日経グッデイ

男こそアンチエイジング!

「脂肪肝ドック」を体験! まるでSF映画の宇宙船?

寝てるだけ、痛みもなかった

 伊藤和弘=フリーランスライター

 年を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見や体力、健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。今回は、前回の記事「『脂肪肝ドック』で脂肪のたまり具合が正確に分かる?」に引き続き、新百合ヶ丘総合病院で実際に脂肪肝ドックを体験した様子をお伝えする。自他ともに認める大酒飲みのライターの結果は?

 不肖・ライター伊藤、今回は日本初の「脂肪肝ドック」を体験することに。2016年の年の瀬、予防医学に力を入れている新百合ヶ丘総合病院(川崎市)を訪ねた。

 筆者は今年で知命(50歳)を迎える。押しも押されもしない中年のオヤジとして、少しは健康のことを気にしている。40歳になってタバコをやめ、スポーツクラブにも入会。2016年は胃と大腸の内視鏡検査も受けた。

 そして最も気になる臓器は肝臓だ。筆者は自他ともに認める大酒飲みであり、調子に乗って痛飲していると記憶が飛ぶこともしばしば。財布やケータイをなくすなど、酒の上での失敗は無数にある。

 ところが、もともとの体質は決して酒に強くない。母は酒豪の一族だったが、父はまったく酒を受け付けない下戸。そのため、筆者自身も飲めば顔が赤くなる(アルコールの代謝過程でできるアセトアルデヒドをうまく分解できず、血管が拡張する)。それなのに人並み以上に酒を飲むのだから、肝臓にはさぞ負担がかかっていることだろう。

 実際、アルコールの影響は確実に出ている。肝機能の指標となるγ(ガンマ)-GTPは30歳になる前から3ケタ。かれこれ20年間、110~160IU/Lの範囲で“安定”しているが、そもそも一般的な基準値は50IU/L以下だ。原料となるアルコールをまめに補給しているせいか、中性脂肪の数値も高い。2014年に調べたときは基準値の3倍近くもあり、医師から「べらぼうに高い」と評された。

 前回も触れたように、成人の3割は脂肪肝という報告もある(J Clin Biochem Nutr. 2009 Jul;45(1):56-67)。筆者が脂肪肝なのも間違いないだろう。「体のためにも受けたほうがいいですよ」と優しく勧める担当編集者の目は邪悪な期待に輝いていたのだった――。

装置の内部はカプセルホテルのよう

 新百合ヶ丘総合病院の脂肪肝ドックは、MRエラストグラフィという画像診断法で行われる。これは肝臓に振動を与えて「硬さ」を見ながらMRI(磁気共鳴断層撮影装置)で画像化する診断法で、肝臓の脂肪のつき具合と硬さ(繊維化)を正確に数値化できるという。装置そのものは以前から使われていたが、これを予防医学の脂肪肝ドックに採用したのが日本初ということになる。

 肝臓の脂肪は落とすこともできるが、炎症を起こして繊維化した細胞は元に戻らない。この繊維化が進み、全体が硬くなった状態が肝硬変だ。脂肪肝は覚悟しているが、繊維化は怖い。検査着に着替えていると、肝臓がある右の脇腹が重いような気がしてきた。ああ、「もう酒を飲んではいけません」なんて言われたらどうしよう……。

 MRエラストグラフィの装置は、雪国のかまくらを思わせる形状をしている(写真参照)。

今回体験したMRI(写真提供:新百合ヶ丘総合病院)
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 両手をバンザイした形で仰向けに寝て、右の脇腹に円盤状のプラスチック板を張り付け、頭にヘッドフォンを着ける。点滴や注射などは一切ない。

MRエラストグラフィの円盤状の板、パッシブドライバと呼ばれる装置を、患者と受信コイルの間に差し込む(新百合ヶ丘総合病院スタッフ試用例)
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MRの中に入り、空気の振動を利用して臓器を揺らし、通過した振動波を画像化して診断する(新百合ヶ丘総合病院スタッフ試用例)
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 装置の内部は人間ひとりがスッポリ収まる程度の広さ。前後2メートル余りだろうか。小さめのカプセルホテルのようだ。トンネル状に前後に口が開いているので内部はほの明るく、仰向けに寝ているぶんには閉塞感はない。これなら閉所恐怖症の人でも大丈夫だろう。

脇腹を軽くノックされているような感覚

 ヘッドフォンを通して、いろいろな音が聞こえてくる。電子音というのだろうか。往年のSF映画に出てくる宇宙船の中で鳴っていたような音だ。高さが違う何種類かのブザー音。断続的なドリルのような音。隣室の人が壁に釘を打っているような音。階下の人が柱をたたくような音――。本当にそんな音がするのだ。

 時間がたつと、それらの電子的な雑音にも慣れて落ち着いてくる。すると眠くもなってくるが、鳴り続ける雑音のせいで眠りには落ちない。黙って寝ていると、前衛的な現代音楽を聴いているような気分にもなってくる。

 やがて、ヘッドフォンから「息を吸ってください」という声が聞こえた。その後、「吐いてください」「止めてください」「ラクにしてください」という指示が出る。

 息を止めているときが重要で、このとき右の脇腹に当てた円盤状の板から衝撃が来るのだ。衝撃なんていうと大げさだが、脇腹を軽くノックされているような感覚。痛くはないが、止めている息が漏れそうになる。

 そんなことが何回か繰り返されて検査は終わった。

 筆者の場合、脇腹の板の接触が悪かったらしく、何度かやり直したため1時間近くかかったが、普通は30分程度で終わるらしい。「あんまり遅いから、何か見つかったのかと思いましたよ」と担当編集者。こ、怖いこと言うな!

はたして筆者の検査結果は?

 MRエラストグラフィでは、主に「肝脂肪化度」と「肝硬化度」を見る。肝脂肪化度は「5%未満」が正常。「5~30%」が軽度から中等度、「30%以上」が高度の脂肪肝になる。肝硬化度も同じく正常、軽度、中等度、高度に分かれており、高度だと肝硬変と診断される。通常、検査から2~3週間程度で結果が郵送されてくるという。

 はたして検査結果はどうだったのか? 以下、「結果報告」を公開しよう!

  • ■肝臓:辺縁は鋭で、形態は保たれています。
  • ■占拠性病変を認めません。
  • ■脂肪濃度は5%で、正常範囲内です。
  • ■硬度は2.2kPaで、正常範囲内です。
  • ■胆道系に異常を認めません。
  • ■膵(すい)に異常を認めません。
  • ■脾臓に腫大を認めません。
  • ■腹水を認めません。

というわけで、なんと筆者の肝臓はノープロブレムだった!

 繊維化が進んでいないどころか、「脂肪肝ではない」という診断は我ながら驚いた。編集部および読者諸兄の黒い期待を裏切ってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、個人的には本当に安心した。30年にわたって無理ばかりさせたのに、筆者の肝臓はなんとすばらしいヤツだったのだろう!

 と、ここで油断してはいけない。脂肪肝でなくてもγ-GTPが高いことは確か。これからも末永く酒を楽しむため、肝臓をいたわりながら、大人の飲み方を心がけようと思う。なお、脂肪肝ドックの料金は3万5000円(税別)。筆者のような左党の方、飲まなくても肝臓が気になる方はぜひ一度受けてみてほしい。

(イラスト/うぬまいちろう)

日経トレンディネット2017年1月25日付け記事からの転載です。
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