NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)では、1990年に活動を開始して以来、医療に関する電話相談を実施しています。これまで、5万件を超える相談に対応してきました。この連載では、プライバシーに配慮した上でCOMLの会報誌に掲載された相談内容と、COMLからのアドバイスをご紹介します(本記事はCOML会報誌2016年6月号からの転載です)。

私(60 歳・女性)は1カ月前に不正出血があり、婦人科クリニックを受診したところ、検査の結果、初期の子宮体がんと診断され、大学病院を紹介されました。紹介状を持って大学病院を受診すると、診察室に入る前に何やら文書を渡され、「治験に関する書類にも事前に署名して提出してください」と外来の看護師さんに言われたのです。私は言われたとおりにしないといけないと思い、何も考えず、署名して提出しました。
ところが帰宅して同居している娘(32歳)と息子(30歳)に話したら、「治験なんて、人体実験かもしれないのに簡単に受けたらダメだよ」「説明も受けずに同意を求めるなんてあり得ない」と猛反対されたのです。そこで翌日、大学病院に電話をかけて婦人科外来に回してもらい「昨日提出した同意書はいったん取りさげたいのですが…」と言うと、電話に出た看護師さんが「取りさげ? そんなことする人いませんよ。治験で最先端の治療が受けたくて大学病院を希望したんじゃないんですか!?」となじるように言われました。でも、私が「説明を受けてから考えないといけないと子どもたちに叱れまして…」と言うと、しぶしぶ取りさげることはドクターに伝えると言ってくれました。
2日後に検査結果と今後の手術を含めた治療方針の説明の予定になっています。しかし次回の予約の紙には、前回のドクターとは異なるドクターの名前が書いてあるのです。大学病院というところは、同じドクターが一貫して診てくれないのかと不安になってきています。また、何の説明もなく署名を求められたことで不信感が募り、このまま大学病院で治療を受けたら人体実験されるのではないかと不安です。看護師さんが言うように、大学病院は治験を受けることを覚悟して受診するのが当然なのでしょうか。もう取りさげる意思表示をしてしまったので、ドクターは熱心に診てくれないのではないかということも迷いの一つになっています。
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