日経グッデイ

男こそアンチエイジング!

仕事力に影響する!? あなどれない「ドライアイ」

メタボや運動不足の人は要注意

 伊藤和弘=フリーランスライター

歳を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見・体力・健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。今回のテーマは「ドライアイ」。頭痛や肩こりはもしかしたらドライアイが原因かもしれない。目が乾いていると感じている人は要チェックだ。

 最近よく聞く「ドライアイ」とは、涙に異常が生じて、文字通り目が乾く病気。涙の分泌量が減る「量的な異常」と、涙が乾きやすくなる「質的な異常」がある。

 放っておいても失明することはないが、「目の痛み、頭痛や肩こりなど不快な症状に悩まされ、仕事の効率にも影響する」とドライアイ研究会世話人代表を務める慶應義塾大学医学部眼科学教室坪田一男教授は言う。また、一定の時間内で視力の変動を見る「実用視力」が落ちることもわかってきた。視力が不安定になるので、車の運転などは危険だ。

 約600人の医師や研究者が参加するドライアイ研究会では、「涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」と定義。(1)涙液の異常 (2)角結膜上皮障害 (3)自覚症状のうち、3つすべてに該当する人を「ドライアイ確定」、2つ当てはまる人を「ドライアイの疑い」としている。

 正式には医師に診てもらう必要があるが、大まかな診断は自分でもできる。坪田一男教授によると、「普通の人は1分間に20回前後まばたきをするが、ドライアイだと40回くらいに増える。また、10秒間目を開けていられなければドライアイと考えていい」という。「実用視力&ドライアイ測定」という無料のアプリもあるので、iPhoneユーザーはぜひ試してほしい。

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無料のiアプリ「実用視力&ドライアイ測定」(許可を得て転載)

オフィスワーカーの3人に2人がドライアイ!

 なぜ涙に異常が生じるのか、原因はさまざまだ。涙は3層に分かれていて、いちばん内側にムチンの層、次に涙液水の層、外側に油の層がある。ムチンとは涙を目の表面に留める粘り気のあるたんぱく質。「ムチンが減れば涙を保持できなくなるし、油が減れば蒸発しやすくなる」と坪田教授。

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涙は3層に分かれている。内側からムチン、涙液水、油の層がある(ドライアイ研究会より許可を得て転載)

 受診する患者の半分は50歳以上のため、かつてドライアイは「加齢によって起こる」病気と思われていた。年を取ると起こりやすいのは確かだが、実際は若者にも少なくない。

 2011年の夏、ドライアイ研究会と参天製薬が共同で、大阪市で26~64歳のオフィスワーカー672人を対象に「大阪スタディ」と呼ばれる疫学調査を行っている。専門医の診察によると、上記の診断基準で「確定」が11.6%、「疑い」が54.0%。合計65.6%となり、なんと3人に2人がドライアイ、またはドライアイの傾向があると診断された!

 大阪スタディでわかったことは、潜在患者数の多さだけではない。目とは関係なさそうなメタボ(メタボリック・シンドローム)の人にドライアイが多いこともわかり、注目されている。40歳以上にシルマーテスト(涙の量の検査法。専門のろ紙をまぶたに挟み、5分間で何mm濡れるかを調べる)をした結果、メタボの人は明らかに涙の量が少なかった(下グラフ参照)。

「メタボはドライアイになりやすい」
Br J Ophthalmol.2014;98(3):418-20より
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ドライアイ対策はアンチエイジングに直結する!

 では、ドライアイを予防・改善するには、どんな生活を心がければいいのだろう? 坪田教授に聞いた。

1.食事の量を減らす

 ネズミを使った実験から、脂肪の多い食事を与えてメタボにすると涙の量が減り、カロリーを35%カットすると涙の量が増えてドライアイが改善されることがわかった(Biochem Biophys Res Commun.2010;397(4):724-8)。35%ものカロリーカットはツライが、食べすぎに注意し、腹八分目に抑えよう。

2.サプリメントを摂る

 ブルーベリーに含まれているアントシアニン、サケに含まれているアスタキサンチン、ルテイン、レスベラトロールなどの栄養素をサプリメントで摂るのもいい。「これら目にいいと言われる栄養素は、おおむねドライアイにも効果が期待できる」と坪田教授は話す。

3.体を動かす

 長時間のPC作業でドライアイが起こると思われがちだが、坪田教授によると「長時間イスに座っているだけでも、交感神経が優位になって涙の量が減る」という。ときどき席を立ち、軽く体を動かすことが大切だ。できれば運動の習慣を。最新の研究から、1日30分トレッドミルで有酸素運動をさせたネズミは、涙の量が増えることも確認されている。

4.PC作業中は意識してまばたきを

 PCの画面を凝視しながら作業を続けていると、どうしてもまばたきの回数が減り、目が乾きやすくなる。PC作業中はまばたきを意識しよう。また、画面を目より下にして、伏し目で見るような形にすると涙が蒸発しにくい。

5.まぶたのフチを洗う

 涙の外側をコーティングする油分は、まぶたのフチにあるマイボーム腺から出ている。ここが詰まっていると油が少なくなり、涙が蒸発しやすくなる。蒸しタオルを目に当てると、詰まった油が溶けて効果的。まぶたのフチを洗うことを「リッド・ハイジーン」と呼び、「アイシャンプー」など専用の商品も市販されている。

6.保湿メガネを使う

 コンタクトレンズは目の乾燥を進めるので、なるべく避けた方がいい。坪田教授の発案で生まれた「JINSモイスチャー」は、フレーム側面の小さなタンクに水を入れ、目の周りの湿度を10%以上高めるという。このような「保湿メガネ」を利用するのもいいだろう。

7.眼科に行く

 ムチンと水分を増やすジクアス(ジクアホソルナトリウム)や粘膜を修復するムコスタ(レバミピド)など、今は治療効果の優れた点眼薬も出ている。ただし、これらは処方箋が必要だ。以上の対策で症状が改善しなければ、迷わず眼科に行こう。

 「太っているとなりやすいし、運動不足だとなりやすい。メタボはエイジング(老化)を進めることから考えても、ドライアイ対策はアンチエイジングと密接につながっていることがわかってきた」と坪田教授は指摘する。アンチエイジングな生活は、不快なドライアイの予防にも直結するようだ。

(イラスト/うぬまいちろう)

坪田一男さん
慶應義塾大学 医学部 眼科学教室 教授
慶應義塾大学医学部卒業。1985年、米ハーバード大に留学し、角膜クリニカルフェロー修了。2004年から現職。日本抗加齢医学会理事長。ドライアイ研究会世話人代表。南青山アイクリニック手術顧問。著書に『ブルーライト 体内時計への脅威』(集英社新書)、『老眼革命』(日本評論社)など。2014年3月、『アンチエイジング・バトル 最終決着』(朝日新書)を出版。
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日経トレンディネット2014年4月9日付け記事からの転載です。