82歳の義父が白内障の手術を受けることになりました。高齢なので日帰り手術ではなく、2泊3日の入院で、1週間空けて両眼の手術をすることになったのです。
妻が義父に付き添って手術の説明を受けたのですが、手術が決まったあとは、“入院予約センター”というところで事務的な手続きになったそうです。そこで対応してくれた事務職員が「手術日の希望はありますか」と聞いたので、「できれば妹と交代で父に付き添える日にしたいと思います」と伝え、妻が義妹と連絡を取って互いの都合が合う日を提示しました。
そして日程が決まったのですが、そのあとで「当院の眼科では、患者さんが入院日を指定された場合は、個室に入っていただくことに決まっていて、1日2万円+消費税の差額ベッド料が発生します」と言われたというのです。病院が決めた日に入院する場合は、差額ベッド料のかからない大部屋に入院が可能なのだそうです。
その病院では、義父は眼科以外にも複数の科にかかっていて、これからも気持ちよくかかり続けたい―妻はとっさにその想いが先に立ち、「差額ベッド料はお支払いします」と答えて帰ってきたらしいのです。
その話を聞いた私はどうしても納得がいきません。義父や妻に「そんな条件があるなら、入院日を決める前に提示すべきだ。決まってからほかの選択肢があったと伝えるなんて、まるで詐欺行為だ」と息巻いたのですが、2人は「これからもお世話になるのだから、ことを荒立てたくない」と消極的です。こんなやり方が認められているのでしょうか。
差額ベッド料は、基本的には患者が特別な療養環境を希望したとき、設備や料金が提示された病室のなかから患者が選び、料金が明示してある同意書にサインして入院した際に支払う金額です。同意書の提出がなかったり、治療上の必要で入院したりした場合には請求してはいけないことになっています。
ただ、ほかに空きベッドがない、いびきや認知症などでほかの患者の療養に支障を来すような場合は、懇切丁寧な説明のうえで“同意書にサイン”したら差額ベッド料を支払う契約を交わしたと判断されます。
このご相談の場合は、上記のような厚生労働省の請求基準に沿ったものではなく、その病院独自のルールに基づいて請求をしているようでした。そのため、何を根拠に決めたルールなのか、あらかじめ個室に入るか大部屋になるかの条件を説明する必要があるのではないか、といったポイントで病院側と話し合う余地はあると思います。また、患者側が「どうしてもこの日でないと入院できない」と主張したわけでもないのだとしたら、そもそも病院独自のルールから考えても再度入院日を調整する可能性もあるのではないかと思いました。
相談者は「私は納得できないのですが、義父と妻が交渉に前向きではないので、あまり私が強く主張できないのです。ただ、こういう場合、病院の言いなりになるしかないのかと疑問を覚えたので……。義父と妻ともう一度よく話し合って、今後の対応を決めようと思います」とおっしゃって、電話は切れました。
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