大自然に囲まれたハワイ。青い空にヤシの木が揺れる南島の陽気な雰囲気から連想されるエクササイズといえば、サーフィン、フラダンス、ヨガなどであろうか。そんなハワイにおいて、ロードバイクやマウンテンバイクといった「自転車」が、マウイ島とオアフ島、ラナイ島を中心に新しいエクササイズとしてブームになっている。
トライアスロン大会が伝えるバイクの魅力
ハワイにおけるバイクブームの背景にあるのは、数々開かれる世界的なトライアスロン大会の存在だ。
ハワイ島の「IRONMAN」、マウイ島の「XTERRA」など、ハワイはトライアスロンの世界大会の舞台になっており、大会シーズンを迎える10月が近くなると、バイクのトレーニングに入るアスリートたちが世界中から詰めかける。あちらこちらでバイクを走らせるアスリートたちの姿は、すっかり季節の風物詩だ。
また、ラナイ島では、2009年に新設されたトライアスロン大会「TRILANAI」が、観戦客を呼び込み観光振興のきっかけになった。同時に、地元のスポーツ団体や学校、職場ぐるみで大会参加を促したり、地域ボランティアがイベントに関わったりしてきたことで、住民にとってもバイクがより身近になった。
バイクブームを下支えする行政の取り組みも積極的だ。特にオアフ島やマウイ島では、新しい道にバイク用のレーンを整備したり、既存の道路にレーンを追加したりするなど、バイクで快適に走れる環境づくりが急速に進みつつある。
健康習慣の一環として行政がブームをサポート
ハワイ各島の中でも、健康習慣としてのサイクリングのサポートに熱心なのが、「XTERRA」(マウイ島)、「TRILANAI」(ラナイ島)という2つのトライアスロン大会が開かれるマウイ郡だ。マウイ郡長を筆頭に、学校教員やコミュニティーメンバーなどで組織する「食生活&健康習慣改善連合」が音頭を取り、2008年以降、バイク用のレーンを拡大するなど、安全に自転車に乗れる環境作りを推し進めてきた。そのかいあって、健康のために学校や職場にバイクで通う人たちが今も増え続けている。
地元のバイクショップのスタッフは、「特にここ数年の人気をきっかけに、サイクリンググループのような団体を組織したり、そうした団体が一般道路を走るときのルールや注意点を教えるワークショップを行ったり、週末にサイクリング大会を催すなど、楽しくバイクに乗ることを目的にした地域活動が広がっています」と語る。
マウイ郡の高原地帯は、各島の中でも、気候と自然環境がトレーニングに適しているといわれる。年間を通じてバイクトレーニングをするアスリートたちの姿が多く、大会出場に向けた調整のために島内に滞在する期間も長い。
また、そもそもバイクトレーニングは、1970年代にウィンドサーフィンが盛んだったマウイ島に集まったサーファーたちの間で、足腰の筋力を強化する「陸上トレーニング」として取り入れられていた経緯もある。もともと、ブームが生まれる下地はあったのだ。
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