NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)では、1990年に活動を開始して以来、医療に関する電話相談を実施しています。これまで、5万件を超える相談に対応してきました。この連載では、プライバシーに配慮した上でCOMLの会報誌に掲載された相談内容と、COMLからのアドバイスをご紹介します(本記事はCOML会報誌2016年5月号からの転載です)。

現在72歳の母は、40歳代のときに子宮体がんを発症し、ある大学病院で手術を受けました。手術のあとは放射線治療を受けたのですが、その後遺症にずいぶん苦しんできました。何度か腸閉塞にもなり、そのたびに入院を余儀なくされました。
1週間前、また腸に違和感を覚えると言い出し、同じ大学病院に自ら受診しました。すると、「栄養状態もよくないし、精密検査が必要」と言われて、その日のうちに入院になってしまったのです。それ以来、日に日に衰弱が進んでいるようで、いったい何が原因なのかと心配でなりませんでした。
すると昨日、母の担当医から電話があり、「今朝の診療科の会議で大腸がんと決まりました」と言われたのです。病気の診断が会議で決まるのかと疑問を覚えて尋ねたら、「大腸がんではないという医師もいて意見が分かれたのですが、最終的には大腸がんという結論になったのです」と言われました。そして「お母さんは衰弱がひどいので、体力が戻るまでは手術はできません。食事を摂ることができていないので、2日前に高カロリー輸液のカテーテルを入れたのですが、その際、肺を傷つけてしまったので、いったんカテーテルを抜かなければなりません。その了承をいただきたいのです」と言われました。いったい何が起きたのかと心配で、すぐに病院に行って説明を受けてきました。
担当医の説明によると「栄養を入れるカテーテルは首のところから静脈に入れたのですが、そのときに誤って肺を傷つけ、一部の肺がつぶれてしまいました。その後、栄養の点滴が落ちないので調べたところ、静脈ではなく動脈にカテーテルが入っていることが判明しました。そのため、いったんカテーテルを抜く必要性が生じたのです。カテーテルを入れる処置をしたのは研修医ですが、我々も横について指導していましたので問題はありません。カテーテルを入れた段階ではレントゲンで異常があると判断できませんでした」という説明でした。そしてさらに、「早急にカテーテルを入れ直したいのですが、お母さんは血液を固まりにくくする薬を服用されていたので、処置中に出血が止まらなくなる可能性があります。そこで、そのこともご承諾いただいたうえで、処置をしたいと思っています」と言われました。出血が止まらなくなることに不安を感じましたが、そのままにしておくわけにもいかず、仕方なく同意しました。結果的には、無事カテーテルの入れ替えは終わったのですが、このまま入院を継続してもだいじょうぶだろうかと心配でなりません。
処置を終えて、ようやく母と話ができたのですが、最初にカテーテルを入れた研修医は、まるで実験動物を扱うような態度で、とても嫌な思いをしたそうです。せめて病院に「今後は研修医にかかわってほしくない」と言ってもいいものでしょうか。
相談者には、患者本人である母親が処置中に感じた気持ちと研修医への不安を伝え、今回肺を傷つけたり、誤ってカテーテルを挿入したりという事実があったことからも、研修医以外のドクターに対応してほしいという希望を冷静に伝えてはどうかとアドバイスしました。
【関連連載】
◆COML患者塾
◆COML理事長山口育子の「医療問題なぜなにゼミナール」
BACK NUMBERバックナンバー
RELATED ARTICLES関連する記事
医療・予防カテゴリの記事
-
筋トレは週に30~60分がちょうどいい
話題の論文 拾い読み!
-
γ-GTPやALTが異常値のときは「胆道がん」の可能性も?
Goodayクイズ
-
前立腺炎に効く漢方 幸福薬局・幸井俊高の しあわせ漢方
-
高血圧には薬だけでは不十分 生活改善の有無で死亡率に大きな差 話題の論文 拾い読み!
-
女性の「頻尿」「尿漏れ」 薬や手術、レーザー治療などの選択肢も 尿のトラブルSOS
-
少量でも習慣的な飲酒は脳に影響か 話題の論文 拾い読み!
-
がん患者に寄り添う 「職場復帰」を運動でサポート がんになっても働きたい
-
尿トラブルの元凶、「骨盤底筋群の衰え」は自分で改善できる! 尿のトラブルSOS
-
膀胱炎に効く漢方 幸福薬局・幸井俊高の しあわせ漢方
-
がん治療後の不調を改善 支えるのは専門運動指導士 がんになっても働きたい
FEATURES of THEMEテーマ別特集
-
- 怖い病気を招く「中性脂肪」を食事・運動で徹底対策!
-
健康診断でもおなじみの項目である「中性脂肪」。血液中の中性脂肪が150mg/dLを超えると、脂質異常症の1つ、「高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)」と見なされる。血管の老化を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を遠ざけるためにも、中性脂肪が上がるのを避けなければならない。そこで、今回はやっかいな中性脂肪の正体や、食事や運動でできる鉄板の対策法を一挙紹介していく。
-
- 長年の悩み「腰痛」を解消! 痛みを和らげる体操4選
-
腰痛は日本人の国民病とも言える身近な症状だ。特に問題なのは、原因がはっきりしない、「なんだか知らないけど、いつの間にか…」始まってしまう「慢性腰痛」だ。長年にわたって慢性腰痛で悩む人は少なくない。そこで、今回は長引く腰痛の解消が期待できる体操を一挙紹介する。
-
- 怖い緑内障 忍び寄る失明を回避するには
-
緑内障は放っておくと失明を招く怖い病気だが、病気が進んでも中心部の視力は保たれるため、自分ではなかなか気づきにくい。本記事では、緑内障による失明を回避するために知っておきたい期症状の特徴や、早期発見のために必要な検査、最新治療などについてコンパクトに解説していく。
スポーツ・エクササイズSPORTS
ダイエット・食生活DIETARY HABITS
からだケアBODY CARE
医療・予防MEDICAL CARE
「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...
- 1オリジナルの鍵つき記事
がすべて読める!
- 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
- 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定
お知らせINFORMATION
SNS
日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!
人気記事ランキングRANKING
- 現在
- 週間
- 月間
-
老化抑制のカギを握る「オートファジー」 最新研究で見えてきたその驚異の機能
老化抑制のカギ「オートファジー」
-
体内時計を整え、筋肉を増やし、血糖値や血圧も抑える食事のコツ 肥満と老化を予防する「時間栄養学」
-
「食べる力」は歯より老化する? 40代から注意! 加齢で落ちる4つの力
お口のケアの教科書
-
骨粗しょう症、気になる最新治療の効果 骨折リスクが大幅に改善された例も
医療・健康トレンドピックアップ
-
おなかを引っ込め、姿勢を若返らせる「ズボラ筋トレ」はこれ! 鎌田式ズボラ筋トレ
-
筋トレ効果を高め、体内時計を若返らせるには、運動はいつがベスト? 肥満と老化を予防する「時間栄養学」
-
筋トレは週に30~60分がちょうどいい
話題の論文 拾い読み!
-
1日ビール1缶でも脳が萎縮する!? 左党の一分
-
「コレステロールの薬の効果は?」「一生飲まないとダメ?」名医が回答 あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A
-
男女とも骨密度低下にご用心 命脅かす骨折とその原因「骨粗しょう症」 医療・健康トレンドピックアップ