして良いこと尽くめな訳だ。ちなみに、ラウンドフィーは1000~3000バーツ(日本円で約3600~1万800円)ぐらいだ。
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