私(42 歳・男性)は、数ヵ月前から頭痛が起きるようになり、気になって一度脳ドックを受けてみようと思い立ちました。そこで、インターネットで脳ドックが受けられるところを検索すると、たくさんの候補が挙がってきました。なかでも、オープンしたばかりのある検診センターは、「オープン1年以内は20%オフ」の3万円で、さほど待ち時間がかからず受けられることがわかったので、予約しました。

検査当日、検診センターに行くと、問診もなくいきなり脳のMRI検査となり、撮影が済むと「どうぞ、お帰りください」と言われました。10日ほどして、検診センターから郵便物が届き、開封してみると1枚の紙切れとCDが入っていました。紙切れは脳ドックの結果になっているのですが、いくつかの項目がチェックリスト方式になっていて、最終判断が「正常」だったことしかわかりません。診断したドクターの署名すらありませんでした。
CDには画像をパソコンで見る方法は解説されていましたが、画像を見ても専門家ではないので、読影できるはずがありません。このような結果の知らせ方では、ほんとうに正常だと受け止めていいのかどうかもわからず、むしろ不安が高まってしまいました。
最初は「20%オフ」に“お得感”を覚えて受けたのですが、いまとなっては3万円も払ったのに、と騙された気分です。こんないい加減な脳ドックのあり方が許されるのでしょうか。
インターネットによる広告のあり方については、国民生活センターにも多くの苦情が寄せられていて、厚生労働省の「医療情報の提供のあり方等に関する検討会」で問題になったことがあります。
医療法では、原則として医療機関のホームページは広告の規制の対象外と見なしているのですが、検討会で議論を重ねた結果、「ホームページの適切なあり方について指針(ガイドライン)を定める必要がある」との結論に至り、2012年6月にガイドラインが発表されています。まずはガイドラインで注意喚起し、それでも悪質なホームページが後を絶たないようであれば、つぎの段階として法規制を検討するという方向性での議論でした。
ガイドラインでは「不当に患者を誘引する虚偽又は誇大な内容等のホームページに掲載すべきでない事項」が定められていて、具体的な問題となる表記例が記されています。その一つに「早急な受診を過度にあおる表現や、費用の過度な強調」という項目があり、「ただいまキャンペーンを実施中」「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」といった表現は記載すべきでないと記されています。
今回のご相談内容も厚生労働省の担当者に確認したところ、「広告可能項目から外れていると思われるので、直接の指導担当窓口である検診センターを管轄している保健所に相談してください」とのことでした。
実際に多くのホームページは行政のチェック機能が働いているとは言えず、同様の謳い文句が散見されます。私たち医療の受け手の側も、甘い言葉に簡単に飛びつかない慎重な姿勢が問われているのだと思います。
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