日経グッデイ

COML患者相談室

人工的に生かす治療をやめてほしい

 NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)

NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)では、1990年に活動を開始して以来、医療に関する電話相談を実施しています。これまで、5万件を超える相談に対応してきました。この連載では、プライバシーに配慮した上でCOMLの会報誌に掲載された相談内容と、COMLからのアドバイスをご紹介します(本記事はCOML会報誌2015年2月号からの転載です)。

 2カ月前、1歳3カ月の三男が高熱を出し、いつもかかっている小児科クリニックに連れて行きました。

子どもが「脳死に近い状態」に。延命治療を継続すべきか・・・(©Andrey Malov-123RF )

 クリニックではノロウイルスによる高熱と診断され、「もしかしたら脳症になっているかもしれない」と言われ、大きな病院にクリニックから直接搬送されて入院となりました。病院では「かなり重症の脳症」と言われ、あっと言う間に意識がなくなってしまったのです。いまでは人工呼吸器につながれて、「限りなく脳死に近い状態」と言われています。

 毎日6~7本の点滴がおこなわれ、人工的に生かされている姿を見るのは父親として限界です。ドクターに「もう十分ですから、人工的に生かすのはやめてください」と伝えたのですが、ドクターは「治る可能性はない」と言う一方で、「親だったら、どんな状態でも生きてくれているだけでいい、できるだけの治療を続けてほしいと思うのが普通ではないですか?」と言って、まともに話し合う姿勢すら見せてくれません。医療ソーシャルワーカーに相談したら、ドクターと話し合ってくれたのですが、その結果、医療ソーシャルワーカーもドクターの意見に同調して私を説得する立場になってしまいました。

 私のところは1~5歳まで4人子どもがいて、妻は残り3人の世話で大変です。三男の治療については、夫婦ともに意見は一致しています。助かる可能性があるならまだしも、助からないとわかっているのに、なぜドクターの考えを押しつけられないといけないのでしょうか。ドクターはまだ若くて子どももいないので、親の大変さなんて理解できないのかもしれません。

 最近の世相から、あまり積極的に治療をやめてほしいと言い続けたら、ネグレクト(育児放棄)と思われるのではないかと気になって、主張することも気を遣います。かなり精神的にも追いつめられているのですが、どうすればいいのでしょうか。

COMLからのアドバイス

 難しい問題ですが、「助かる見込みがない」と言われ、その状況を理解したうえで、冷静に治療をやめるという決断をすることも一つの選択肢だと思います。ただ、まずはもう一度、夫婦で治療をやめる意思表示をお互いが納得しているのか確認することが大事だと思います。一方の意見を強く反映させている結果になってはいけない問題だからです。

 そのうえで、担当である若いドクターとのやりとりだけではなく、正式に病院と話し合う場を設けてもらってはどうかとアドバイスしました。病院では倫理委員会を設けて、このような倫理的問題が生じた場合に病院としての対応を話し合うところが増えています。その病院に倫理委員会が設置されているかどうかを確認し、そこで諮ってほしいと依頼することも一つの方法ではないかとお伝えしました。

「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者が自立・成熟し、主体的に医療に参加することを目指して1990年に設立。患者と医療者が対立するのではなく、“協働”する医療の実現を目的としている。患者の悩みに対する電話相談、各種セミナー・講座などに積極的に取り組んでいる。